最近のインターネットのムードに違和感がある。なんでこんなふうになっちゃったんだろう?そんなふうに思う人に贈る書籍。失われた20年、インターネットやコンピュータに関する発言を集め、再読。〝ネットワークの思想史〟ともいうべき文脈を書き出した。
インターネット前史(1980's)
パソコン通信というのは、パソコンと電話回線を使ったネットワーク通信のことで、使われていたのはだいたい1985年から1997年まで。すべての情報がストックされている大型データベースがあって、みんながそこにアクセスして情報を引き出すという中央集権的システムを想像してください。それに対してインターネットというのは、そういう中心がない分散型のネットワークシステムです。下手に喩えると混乱しそうだけど、パソコン通信はFacebookしかないネットワークみたいなもの、と言えばいいのかな。Facebookを見たあとにLINEを見ようとすると、電話回線を一旦切る必要がある(笑)。
電話回線を使っているので、回線をつなぐときピーッガァーと音がなる。当時は麻雀をやる相手を待合室で待ち、4人揃うとゲーム開始というシステムで麻雀を楽しんでいましたが、回線が不安定な相手がいると回線切れとなり時間切れでツモ切りが繰り返されるというような感じでした。「おーい戻ってこい」「落ちたか?」的なやりとりが。今では光回線がスタンダードとなりゲームもより高度なグラフィックや動きのものが出ていますが、当時はそれでも十分楽しめた。電話代が怖かったけどww 現在と違い、ユーザー層も圧倒的におじさんが多く、若者は少なかったような気がします。女性なんかがいるとオタサーの姫的な感じで一躍人気者に。ネカマ(ネット上で女性のふりをする人)なんてのも現れたり。今は、インターネットとなり金銭的ハードルも下がったことにより若者でも、ネットに繋げられるようになったため、女性も珍しくありませんが。
リンク集とか懐かしい!(1990's)
ググればいいわけだから、わざわざリンク集を作らなくてもいい。昔はいちいちリンク集を辿りましたよね。僕もアングラのページとか見るときは、「カルトブックマーク」とか見ていましたけど、あれはひとつのカタログだったわけじゃないですか。ハッキング情報から薬物、エロサイトみたいなアングラ情報がまとめて乗っているという意味では、いま見ると『ネット・トラヴェラーズ’95』みたいな本にかなり近い存在ですよね。やはりネットが雑誌をやっていると言える。でも今ではなんでもGoogleでできるから必要ない。
ホームページなどでも用途にあったリンク集を持ったものが人気を得た時期があります。今では検索一発でたいていの情報は手に入る便利な時代となっているので、リンク集の意義も薄れている。
DOMMUENとかって今まだ見てる人とかいるのかな(2000's)
さやわか ライブストリーミングが流行ったとしても、擬似であることは変わらない。実質的に同じ時間を共有しているように感じるだけ。
ばるぼら それはDOMMUNE(ドミューン)とかもそう。
さやわか Ustreamとかが流行りだした頃って、みんなしきりに「今このネット上という新しい現場を全員で共有している」みたいなことを言っていました。でも実はそうではなくて、視聴者の中には寝てる奴もいるし、パソコンで再生しているけどご飯作ってる奴もいる。流しているだけで特に聞いてない人もいるわけじゃないですか。
いまいち好きになれなかった、ニコ動のコメント機能とかはバラバラなものを同期的に見せようとする役割を果たしているという。DOMMUNE主宰の宇川直宏さんもこのハコは狭いがその向こう側に膨大なオーディエンスがいるとかいう言い方をしていたけど、やはり擬似でしかない。90年代半ばからあったライブ配信が技術が追いついてより多くの人に届けられるようになり、そのノリを引き継いでいるだけ。当時、僕もDOMMUNEを視聴して見たけど、その面白さが微塵も伝わってこなかったww
現在の2ちゃんねるで一、二を争う人気の板となったVIP板の原型(クソのようなスレッドとして特別扱いされていた)ができたのもこの時期。ニュース速報について何か意見を書き込むというより、時事ネタを笑い飛ばすというコミュニケーション。これも僕には理解できなかった。
「動員の革命」の両義性(2010's)
「PV数を稼ぐとお金が儲かる」っていうのか「PV数を稼ぐと社会が変わる」っていうのかの違いでロジックはかなり近くなってしまうんですよね。そしてPV数を稼ぐためならコンテンツは嘘でもなんでもいい、という逆転現象が起きたりしている。
記事の内容がどれだけ刺激的かということばかりにとらわれ、ネットを利用する人の中でもリテラシーの低い人たちが、その嘘に気づかずクリックをしてしまう。こうした流れはだいぶ変わってきてはいるものの依然として減らないネタをガチで信じる人。僕もどちらかというとこちら側のような気がするがww
パソコン通信から始まりインターネットの現在までを足早に見ていく書籍。マニアックでわかりづらい面もあるが、一定年齢以上の方は当時を思い出しながら、楽しく読むことができるだろう。
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