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超格差社会・高齢化社会で弱者はどう生きるか?

ごく一部の富裕層を除き、多くの人々にとってすでに他人事ではない「貧困/自己責任大国」日本の現実とその構造を、さまざまな「当事者」たちへの取材を通して、平易な言葉であぶり出す。疲弊する個人と社会に、今、どんな処方箋がありうるのか。<貧困問題>を10年以上にわたりさまざまな角度から追ってきた著者による、いままさに、切実な1冊。超格差・超高齢化社会の中で、今後、必然的に<弱者>となる多くの私たちは、どう生き抜くことができるのか?

いつもの場所で会える友達

風俗産業や個人での売春などが、女性の貧困の一種のセーフティネットになってしまっている事実は、嫌というほど耳にしてきた。そのことと目の前にある光景は繋がるはずなのに、私の中で、どうにもうまく繋がらなかった。サラリーマンと女の子たちは親しげに軽口を叩き合い、それは一見「楽しそう」な光景だったからだ。それぞれの女性たちに、どんな事情があるかはわからない。だけど、家がほぼ地獄で、逃げて逃げて歌舞伎町にたどり着いた優子さんにとって、この吹きっさらしの寒い路上が、やっと一息つける場所なのだ。多分同じように様々な事情を抱えているだろう友達の前で生き生きとした顔を見せる彼女を見て、ここでただお喋りする時間が、どれほど貴重なものであるのか、寒さに足踏みしながら、なんとなく、わかった。

おそらくここにいる女の子たちにとって〝いつもの場所〟で会える友人は貴重なのだ。どんな事情がある人でも全ての人間関係を失って生きていくのは難しい。そこで路上という選択肢しか思い浮かばなかった彼女たちを支援しようとする人間もいるが、ネット上の出会い系サイトなどでは未だにこういう子たちを食い物にしている輩が多いのは残念なことだ。救いの手を差し伸べる方法が間違っている。本気で交際しゆくゆくは結婚して温かい家庭を共に築くのならまだいいが、ほとんどはナンパや援助交際、売春といった性交渉を目的としたものだ。ネット上や大衆紙には貧困女性、性風俗店で働く女性を落とす方法などといった記事が踊り、それを実行に移すような輩もいる。悲しい現実だ。

生まれて初めて履いた靴下

初めて施設に行った日に、施設の人が、私の足の裏を見て、『カサカサだね。ずっと痛かったでしょう』って言いながら、クリームを塗って靴下をそっとはかせてくれた。生まれて初めて履いた靴下。うれしくて、胸がドキドキした。施設の人に、お兄ちゃんが別の施設に行ったと聞いたけど、お兄ちゃんも靴下を履かせてもらっていますか?って聞きたくて、でも、聞けなかった。

父親はトンネルやダムの工事をする仕事で父と兄との三人暮らしだった彼女。父親は仕事が入ると一ヶ月家に帰ってこない日もあった。家の中のことや彼女の世話は兄がしていたという。学校では給食が食べれるので、毎日同じ体操服に裸足で靴を履いて通っていたそうだ。兄の命令は絶対で言うことを聞かないと叩かれることも。それでも「お兄ちゃんも靴下を履かせてもらっていますか?」と聞きたくなったというエピソードは泣けてくる。毎日ご飯が食べられることより、クリームを塗ってもらい靴下を履かせてもらったことの方が印象に残っているのは意外だった。

貧困ビジネスが迫ってくる

「貧困ビジネスの施設」とは、悪質な無料低額宿泊所のことだ。ホームレス状態の人に生活保護を受けさせ、保護費をピンハネする。住環境は劣悪で、仕切りで区切ったひとりあたり2〜3畳ほどの部屋に押し込められる。とりあえず路上で餓死することはないが、家賃や食費などの名目で保護費を多く取られてしまうので、就職活動もままならない。(中略)「朝4時くらいに、ネクタイをしたサラリーマン風の二人組が来て、生活保護を受けないかって誘いにくるんですよ。『寝るところあるよ』『食べるものあるよ』って。そういう人についていくと二度と出てこられないって噂が立ってたので、ついていくことはなかったです。その時間が過ぎると、6時半くらいからは手配師がくるんです。『働かないか』って。僕はそこにも行かなかった。行った人からは、『1日働いて2000円くらいしか貰えなかった』って話も聞いていたので。それに猫もいるし」

この男性は仲間からの情報なり知識があったので貧困ビジネスに引っ張られることはなかったが、そう行った繋がりがないいわゆる〝情弱〟ホームレスはついて行ってしまうのだろうなと。不幸が重なってホームレスになることはありえない話ではない。会社の社宅で生活していた場合、会社が倒産すればもちろん社宅から出て行かなくてはならない。その時、貯金がなかったら‥‥もし自分がホームレスになるようなことがあれば迷わず役所に直行が正解。

東日本大震災〜「勝手に逃げた」自主避難者たち

15年6月、福島県は、区域外避難者への住居の無償提供を17年3月末で打ち切るという方針を決めてしまう。当事者の意見も聞かず、突然の決定だった。福島県は打ち切りの理由として、インフラ整備や除染が進んだことを挙げている。

そもそも安全とは何を基準に言っているのか、なぜ国は「避難住宅からの追い出し」という形で帰還への圧力をかけるのか?生活再建のための補償も十分でない中、不安な日々を過ごす自主避難者たちのリアルも描かれている。

後半では、今や皆が知るようになって来た社会問題「奨学金破産1万人」、ブラック企業「ありさんマークの引越者の実態」、「風俗と福祉を繋ぐ<風テラス>の試み」など一億総貧困時代の日本にスポットを当て問題を共有していく。いつ自分の身に降りかかるかもわからないこう言った事例。常にアンテナを張り〝情弱〟にならないように注意せねばと考えさせられる書籍でした。

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