男性ばかりを取材対象として追ったジャーナリストからみる漂流状態の男性たち。彼らを追うことで見えてくる男性が抱える特有の問題や生き辛さをルポルタージュとしてまとめた書籍。
結婚がこわい
男性の5人に1人は生涯未婚と言われて久しい。「一生結婚できない男」のレッテルを貼り付け、焦燥感や不安を一層煽る。近頃では自治体をはじめ、NPO法人や商工会議所、民間事業者等が婚活イベントを取り仕切ったりと枚挙にいとまがない。そんななか婚活からも弾かれる低所得者(イベントに参加しても相手にすらされない)が多いのも事実だ。
「非正規雇用の男性なんて、女性は全く眼中にないですよ。たまに大学時代の友人から合コンの誘いがありますけど、派遣なんてみっともない姿を見せたくないから無視しています」
「『婚活』ブームも鬱陶しい。金持ってるやつの奪い合いがより激しくなっただけでしょ」
これには僕も共感した。「主夫」何て言葉があるが最初から主夫として結婚する人なんているのかなと思う。そこそこの収入があって結婚して、その後、リストラにあったり病気になったり様々な理由で主夫になるケースばかりだと思う。低所得者の僕としては婚活ブームやイクメンブームほど鬱陶しいものはない。
人とのコミュニケーションを取るのが苦手で、年収や外見が他の男性よりも劣っていると考えている男たちは、どうすれば自らが輝けるかを自覚し、それに打ち込むことが出来た人ほど自信ををつけ、やがて女性との交際や結婚へとつながっていったケースが多かった。
どうすれば自分が輝けるかなんて考えたこともない。低所得者で独身だが、住む場所はあるのでそれなりに趣味などにも自由にお金を使え、気ままにやっているし貯金もほどほどにある。僕のような人間にとって「結婚や恋愛はもはやリスクでしかない」と自分に言い聞かせ過ごしている。
育児がこわい
イクメンがクローズアップされるほどそれが男たちにとって精神的圧迫になるケースが多い。実際に育児に多くの時間を割き楽しく過ごしてますアピールとかされても、どうせフリーランスで稼いでいる専門職の人とか芸能人、国や自治体のPRも兼ねて行ってる人でしょ。妻の側から見ても、夫には子育てよりも仕事を頑張って欲しいという声の方が本音だったりする。女性たちの間でも専業主婦願望への回帰が見て取れる。「イクメン」「女性の社会進出の推進」「少子化対策」一見カッコ良さそうな言葉が急速に社会に広まることで窮屈に感じる人間もいることを分かって欲しい。
介護がこわい
要介護者に同居人がいるとそれが一人だろうと複数だろうと、仕事をしてようがいまいが、訪問介護サービスのうち生活援助(家事援助)が保険の枠内では利用できない。要介護者がひとり暮らしかどうかで判断されるそうだ。僕の場合実家に寄生しているので保険の枠内では利用できないようだ。いまは両親とも元気なのでありがたいが、この先避けられない現実として重くのしかかる。
仕事がこわい
いまや会社が社員の雇用や生活を守ってくれる時代は終焉を迎えている。IT化やAIの進歩により人間の仕事はロボットに取って代わられ、とくに中年の社員ともなればポストの数は限られており出世競争に負け出向させられたり肩たたきとして、畑違いの部署に異動を命じられたりと正社員でもリスクがたくさんある。ブラック企業だけではなく大手の企業でも社員をうつ状態に追い込み、自主退職に導くなんてのも当たり前の時代。そんな会社にしがみつくなんて僕にはできない。
婚活プレッシャー、イクメンの賞賛、ケアメン(介護する男)で当たり前。こういったことが、男性自身を堅い殻に閉じ込め、孤独や苦悩へと追い込んでいる事実が克明に記された共感できる本だった。
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