なぜ、青山学院大学陸上競技部は部員のコミュニケーションを重視し自分の言葉で語らせるのか?2017年正月の箱根駅伝で、大学駅伝3冠と3連覇を果たしたリーダーと、博報堂若者研で実績を上げているリーダー。分野は違えど、若者とともに成果を上げている二人が彼らが接する「ゆとり世代」について語り尽くす書籍。
時間を守ることに関しては、今の学生の方が昔より緩くなっている
例えば期限までに企画書を書くというのも契約です。仮に素晴らしい企画書を書いてもそれがプレゼンの時間に間に合わなかったら意味をなさないわけです。まずそこすら守れない人がそれ以上のことができるわけがない。ところが、今の学生の間では在学中のインターンが流行っています。インターン先のネット系ベンチャーでスマホのアプリを作ったり、LINEのスタンプを作ったり。それでちょっと話題になったり、売れたりすると、「意識高い系」という言葉もありますが、簡単に起業家きどり、社長きどりになってしまう。
こうした子たちにとって3分遅れるなんていうのは小さい話で、俺はアイディアで勝負しているんだからそれでも良いと勘違いしてしまう環境が増えてしまっっている。君が手伝って作ったLINEスタンプで君は一生食べられるのかい?と聞かれたらぐうの音も出ないだろう。しかし、若い頃はそれがわからずつい調子に乗ってしまうという側面もある。僕自身、店の売り上げが年間通して前年越えしたことで調子に乗ってしまい、ほかの従業員との間に亀裂が。条件の良い会社に転職したがそこで、自分の実力の無さを思い知ることに。時間に対しても軽視しているところがあり、自分の思い上がりから売り上げあげているんだからそれでいいだろうと社会人としての自覚が足りなかった。
土壌を作るのに時間がかかる理由
原 結果だけを求めるのであれば、もっと早くできたと思います。支配型・洗脳型のティーチングでやっていれば成果はもっと早く上がったでしょう。でもそれでは土壌が変わったことにはなりません。
原田 支配して洗脳した方が成果は早く出る。
原 ええ。でもそれだと組織の土壌は変わらないから、たとえば私が急死したときにはそれでその組織は終わり。継続性がない。
カリスマのオーナー社長がいるときは業績が良いが、その人がいなくなると一気に業績が悪化する会社もこの土壌作りに失敗している典型的な例だ。若者を理解する上でプライベートでもひたすら若者と接するようにする。飲み会はもちろん、家に呼んだり、「公私混同」と言われるぐらい長く深く接しないと互いに理解することはできない。そんな原監督のサポートをしていたのが寮母である奥さんの存在だという。僕も仕事柄若者と接する機会が多かったが公私混同というぐらい一緒に過ごした。
努力と対価
原田 部内で多くの学生たちにモチベーションを上げて維持させるための仕掛けというようなものは何かあるのでしょうか?
原 努力に対する納得できる対価と、選手に対する評価が明確で公正であるということだけですね。選手たちは夢や目標を追っかけて、そのために努力を重ね、日々、本当にしんどい思いをしています。だからこそ、目標をきちんと達成したときには、できる限りの対価を得られるような仕組みにしています。
自分のどこがダメだったのかちゃんと明確になっていれば、それに対して文句を言わないのが今の若い世代。ちゃんと働いていても報われない組織だったら、最初からやらないというのが今の子たちだと思う。昔ほどじゃないにせよ、会社の派閥や上司のお気に入りばかり評価される組織では、昨今のSNS時代には情報がすぐに共有され、若者たちはその組織から離れていきます。人手不足のこの時代にいい若者が採用できなくなってしまう。常にチャンスを与え、厳しく評価することでやる気を引き出す。頑張って成果を出した人間には、ある程度の褒美を出すのも若者の心を掴む上で大事だという。そこで重要なのは評価がぶれないことだそうだ。
自己承認欲求が強くなっている「SNSネイティブ」
今の学生たちは中学生のころからSNSと接してきた「SNSネイティブ」ですから、「いいね!」を周りからもらうことによる自己承認欲求が強くなっているのかもしれませんね。
一流選手の中にはメディアに出たいから頑張る、頑張ったからメディア露出が増えるという好循環を生むことも。しかし、僕らのようにTV時代を生きたものと違い「SNS村社会」に生きる若者にとってメディアに出ることをTwitterで報告すると、「何あいつ、タレント気取りじゃない」とプチ炎上しかねない。同調圧力が強いかつての村社会が復活している現在では微妙なさじ加減が必要となってくる気がする。アイドルグループ「欅坂46」のデビュー曲「サイレントマジョリティー」の歌詞の一部を抜粋すると「誰かと違うことに 何をためらうのだろう」「先ゆく人が振り返り 列を乱すなと ルールを説くけど その目は死んでいる」「この世界は群れていても始まらない Yesでいいのか?」などがあり、まさに現代の若者が「SNS村社会」で「サイレントマジョリティー」になっているのを打破しようとするこの歌が共感を呼んでいる。
若者を理解し意見や感性を取り入れた会社、組織にならないと若者からそっぽを向かれ結果組織の空洞化が進み潰れてしまう可能性も。ヘッドホン1つをとっても今はデザインを重視する時代。例えば、僕も愛用しているBeatsというAppleが買収したヘッドホンメーカーがよく売れている。性能・音質という点では評価が低いこの商品もデザインで売れているのが現状。後半では若者とどう向き合い成長を促すかが論じられている。
これをやれば強くなるという方程式をしっかり伝えてあげれば、彼らは自分の意思で動きます。
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