元共同通信記者で三菱総研に転じたのち、日本初の独立系シンンクタンク独立総合研究所の代表取締役社長兼主席研究員となった青山繁晴氏。氏により、2004年6月に扶桑社から刊行された『日本国民が決断する日』を改題し、また一部改稿と新たな書き下ろしを加え新書化した500ページ弱のボリュームのある「ぶっとい新書」。
もうアメリカは世界の警察官をできない
「もうアメリカは世界の警察官をできない」と叫ぶトランプ氏がアメリカ大統領選を賑わしてる。アメリカが自らを壊したイラク戦争に、著者が丸腰で行った現場体験記が第一部。第二部では、アメリカの世界戦略の転向とアジアの将来について論考。第三部では起こりうる米朝戦争のシュミレーションを中心に、北朝鮮の思惑を検証。第四部では、真実の日米関係の姿を描き、筆者の拠って来たるところが記されている。第五部では日本の現代政治の果たしてきたことを検証。「紙上勉強会」と称し著者の講演でのよくある質問に答える形で現代史を振り返る。わずか十数名の異教テロリストに2001年9月11日アメリカン・ビジネスの栄華の象徴である高層ビルを破壊された。ソ連を滅ぼした勝利に酔い、世界を自らの手で再編することを考え始めた時の出来事だ。冷戦が終わりアメリカの軍需産業は深刻な縮小に見舞われたが、新たな敵、テロリストが現れ、アフガン戦争、イラク戦争とと続くうちに賑わいどころか空前の好況となる。戦争がビックビジネスであるのは『なぜ、世界から戦争がなくならないのか?』で詳しく解説されている通り。こういった背景から9.11テロを陰謀史観をとって語る知識人もいるが、著者はそういった考えは持たない。
北朝鮮と生物兵器
交通の発達した先進国で使われれば、あっという間に死者が100万人に達すると思われる生物兵器。アジアで生物兵器の開発が実質的に確認されている諸国(北朝鮮、中国、台湾、ロシア)。北朝鮮を見てみると、少なくとも現在の独裁体制が維持できていれば弾道ミサイルなどに小型化した核や生物兵器を積んだ者の発射などの「暴発」はないだろうとしている。
その代わり、姿も声もなく、もちろん宣戦布告のたぐいも一切ないテロ攻撃は十二分にあり得ます。たとえば、天然痘に感染した工作員を日本に送り込むといった生物兵器テロがそうですね。
本当の日米関係を直視する
アメリカに戦争で負けてから現在に至るまで、日米の関係は変わっていない「主従関係」である。これを「同盟関係」と呼んでいるのは社交辞令だ。それは政治、安全保障だけでなく経済においても変わらない。
日本が自立するために考える現代史
自衛隊は軍隊ではありません。「軍」根っことは何か?それは戦車や軍艦、戦闘機よりも軍法会議の有無だ。自衛隊には軍法会議がないので戦わざるを得ない場面で帰ったり、逃げてしまっても罪に問えません。自衛官は迫り来る敵を前にして、辞表を出す事も可能だ。F15戦闘機やアメリカと同型のイージス艦(最新鋭の電子ミサイル駆逐艦)、陸では90式(現在の最新鋭戦車は10式)を展開し兵力は24万を有する日本。私たちが諸国民と共に生きる国家にふさわしい国軍を持つというのが、著者の主張。
代議制民主主義によりつつ、政治を空しいものにしないためには、「大切なポイントはわれわれに、常に戻して意見を聞け訊け」と代議士たち、すなわち「主権者の代わりに国会で議論する人たち」に求め続け、最終責任はいつでも代議士ではなくわたしたち自身にあることを考えて生きよう、ということです。
自称イスラム国(IS)による銃乱射事件がアメリカ・フロリダのクラブで起きた。フランスでもISに忠誠を誓う男がパリ郊外で警官を刺殺、家族を人質にとった。戦争はアメリカの最大の既得権益で軍需産業だけでなくハリウッド映画などの文化まで戦争が主人公です。戦争をしないといったオバマさんだが、対テロ戦争という新たなフェーズは僕たちに何をもたらすだろうか。国内ではこれからオリンピックに向けてテロが警戒される。日本の警察はこれを防ぎきることができるか?考えさせられる一冊だった。
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