時間と空間を超えてつながる新しい人間関係のもとで、ハイパー資本主義以前にみられた贈与経済を彷彿させる「シェアリング・サービス」が勃興している。さらに「社会がウェブをコピーする」なかで、絶対に安泰と思われていた事業が思いもよらない競合に浸食され、組織づくり、イノベーションの作法、教育までもが根本から変化している。はたして「昨日の常識が通じない時代」に私たちが身につけるべき「視座」とは何か。人間はウェブの力を味方にできるのか……。フェイスブックの歴史的意味からウェアラブルコンピュータによるパラダイムシフト、日本企業が行き詰ったほんとうの理由、そうした混沌の先にある未来までをも一つの線上で論じきった、渾身の一作。
ウェブ2.0以降の世界はこう変わった
ディグのような投稿ニュースサイトには、みんなが「面白い」という、あらゆる出版社・新聞社がウェブ上に掲載するコンテンツが次々に投稿されていく。そこでいちばん読まれたランキングも出てくるので、それらをチェックしていれば、ネット特有の偏りはあるものの、全米でいま関心を集めているニュースなどがだいたいわかる。ユーザー視点に立てば、たしかにこのやり方は便利だし、楽しい。それ以前はニュースや情報は一社がすべてを編集していたが、ユーザー自身がそれを編集することで、新聞社や出版社はウェブにおける情報配信では下位レベルに位置づけられてしまったのだ。この状態をよしとしない新聞社や出版社はコンテンツを有料化し、「ペイウォール」という課金の壁でコンテンツを覆おうとした。しかしそうした方法はうまくいかず、結局、いまではソーシャルメディアなどでいかに自社コンテンツを露出させるかということに重きを置かざるをえなくなっている。
日本でも玉石混交のウェブ情報に一石を投じるために日経電子版などは会員登録すると鍵のついた記事が月10記事読めるというお試し購読を実施している(その他のキャンペーンも行なっているが、この月10記事というのは常時行なっているようだ)。有料会員への誘引が目的だろうが、もともと新聞をあまり読まない世代にはこのサービス浸透しているのだろうか?僕の場合は月10記事程度、良質な記事が読めればそれでOK。会員登録は無料なので、あまり新聞を読まない人にもオススメしたい。
最近流行りのキュレーション
もともと「キュレーション」とは美術展や博物館で展示品を整理・選別することだが、ネット上に溢れる情報のなかで有益なものを取捨選択し、表示する行為のことを指すようにもなった。キュレーションを行なう人間のことは、キュレーターと呼ばれる。ツイッターをはじめとして、ネット上のメディアが発信する情報は、次々に生まれては消えていく。この状態では「情報(コンテンツ)」が断片化していくので、その情報の背景や前後の関係といった「文脈(コンテクスト)」がわからなくなる。そうなったとき、 対 のようにその文脈を紡ぐ仕事をする人が必要となる。日本では佐々木 俊 尚 さんなどの著書によってキュレーションという言葉が広がり、LINE株式会社が展開する「NAVERまとめ」やツイッターのコメントをまとめられる「トゥギャッター」など、キュレーションのためのツールも浸透していった。
僕たちに馴染み深いキュレーションサービスのなかに、グノシーやスマートニュースなんかのニュースキュレーションサービスがある。人工知能によって、過去の記事の閲覧記録なんかから、好みの記事をピックアップして見やすいインターフェイスでニュースを提供してくれるので、利用している人も多いだろう。
シェアリング・エコノミー
シェアリング・エコノミーではインターネットを利用して参加者がさまざまな資源を共有し、新しいサービスを“共創”していく。旧来の所有という概念を脱し、自らがもつ資源の価値へとアクセスを促すのだ。そして、その資源を適正に再分配することで新しい換金化手法を得る。ある者にとってはこれ以上の価値が見出しにくい余剰資源でも、他者からすれば得難い価値となるかもしれない。アメリカのいくつかのワイナリーは、個人でもお金を払えば自分ブランドのワインをつくることのできるサービスを行なっている。土地と育てる品種を提供し、収穫後にラベルのデザインから、そのワイナリーが運営するオンラインショップや既存の物流で販売するかどうかまでをも決めることができるのだ。野菜や果物の収穫まで請け負う業者もいて、この分野は大きな 括りとしてはランドシェアリング(土地共有)と呼ばれる。
最近ではカーシェアリング市場が活況だ。業界最王手「タイムズカープラス」の会員数は一年でほぼ倍増しているそうだ。日本にはレンタカーがあり、あまり利用されないことから、当初はあまり普及しないと見込まれていたようだが、意外と若い人を中心に人気を博している。レンタカーのように面倒な手続きがいらず24時間いつでも利用可能な車両がある駐車場に赴き、会員カードでドアを解除すれば良い。使い終わったら下の駐車場に戻すだけ。この手軽さが普及の理由だろう。
ウェブから広がる様々なサービスや情報は現実世界をより便利にするための未来図であるように思える。仮想通貨なんかも世の中をより便利にするために作り出された未来の貨幣であるといえよう。新たなサービスが生まれるたびにカウンター要素の強いものが流行ったりする。例えばファストフードが猛威を振るえばスローフードも流行り、スタバが人気となれば、サードウェーブ・コーヒーが流行ったり。激変するウェブとテクノロジーの向かう先が見えてくる一冊です。
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