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「男」という不安|小浜 逸郎

少年犯罪、ひきこもり、ストーカー、中高年自殺といった現代の社会問題の主役は、大半が「男」である。男が弱くなった、危なくなったと言われて久しいが、何が彼らをそうさせているのか。他方、いまの日本の女たちはもはや男など頼りにせず、決然と自立を目指しているかのように多くのメディアは報じるが、それはほんとうなのだろうか?現代日本の男たちが直面している困難を多面的に照らし出し、いまあらためて再考されるべき「男の値打ち」「男の生き方」を模索する真摯な論考。

お金のために!?

男は相手を選ばず、どんな女に対しても性欲を発散させようとするが、女は特定の男を愛することを通して激しい情熱を集中的に表現する。男は種をばらまく性だから次から次へと新しい女を求めるが、女は子孫を残す本能のために、数少ないいい男をキープしようとする。男の性欲は、不特定多数に向けられた抽象的な性欲であり、女の性欲は、特定の男に向けられた具体的な性欲である。たしかに、売春市場がほとんど男だけの性欲発散の場として成立していることなどを考えると、この見方は当たっている。この場合、それは男が金と権力にものを言わせて女を無理やりそういう構造の中に引き込んできたからだといったフェミニズム的な見方は当たらない。女に金と権力と自由を与えても、男のような性欲発散の装置をこれほど広範な規模で作り出すとはどうしても思えないからだ。この事実が男女の性差を示す有力な証拠の一つであることは変わらない。しかし、同じことを逆に女の側に視点を移して考えてみるとどうだろうか。昔の吉原などのように、いやいや身売りさせられてひたすら苦境に甘んじていたというならいざ知らず、現在では、自由に売春する女たちの売り手市場が成立している。また援助交際をする女子高生や、六本木あたりで遊ぶ若い女たちのなかには、インタビューに答えて「ワタシってぇ、やっぱぁ、Hとかぁ、けっこう好きだしぃ」などと堂々とほざくのがいっぱいいる。テレクラにアプローチして、次々と男を求める女も多い。彼女たちは、不特定多数の男をこなし、しかも単にお金のために仕方なくやっているというのではなく(生産効率が他のバイトなどに比べて格段にいいから、金銭目的が大きな要因であることは否定しがたいが)、積極的にそういう人生を選んでいるフシがある。少なくとも、さしたる抵抗感なく、多くの男に体を提供している。

やはり性への関心が高いのは男性の方か。女性は行為自体よりも、その間のイチャイチャを重視するとか。中には性行為自体が好きな女性もいるようだが、男性があまりに求めすぎると引いてしまう女性が多そうだ。しかしお金のためにとなると話は別。男性のそのような需要がないと言うのもあるが、男子高校生の援交と言うのは聞いたことがない。

男らしさ

今とりわけ声を大にして、男らしさのすばらしさを讚えるべきときである。男らしさは与えられてたやすく獲得されるものではなく、努力して求めてやっと手に入れられるものなのである。それは自己制御、自分を越えようとする意志、危険を求めて挑戦する心、抑圧にたいする抵抗などの力があってはじめて実現するのだ。これが創造と威厳の条件である。それは女らしさのすばらしさと同様、すべての人間に備わっているものだ。良き女らしさは世界を保持し、良き男らしさはその限界を押し拡げる。男女の徳性はあいいれないどころではない。人間らしく生きるためには、両者とも切り離してはいけないのである。

男らしさとか女らしさ、ともすればハラスメントにもなりうるこの定義は現代にあった価値基準に置き換えていかなければならない時期が来ていると思う。

女性の気持ち

「女の気持ち」がわからない男は、男として失格の 烙印 を押されかねないが、「男の気持ち」がわからなくても、女はあまり困らない。というよりも、多くの女は、自分が好きになったり関心を持ったりした特定の男の気持ちを非常に気にするが、「男の気持ち」一般などに対しては、だいたいお見通しだという顔をしていて、あまり興味を示さない。「女がわからない」ことは男をしばしば不安にするが、「男がわからない」ことは女をあまり不安にしない。たぶん彼女たちにとっては、自分自身の女性性を磨いて特定の男を引きつけることのほうが大事なのだ。そもそも、女が口にするほど、「女の気持ち」一般などというものがあるのだろうか。彼女たちはしばしば、自分の気持ちを「女」一般の気持ちとして普遍化したがる。そのことがまさに、多くの女が自分が女であることに一種の統一的な感覚を持っていて、アイデンティティ不安を抱いていないことの証拠である。逆境になると女のほうが男より強いとか、女の生活力のたくましさに比べて男は折れやすい脆さを抱えているなどとよく言われるのも、この男特有のアイデンティティ不安にかかわっている。

女の気持ちがわからないのと同じくらい女性も男の気持ちがわからないのではと思うがこれは別問題。女性は男を手玉に取れるほど男性の心を操ることができると感じる。

現代の「男」を定義し直すために古臭い「男」像を勉強し直すのに良い書籍。今とは違ったちょっと時代錯誤とも取れる男性像が昭和感漂うが‥‥

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