誰もがブログやSNSで表現者となっている時代。表現することの大切さと難しさを痛感している人も多いはずです。本書では、表現することを、どうしたらわかりやすく伝えられるのか、著者みずから名付けた「認知表現学」をもとに系統立てて解説します。あふれる情報のなか、自分の発信するものをどうしたら読んでもらえるか、聞いてもらえるかが見えてきます。
伝える
世の中には、記録魔、メモ魔と呼ばれる人がいる。何でも、書きとめておかないと気がすまない人である。人間の記憶力には限界がある限り、後々のために形に残る記録は絶対に必要である。これも、書くという行為の、何かを伝えるという機能だけを見ると表現のように思われるが、表現というからには、表現者の意図、意思、気持ちが介在してこなければならないので、表現の範疇からは除いて考えておく。
僕も自分のこれからのために、様々なことを記録している。ふと何かを思いついた時、過去を振り返るのに役立つからだ。前に買った洋服はいつ頃のものか、どのくらいの頻度で来ていたかなど全てがわかるようにしてある。次に洋服を買うときの指標になるし、あまり気に入らなかった服も検索一発でわかる。Evernoteは記録したデータをキーワード検索で一発表示できるので、これからレコーディングを始めようとする方にはおすすめです。
話す
ラジオやテレビで話す、たくさんの人の前で講演や講義をするなどのケースを除けば、話すことにとりたてて問題を感じることも少ないようである。確かに、何かを口で伝えることを考えてみても、相手は自分の目の前にいるのであるから、相手の反応をうかがいながら話し方をコントロールできるし、場合によっては繰り返して話すこともできる。いわば、自然に「わかりやすい」「聞かせる」話し方を心がけているのである。「グライスの会話の公準」というのがある。それによると、人と会話するときには、普通、次の4つの公準が満たされている。
- 適度の情報量ーー会話では、必要とされている情報より、多すぎても少なすぎてもよくない。
- 真実性ーーことわりのない限り、あるいは自明でない限り(自明なら、嘘は一つの修辞表現になる)、嘘は言わない。
- 一貫性ーー会話の流れに関連したことを言う。
- 明瞭性ーー簡潔にはっきりと話す。
いずれも、当たり前の公準である。相手の話ぶりにイライラさせられるようなときには、これらのいずれかがおかされているはずである。
この4つのうち適度な情報量については、僕も人と話していて失敗した経験がいくつもある。頼まれもしない補足情報(たいてい最近読んだ本の影響)を付け加えたりして、相手が興味なさげになってしまったりすることは日常茶飯事。
文節
パソコンやスマートフォンの普及により、ワープロソフトを使った文書作成の機会が増えて、にわかに文節が、文章表現の単位として脚光を浴びてきた。最近のワープロソフトは、文節単位で入力してそれを漢字に変換していく方式(文節変換)が多いからである。文節とは、「〜ネ」を入れて区切れる最小単位と考えるとわかりやすい。
最近の若者世代ではこの文節単位でSNSに送信してしまうのを表現方法の一つとする向きもある。例えば「〇〇のこと」「好きだ」と2回に分けて送信すると言うもの。微妙なタイムラグが生じることでしゃべっているのと同じ間を作ることができるからだという。
確信を持ってわかる
アメリカの大学の授業風景を見てびっくりさせられるのは、受講学生の行儀の悪さと、それに反比例するかのような「まじめな」取り組み方である。コーヒーやジュースを飲みながらは当たり前、仲むつまじく手をつないでいるカップルさえいる。しかし、私語などまず皆無。さらに驚かされるのは、絶えず教室のあちこちから質問が出てくるのである。授業がダイナミックに展開されている。
日本の授業風景とは全く真逆。日本の大学では少人数の演習でもしつこく「質問は?」と促さないと質問をぶつけてくる生徒はほとんどいない。「わかる」のは気持ちのいいものである以上、これは由々しき問題だ。
相手のメンタルモデルの質に配慮する
「言うは易く行うは難し」がこれである。しかし、できないことはない。時と場合をよく考えて、執拗に相手のメンタルモデルに配慮する努力は、どんな表現事態でも忘れてはならない。
すでに持っているメンタルモデルの転移能力の高い・低いと新しいメンタルモデル形成の能力の高い・低いに配慮する必要がある。
人間には情報を処理する能力が備わっている。表現する人も、表現されたものを受け取る人も、それなりに頭の中で膨大な情報を処理していると考えてよい。わかりやすい表現とはどういうことかを、情報処理という観点から捉え直した書籍。読ませる技術・聞かせる技術の追求がここに!
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