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「弱くても勝てます」開成高校野球部のセオリー|高橋秀実|ドサクサに紛れて勝つ……。監督の独創的なセオリー

東大合格者数日本一で有名な開成高校の野球部が、東東京予選ベスト16に!!勉強の合間グラウンドでの練習は週1日しかない。エラーでも空振りでも気にしない、勝負にこだわりどさくさに紛れて勝つ。そんな監督の独創的なセオリーで下手なりに野球に取り組む様子を追う!!

エラーの伝統

あらためて思うに、野球というのは実に危険なスポーツである。

鉛でも入っているかのような硬い球が、目にも留まらぬ速さで飛んでくる。カキーンという音が聞こえると、すぐ目前。球に当たればケガどころか命にかかわることになりかねず、となると、球が来たら逃げるというのが自然の動きで、捕りにいったりするのは本来、不自然なことなのかもしれない。 「上です!」

生徒たちの声がグラウンド中に 轟き、私は思わず身をすくめた。打球が上から落ちてきますという警告なのだが、そのまま上を見上げると球を顔面で受けてしまいそうなので、見るに見られず、かといって逃げるに逃げられず、私はその場で肩をすぼめ 脇 をしめた。球を恐れているのだが、こうしているとまるで当たるのを待っているようでもある。そしてこの体勢はどこかバッティングのフォームにも似ているのではないだろうか……。

開成高等学校(学校法人 開成学園) は、毎年200人近くが東京大学に合格するという日本一の進学校である。

創立は明治4年。文明開化の 担い手を育成すべく開校した「 共立 学校」がその前身で、当時の『改正共立学校諸規則』(明治 13 年) には次のように記されている。 「本校ハ 専 ラ他日東京大学予備門ニ入ラント欲スル者ノ 為 メニ必用ナル学科ヲ教授スル所トス」

つまり元来、東京大学進学のための学校であり、今もその伝統が受け継がれているのである。とはいえ、「開成の教育の目的は、有名大学への進学率を高めることではありません」(開成学園理事長・学園長 武藤敏郎/『ペンと剣の旗の下』開成学園 平成 23 年) とのこと。学校自体が受験体制を敷いているわけでもなく、東大に進学した卒業生たちにたずねてみたところ、彼らもそれほど勉強していた様子でもない。なんでも開成中学校に入る際も進学塾などで「なんかできちゃって」「なんか成績がよくて」「要領がよかっただけで」と口を揃えるくらいで、最初からできちゃう子供が東大にも合格しちゃうようで、これはもう「神童」と呼ぶしかないだろう。

いずれにしても、開成は受験シーズンになると毎年注目を浴びるのだが、スポーツの世界でその名を聞くことはほとんどない。ところが、平成17年の全国高等学校野球選手権大会の東東京予選で、同校の硬式野球部がベスト16にまで勝ち進んだ。最後に敗れた国士舘高校が優勝したので、ややもすると夏の甲子園大会に出場できたのである。

学校の勉強や進学塾の授業を聞いているだけで全てを理解し、なんかできちゃう。そんな羨ましい頭の持ち主がいるのが開成高校。必死に教科書や参考書を読み込んで勉強しないとダメな人間としてはその頭の構造が謎。

ドサクサコミュニケーション

グラウンドを眺めながら、私は4年前のチームを思い出していた。

東東京大会で4回戦まで勝ち進み、強豪校の修徳高校に惜しくも1─0で敗れたチームのことを。あらためて考えるに、彼らは決して強かったわけではなく、弱いのに勝ち進んでいった。むしろ弱いから勝ち進めたような節があり、弱いという点では今のチームも 遜色 はないのだが、今は何か、こう、弱さというものにハリがない。弱さが弱いようで、かつてのチームのように弱さを逆手にとるしたたかさがないのである。

4年前のチームはエラーを乱発していたが、それも相手の油断を誘うためだったような気がする。 隙 あらば一気に攻め込む。青木監督の言う「ドサクサに紛れて大量得点」。そう、今のチームにはこのドサクサ感がないのである。部員たちと話をしていても「相手の裏をかく」「 陥れる」「 騙す」「付け入る」「ひと泡吹かせる」「ざまあみろ」などという発想がまったくもって欠けている。そういえば、彼らに野球を始めたきっかけをたずねてみると、そのほとんどが「親と相談して」と答えていた。自分というより「親が野球好き」だったり、「親が野球をやっていた」り。中には、「親がサッカーをやっている子より野球をやっている子のほうが好きで、僕に野球だけを見せたから野球が好きになりました」という部員もいたくらいである。親子関係としては素晴らしいことなのかもしれないが、彼らは根源的に「合意」に基づいて野球をしようとしているのではないだろうか。ルールに合意するのはゲームの基本ではあるのだが、彼らはルール以外のことまで必要以上に合意を求めているような気がしてならないのである。

野球のルール内ならなんでもありという精神でどさくさに紛れて得点する泥臭い戦法。エラーも油断を誘うための一つの方法として利用する。使える手を全て使って。

弱くてもそれを強みに変えていく考え方。勝負事はルールに沿っていればなんでもあり。開成魂を感じさせる書籍。

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