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『事故がなくならない理由 安全対策の落とし穴』芳賀繁

鉄道、医療、バス、原発、温泉施設…事故が起きるたびに、責任が問われ、規制が強まり、対策がとられる。だが、安全対策によって「安全・安心」は高まったと言えるのか。著者は、安全対策によって人間の行動はどのように変化するのか、そこにこそ注目すべきと説く。事故や病気や失敗のリスクを減らすはずの対策や訓練が、往々にしてリスクを増やすことになるのはなぜか、人間の心理とリスク行動に光を当てる。さらにリスク行動の個人差、リスク・コミュニケーション、リスク・マネジメントにまで踏みこむ。

追い越しをするかしないか

「各行動選択肢に期待される効用」とは、追い越しをするかしないか、という行動選択肢のそれぞれにどれくらいのメリット・デメリットがあるかということである。追い越せば早く目的地に着く、ドライブを楽しめるなどの効用(メリット)があり、追い越さなければ遅刻する、イライラするなどの不効用(デメリット)がある。 「リスクの目標水準」は個人がクルマを運転する際に受け入れているリスク水準。これに「各行動選択肢に期待される効用」が影響を与える。たとえば、のんびりしたドライブ旅行なら遅刻するデメリットは小さいが、大事な商談のために目的地に急いでいる場合は遅刻のデメリットは非常に大きいので、(本人が意識していなくても)より高い交通事故リスクを受け入れるだろう。 「知覚されたリスク水準」はその場の交通状況や交通環境から感じとるリスクの高さ。自動車運転そのものに対して感じているリスクの大きさも含まれる。追い越しのシーンでは、対向車が多かったり、道路の見通しが悪ければリスクを高く感じるだろう。「知覚された」というのは、言い換えると「主観的な」という意味で、客観的リスクが高くてもそれが知覚(認知)されなければリスクは低く感じられる。したがって、知覚されたリスク水準には個人のリスクに対する感度や、危険を発見する能力である「知覚的技能」が影響を与える。

僕も若い頃は車の運転中前へ前へと追い越していくような運転だった。今となって思うと、そんなに急いでどうするのかと思うくらいだ。車に乗る際は時間に余裕を持って乗車し、無理な運転は避ける余裕のようなものが必要だと感じた。時間に間に合わせたいなら、より正確な時間で運行する電車に乗ればいいわけで、車に乗るメリットは少ない。僕は病気で免許取り消しになったので、免許を持った人たちには厳しい意見を言うようになったのだが、少しでも前に行くために追い越しを繰り返すような運転はあまり好きではない。

リスクの裏側で

「悪い結果が起きる可能性」というのは「危険」と同義語なのだろうか。たいていの文脈で使われている「リスク」という言葉は、そのまま「危険」または「危険性」という言葉に置き換えられるように思われる。 「交通事故にあうリスク」、「株で損をするリスク」、「手術のリスク」、「エックス線に被曝するリスク」、「食品添加物のリスク」。ためしに、それぞれの「リスク」を「危険性」に取り換えて読んでみても問題なさそうである。では危険は避けるべきものだから、リスクも避けるべきものと考えてよいのだろうか。「当たり前だろう」と言う読者が多いかもしれないが、ちょっと待って欲しい。自動車交通、株、手術、エックス線、食品添加物、どれも私たちの暮らしや、産業、医療、食生活になくてはならないものばかりである。つまり、リスクの裏側には「ベネフィット」があるのだ(というより、こっちを表側と呼ぶべきか)。手術は危険であっても、放っておけば苦しい状態が続いたり、病気が悪化したり、死んでしまったりする人が、手術で助かる可能性がある(たいていの手術はその可能性が高い)から行われる。エックス線は危険だが、このおかげで、いろいろな病気が診断でき、適切な治療を行うことができるし、癌が早期に発見されて命が助かる人も多い。食品添加物は使わないほうがいいと思っている人がいるが、使わなければ使わないことによる様々なリスクを生むことを知るべきだ。

リスクの裏側にはベネフィットがあることを考える。得られるものが多ければリスクを取ってでも得たいと思うのはわかる。交通だって、目的地につくためにはいろいろな方法がある。なるべく歩かないで済む自動車移動は事故や渋滞の危険性はあるものの、魅力的な交通手段の一つだろう。

車に乗る以上、ある程度の確率で事故に遭うのは避けられない。安全対策がいくら施されていようと、人間が運転する以上事故は無くならない。事故の負の連鎖をいかにして断つか?災害などでも、どのような対策をとれば最善の策となるのか考えさせられる書籍だった。

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