いま多くの人が「生きづらさ」を感じている。一九九八年以降、自殺者数は毎年三万人を超え、毎日のように練炭自殺や硫化水素自殺のニュースが報じられている。鬱病など、心を病む人も増える一方だ。これらの現象は、現代社会に特有の「生きづらさ」と無縁ではない。その背景には、もちろん経済のグローバル化に伴う労働市場の流動化が生んだ、使い捨て労働や貧困、格差の問題もあるだろう。他方で、そういう経済的な問題とは直接関係のない「純粋な生きづらさ」もあるだろう。本書では、さまざまな「生きづらさ」の要因を解きほぐしながら、それを生き延びていくためのヒントを探っていく。
「生きづらさ」はどこからくるのか?
いじめが始まる瞬間も、リーダー格の舌打ちひとつで、まわりがその人の気持ちを読んで、いきなり空気がかわるという感じでした。私のいた部活はすごく弱いチームだったんですが、なぜか朝練(早朝練習)もあって、ぜったいにいかなくちゃいけない。いま思うと、部活をやめればよかったんですが、当時はやめたらもっとひどい目に遭うんじゃないかと思い込んでいたんです。朝練だと五時頃に起きて学校にいくんですが、ぜんぜん寝なくても平気だったんですよ。寝ても一、二時間で目が覚める。だから深夜一時、二時まで勉強して寝ても、すぐに目が覚めて、また勉強をして朝練にいくという感じでした。成績が落ちるのも怖いし、部活にもいかなくちゃいけないから、目が冴えてぜんぜん寝られないんです。部活の最中はいじめがあるので、つねに感情を殺していました。ただ脳は大忙しの状態でしたが。部活のあいだは、つねに 朦朧 として、何も考えない、何も感じないように自分の状態をコントロールしていましたね。
僕の中学時代はバレーボール部から始まった。最初はちょっと練習しただけでそこそこプレーできるようになる器用さで一年生の中ではレギュラーポジションのセッターだった。しかし、ボールを使った練習以外の筋トレとかが嫌いだった僕は、徐々に部活に対する姿勢が変わってきた。それを快く思わなかった補欠の人間からハブられるようになり次第に部活への足が遠のくようになり結局幽霊部員になってしまった。顧問の先生は縁あって、5年年下の妹の担任の先生になることに。顧問の先生は僕のことを覚えていてくれて、僕が部活を辞めたことに当時悩んだそうだ。ただ部員同士の人間関係が鬱陶しくなっただけなのに。僕はこうやって人間同士の付き合いを避けて生きたきた。コミュニケーションて難しいよね。
オーバードーズで病院へ
一九歳でフリーターになった瞬間、本当にどうしたらいいのか途方に暮れました。生活の不安がどんどんのしかかってきて、生きづらさをさらにこじらせていきました。フリーターだと簡単に仕事をクビになりますよね。風邪をひいて「すみません、風邪ひきました」と電話すれば、「もう明日からこなくていいよ」とクビになる。生きづらさ系の人には、「もうこなくていいよ」という言葉は「死ね」というふうに聞こえるんですよ。だからバイトをクビになるたびにリストカットしたり、オーバードーズをして病院に運ばれて胃洗浄を受けたりしていました。
僕も精神科にかかるようになってしばらくして、お酒が入ったこともあり、気持ちが高ぶり、オーバードーズを経験した。お酒が入っていたので部屋の壁とかを殴ったりして暴れたため家族が不審に思い、部屋に入ってきた。救急搬送され胃洗浄も経験。胃洗浄の最中は病院の医者たちが、海外旅行の話をしたりして、こいつら真面目にやれよとか思ったが、今思うと、胃洗浄は簡単な処置で、患者に不安感を与えないように症状と関係のない話をすることでリラックスできるよう配慮したのかもと後から思うように。
「超不安定」時代を生き抜く
いまのプレカリアートやネットカフェ難民の話をすると、よく年長者から「貧困は昔からあった」みたいなことをいわれます。「だからいまの生きづらさの問題なんてぜんぜん新しくないんだ」、と。もちろん、昔から貧困の問題があったのはそのとおりだと思います。『蟹工船』もそうですが、昔も本当にひどい話がいっぱいありますから。でも、そういうふうにいう年長者って、だいたい「かつては貧困でもみんながんばっていた、だからおまえらも甘えるな」みたいなことをいうんですよ。けっきょく、現在の問題を打ち消して、精神論をもちだして終わりなんです。うんざりしますが。
今はみんなが貧困というわけではないが、昔と違いSNSなどで情報が拡散されているため、格差も目の当たりにする機会が増えている。そこに生きづらさがあると思う。消費者金融は銀行に吸収され、その銀行という看板を背負って、貧困層から搾取する。携帯端末代のローンや消費者金融は現代の病巣だろう。
「生きづらさ」を感じる全ての人に捧げる書籍。共感を感じる僕のような底辺の人は多いはず。ブラック企業などによる搾取に日々苦しんでいる人たちの逃げてもいいんだよというメッセージを発して、多様な生き方を提案する。
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