不動産市況の低迷で、資産価値は落ちる一方。築年数によっては大規模修繕や建替えをしなければ資産価値はなくなるというのですが、そんなお金はどこにもありません‥‥。修繕積立費はどのくらい必要か?建て替えの時建ぺい率から戸数を増やし分譲することで費用をまかなうといった方策はとれるか中古マンションが増える一方、マンションの資産価値を下げないための方策、50年後も住み続けられる修繕の最前線も解説。
「下流老人」という言葉が胸に刺さる
年数を経れば経るほど、マンションの価値は下がる。だが、年をとっていくのは、マンションだけではない。自分が70歳になれば、マンションは築35年になり、80歳になれば、築45年だ。自分も、すでに会社での行く末は見えた。幹部候補生からは外れているので、多分55歳ぐらいで出向になり、給料も減って、そのまま65歳の定年を迎えるだろう。しかも、松井さんは、もうひとつ〝老い〟を抱え込まなくてはならなくなるかもしれなかった。それは両親の〝老い〟だ。両親は、今は元気で暮らしている。だが、そのうち介護の問題が起きてくるかもしれない。
自分や家族の〝老い〟と共にやって来るマンションの〝老い〟とどう付き合うか。いざ建て替えといった事態に追い込まれたら‥‥区分所有者及び議決権それぞれ5分の4以上の同意でたて枷が議決された時、建替え合意者の4分の3以上の同意があればマンション建て替え組合の設立許可がおり、組合員の5分の4以上の同意があれば建替えが可能になる。ただし建て替え決議に同意しない区分所有者に対しては、その権利を時価で買い取らなくてはならない。この同意がマンション建て替えの第一の難関だ。
例にあるグランドステージ池上の場合だと、国や行政の援助が決まる前のざっくりとした見積もりでは負担額が3000万円程度。とても右から左へと払える額ではない。そこで、建物7階70㎡の部屋を持っている人の場合、2階の50㎡の部屋に住み替えることで、国や行政の援助も含めると200万円程度で済むことに。こうしたパズルのような作業を行い、建替えの合意形成が行われるのは興味深い。
法律が変われば部屋を増やせる
諏訪2丁目住宅のように、それまでの規制が緩和されたことで、大きな建物が建てられるようになり、そこで余分にできた部屋を分譲することで建築費用を捻出し、入居者の負担を減らすケースは、古い団地などではかなりある。(中略)桜上水団地の場合、建設された1965年には、「一団地の住宅施設」によって容積率60%、建ぺい率20%だったが、2005年にこれが廃止され、新たに「桜上水三・四丁目中部地区計画」が決定されたことで、約1万4000坪に建てられた4階建と5階建の17棟が、6階建から14階建の8棟に建て替えられ、戸数も404戸から878戸と2倍以上に増えている。
そのほかにも、建物を売却するのではなく、約9000坪あった土地の半分を売却することで、建替えを成功させた例も。行政も老朽化した建物については、住民の安全を守る観点から、敷地に対しかなりゆったりと建てられている建物については、従来の規制を外し、建ぺい率、容積率を上げるなどして建替え易い方向へ法律を変えるケースも出てきている。また大きな道路に面しているところでは、2〜3軒がまとまって綺麗な形の土地にすると大きな建物が建てられる。実際に近隣と力を合わせ建替えをし、成果を上げている例もある。隣接する商業ビルや戸建て住宅と共同で建替えするのだ。
マンションメンテナンスの最前線
「マンションの基本構造になるのはコンクリートですが、これは、しっかり手入れさえすれば、新耐震構造なら100年はもちます」長谷工コーポレーション都市開発部門マンション再生事業部の坂井郁哉理事は、こう断言した。100年もつとは、いきなり、心強い言葉。コンクリートはアルカリ性の材料なので、空気に触れると中性化しやすい。その中性化を遅らせるために、タイルを貼ったり、吹き付けタイルでカバーする。その手入れをしっかりすれば、100年でも強度は保てるという。しかも、さらにこのコンクリートの強度をバックアップする技術も出てきている。外壁断熱改修と二重サッシへの改修だ。外壁断熱改修は、マンションの外壁を断熱材で覆ってしまう改修。断熱材がコンクリートを保護するので、ひび割れや中性化の進行が遅くなり、劣化が抑制されて寿命が伸びるのだという。
二重サッシになるので、夏は涼しく、冬は暖かになり冷暖房費が下がり、室温の変化が少ないので風邪をひきにくくなるなど嬉しい効果も。かかった費用は1戸あたり300万円前後(費用の一部は国交相助成金を活用)。同じ並びにある物件と比較すると、こうしたメンテナンスを施した物件は300万円ほど高く売れるので断熱にかけた費用はほぼ回収できるそうだ。長期修繕計画として積み立てられる修繕積立金は「マンションの修繕積立金に関するガイドライン」を見ると、10階建てで建築延床面積が800㎡、専有床面積が80㎡のマンションの場合、目安となる修繕積立金の平均値は30年間均等に積み立てていく「均等積み立て方式」で1万6160円となる。うちは1万6190円だったのでほぼ平均値でホッとしました。
後半部分は資産価値を落とさない経営者視点のマンション管理の実例が載っていたが、プールやセラピールーム、本格イタリアンが楽しめるレストランなどが入った33階建の高層マンション(築8年1LDK4090万円、3LDK5680万円)と付加価値の高いマンションだったのであまり参考になりませんでした。最近のマンション事情に疎い僕は、5000万円台でこんな暮らしができるとはとびっくりしました。
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