仕事が消滅するという予測が話題になっている。オックスフォード大学も、マッキンゼーも、多くの科学者と経済学者も、今からそれほど遠くない未来に50%から90%の仕事がAI(ArtificalInteligence=人工知能)とロボットに奪われると予測している。仕事がなくなったら我々は生きていけるのか?人類にはみじめな未来が待っているのだろうか?
想定する未来の出来事
2025年には世界中でタクシードライバーや長距離トラックのドライバーの仕事が消滅する。セルフドライビングカー、つまり完全自動で運転が行われる自動車の登場がその原因だ。日本国内ではこれにより消失する仕事は123万人の雇用に相当する。同じ頃、デイトレーダーの仕事は絶滅する。株式のトレードでも、FXのトレードでも人間はAIに勝てなくなるからだ。金融機関でも人間のトレーダーはAIにとってカモに墜ちていく。
2030年頃にはパラリーガルと呼ばれる弁護士助手の仕事、銀行の融資担当者、裁判官といった、主に「頭を使う専門家の仕事」がAIに取って代わられ消失する。頭を使う専門家の仕事の最たるものが学者である。2030年代を境に、ノーベル物理学賞はAIしか受賞できなくなるだろう。
2035年頃になるとAIは汎用的な思考ができるようになり、その結果、研究者やクリエイターといった仕事も消滅していく。世界中の病院や医院では最終的な診断を下すのは医者ではなくAIになる。そして会社では判断や評価を下す管理職の仕事もいらなくなるだろう。
同じく2035年頃にはロボットの足と単純な手の性能が人間の能力に近づく。ロボットを導入することで倉庫の中の作業や宅配などの肉体労働の仕事の一部はロボットに移行していくだろう。
2045年から2050年頃にはいよいよ頭脳から指先まで人間と同じ能力を持つロボットが実用化されるようになる。そしてそのようなAI搭載ロボットの価格が数百万円程度までに下がった時には、人類の90%の仕事が失われることになる。
近い将来こうなることも予想できる。シンギュラリティという言葉が世に出回ってからだいぶ経つが、この手の本の発売は後を絶たない。父親が所有するマイカーはレベル5と呼ばれる完全自動運転車、通勤に使われた後、じっと会社の駐車場で待機するのではなく、自動運転で自宅まで戻り、呼び寄せた娘が大学の講義に出るため自動運転車で通学。それでも余った時間は配車アプリなどで客を乗せ地域を走り売り上げを得る。そんなありがたい自動運転車のおかげでパートタイムで働くのと同じぐらいの収入を得ることも可能になるかもしれない。マネーは家賃収入を得られる不動産などから配車アプリなどで利益を得られる自動運転車に移るなんてことも考えられる。猫や犬を判別できるようになった2012年頃から20年で人間よりも賢いAIの上司が会社に現れるかも。
頭のいい人の仕事の方が先にAIに取って代わられるかも?
最近では「頭のいい仕事」の方が先にAIに置き換わり、「体力が自慢の人の仕事」はまだしばらくの間は生き残るのではないかと言われ始めている。「これからの未来は誰でもできるような仕事しかできない人はダメだ。自分にしかできない特別なスキル(能力)を持っている人だけが生き残れる」というような教え自体が時代に遅れてきたようだ。
囲碁や将棋で人間がAIに勝てなくなってからつくづく思っていたことだが、人間が勉強して覚えられることはAIにも可能だということ。それに学ぶ速度は人間の比ではないことはみなさんご存知の通り。そう考えると、二足歩行で手や指まで人間と同じように稼働することが可能なロボットよりも、先に頭脳の部分(AI)が先に進化を遂げるのではないかということ。すると肉体労働者の方が需要的に有利な状態に。それも長くは続かないだろうが。芸術の分野でも有名画家の絵画をディープラーニングで覚えさせ、その筆使いなどの特徴を模倣し有名画家風の作品を生み出すなんて試みも行われている。音楽もしかり。
AIがファンドを運用するようになると‥‥
AIがファンドを運用するようになると、AI同士の勝負はどうなるだろう。そもそも金融工学の世界では、一番安定的に長期の収益を上げるファンドの運用方法は市場全体に通しすること、言い換えるとダウや日経平均のようなインディックス連動型のファンドに投資することだと理論的に解明されている。ファンドマネージャーが勝ったり負けたりするのは、誰かが変なリスクをとって損をした分、誰かが儲けているだけのことなのだ。
ファンドマネージャーの仕事がAIに置き換わって、全てのファンドをAIが運用するようになると、均一に誰も勝てず誰も負けないようなインディックス連動型ファンドだけになってしまうので人を出し抜いてやりたいと思うような人には面白くない運用結果になるだろう。
これから訪れるAI時代には、全てのAI/ロボットの利用を国有化し、ロボットにも賃金を支払い支払われた給料はそのまま国民に再分配するベーシックインカムと融合させたような施策が求められる。AIとの共存で生活が豊かになるよう様々な可能性を考えてみる良いきっかけとなる書籍だった。
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