「虐待死の中で最も多い、0歳0カ月0日の虐待死」「恒久的な家族の愛情を知らずに施設で育つ子どもたち」「里親や里子を苦しめ続ける反応性愛着障害という病」……。これらすべてをなくすために、公務員でありながら圧力に負けずに新生児の特別養子縁組を断行し続けた矢満田氏、そしてその方式を愛知県に定着させる役割を果たした萬屋氏の半生と取り組みを、二人の熱意の背景にも迫りつつ、多くのエピソードを交えながら紹介する。
赤ちゃん縁組の誓約書
愛知方式の赤ちゃん縁組希望者に求めている「誓約書」にもサインを済ませていました。この誓約書には、「この性別は問わない」「障害の有無で引き取りを左右しない」「審判成立以前に、産みの親が子どもを引き取りたいと申し出た場合、辛くても育てた子をお返しする」などの厳しい9つの条件が記されています。中には、「同じ立場の親子のために、積極的に体験を伝える」というような条項もあり、それはすなわち、マスコミの取材にも対応していただくという意味だということを説明会でもお話ししています。このような条件についてお話ししますと、参加されている方々は、たとえば30組ぐらいのご夫婦がいたとすると、大半は「そこまではできない」ということで辞退され、1組か2組しか残らないということがほとんどです。
なぜこのような厳しい誓約書が存在するのか。それは子どもを迎える上での覚悟の度合いを試す踏み絵のようなものだろう。実際に自分の子として生まれた場合、性別や障害の有無にかかわらず、育てていかなくてはならないのだから。
特別養子縁組とは何か?
普通養子縁組の多くが、「親の都合や家系の存続」あるいは「節税目的」のために行われているのに対して、特別養子縁組は「児童福祉の観点」から行われる制度であることです。普通養子縁組では、戸籍に「養子」「養女」と表記されますが、特別養子縁組は、法律上も実の親子同様の関係を作るための制度となるため、戸籍上の表記も、実子と同じように「子」、「長男」「長女」と記されます。また、特別養子縁組は、産みの親との法律上の関係を終わりにする制度でもあります。産みの親の親権は停止となり、育てる側の親である養親に親権は移ります。したがって、その子どもは産みの親との親族関係はなくなり、新たに養子縁組をした養親だけの子になります。この点、普通養子縁組の場合は、産みの親の親権は残り、法律上の親族関係は切れません。また、里親が子どもを預かり一時的に育てる「里親制度」も、産みの親の親権を残したまま、里親の家庭で育つことになります。さらに、普通養子縁組は、双方が合意して届出を出せば成立しますが、特別養子縁組を成立させるためには、家庭裁判所の審判が必要になります。
養子といっても、様々なパターンがあることがわかる。特別養子縁組は実子と同じ扱いになるため、より本気度が高いというか、あとのことを考えるとメリットも多いような気がする。予期せぬ妊娠で子どもを授かった母親と子どもを救済するため民間の斡旋団体などがあるそうだ。0歳から養子として迎え実子として育てれば、DNAが違うということ以外は実子との違いはほとんどない。生まれてくる子どもを何らかの理由で育てられない母親と、生まれてくる子ども、子どもが欲しい夫婦の三方よしの関係がそこにある。不妊治療と共に子どもを授かるもう一つの手段としてもっと認知されてもいいのではないかと思う。
不妊治療による疲弊
現在の日本で、血縁へのこだわりが増したもう一つの理由として、生殖医療技術が進歩したことも挙げられると思います。不妊治療が広まることによって、妊娠が難しそうな状況でも、「できれば血のつながった我が子を産み、育てたい」という思いをいっそう強くしている方も多いと感じます。しかしながら、現代の生活習慣や晩婚化などの影響で、不妊の原因について、女性側の不調に目が行きがちですが、近年の調査では、世界的に男性の精子数が減少しているということも発表さてれいます。問題は、治療を始めるときに期待するほど、成功率は高くないということ。長引く不妊治療によって、心身共に疲弊してしまう方が多いのが現状です。
血縁にこだわり不妊治療を行うとき、男性の方もチェックしないと原因が精子にあった場合、治療の意味がなくなることも。不妊治療はやれば必ず妊娠できるといった成功率の高いものではないため、なかなか妊娠にこぎつけることができず、さらに深い悩みを抱えることになってしまう女性もいることを忘れてはならない。ここで血縁というこだわりを捨てれば養子縁組で子を授かることも可能になるという選択肢も考えるべきかもしれない。
望まない妊娠をしないよう避妊はしっかりするのが大前提だが、中には男性の横暴によって望まぬ妊娠をしてしまう。一人苦しみ気がつけば中絶が間に合わなかったり費用が捻出できないほどの若年だったりとケースは色々だ。養子縁組でも実子と同じ扱いとなる特別養子縁組、もっと増えてもいいんじゃないかと思った。
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