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『グローバリズム その先の悲劇に備えよ』文明危機にできること

国境を越えた人・モノ・カネの動きが鈍ってきた。英国EU離脱やトランプ現象など、反グローバリズムを旗印にしたポピュリズムの嵐も吹き荒れている。グローバル化がいよいよ終わるのだ。しかし、残されたのはグローバル化によって引き裂かれた国民だ。そこから始まる悲劇とは?

民衆の「怒り」には理がある

トランプやルペンに投票した民衆だって、非合理的で情念的と決めつけるべきではないんですよ。たとえば、アメリカのラスト・ベルトの労働者は、グローバル化が始まる前までは、アメリカ経済の土台を支えていたわけです。それが、この三〇年のグローバル化と技術進歩で、雇用が失われ、地域社会は衰退し、未来に対する展望も失ってしまった。この状況を政治が放置し続け、あまつさえ変化に適応できない人々と見下したような扱いをしていたのだから、「怒り」が爆発するのは時間の問題だったと考えるべきなんですよ。

グローバル化がもたらすのは「底辺の競争」。より安い労働力を求めフロンティアを開拓するのだが、ここにきてそのフロンティアさえもう見つからない状況に。そこで、国内回帰的機運が高まり「アメリカファースト」や「ブレグジット」などという現象が起こる。怒りの爆発の矛先を国外に向けるのはグローバル化の進行、を阻止する動きといってもいいだろう。しかしエリート層は保護貿易、移民制限どちらも退けた。アメリカで福祉拡大を訴えればサンダースのようなポピュリズム左派とみなされるし、移民制限を加えると訴えれば、トランプのようなポピュリズム右派の烙印を押される。どこを向いても閉塞感と向き合わなくてはならないのがグローバル化の進行による弊害だ。

アメリカ国内がEU化!?

アメリカ国内がEU化して、やがてカルフォルニア州などで独立運動が起きるのではないか、とさえ思います。実際、コスモポリタン的な大都市と白人が今なお社会の中心を構成するアメリカ中部はもはや別の国のような感じですから。

大都市を抱える州が独立したりしたらアメリカとしては大きな痛手だろう。独立するような州があるとすれば収支も健全だろうし税収も多い地域が独立の対象だろう。これはアメリカに限ったことだけでなく、日本でも同様のことが考えられる。都市が国を見放して独立とまではいかなくても、現在、過疎地域の切り離しとも取れる都市計画が進んでいる。山間部から市街地への居住地域の変更は、時間はかかるかもしれないが、徐々に進んでいくだろう。JRなんかでも不採算な路線は赤字に耐えきれず廃線となる路線も増えている。田舎暮らしに憧れて、移住したはいいが、このような流れで不便さを強いられてはなかなか定住も難しいだろう。

製造業復活に失敗してきた歴代政権

そんなふうに国益が分裂している中でも、仮に今後ともアメリカを成長軌道に載せなきゃいけないとすると、製造業を復活させないといけないわけです。リインダストリアライゼーション、再工業化です。というのも、アメリカ経済がダメになった理由の一つは、一九七〇年代半ば以降、製造業の比重が低下してきたからです。アメリカに限らず、先進国が高度成長していた時代は、製造業が産業の中心でしたよね。今、なぜこれほどまでに成長率が下がっているかというと、どの国でも、製造業からサービス業へのシフトが進んでいるからです。

比較的成長率が高い国、中国がその典型ですが製造業はまだ活況だ。サービス業が中心となった国内では、賃金の上昇が見込めない従業員(サービス業従事者)が溢れ出し、企業は株主の方しか向いていないので、給与の引き上げより配当金をあげたり、不測の事態に備えた内部留保の方に熱心だ。新たな設備投資や事業拡大には消極的なところも未だに多く停滞感漂うのが現状だ。

「規制の帝国」への反発

さらに、EUの問題を深刻にしたのは、二〇〇四年の東方拡大です。冷戦が終わり、欧州が勢力圏を東方に拡大しようとして、旧共産圏の国々をEUに引き込んだ。しかし、共通市場に賃金の低い国々を入れれば、工場はそっちに移るし、労働力も賃金の高い国に向かって移動するに決まっています。イギリスやフランスの労働者も、ポーランドやルーマニアの低賃金労働者との競争に晒される。それで、西欧でEUに対する反発が一気に高まった。

加えてシリアなどからの難民が100万人単位で流れ込み、2015年には難民になりすましたテロリストによるテロなども発生した。ブレグジットを批判する人たちは移民に対する不寛容をあげる人も多い。しかし、裏を返せば、移民を管理できていない自国の政府に対する不満だとも取れる。日本は移民をほとんど受け入れていないが、人口減少の一途を辿るわが国では、移民の受け入れも一つの手段として、きちっとした制度を設けるべきかもしれない。

EUの失敗から何か学べることはないか?グローバル化の嵐が吹き荒れる中、利益第一主義だけでは生き残ることはできないことを企業は理解しなくてはならない。

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