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生活保障の新しい形「共生保障」を見ていこう。

生活保障とひと口に言っても、年金、医療など含めて制度は幅広い。本書でいう共生保障とはその全てに関わるものではない。それでは共生保障とはいかなる制度や政策を指すのか。第一に「支える側」を支え直す制度や政策。第二に「支えられる側」を社会につなげる制度と政策。第三に就労や住居に関し、より多くの人々が参入できる強制の場を作ること。生活保障の新しい形を見ていこう。

現役世代の低所得化と未婚化

まず現役世代の低所得化と未婚化についてである。一九九五年に一〇〇〇万人を突破した非正規雇用の人々が、二〇一五年にはほぼ倍の一九五三万人に達した。雇用改善がいわれるなかでもその比重は増大し続けている。かつては非正規雇用とは、主には男性稼ぎ主の勤労所得を補完する妻のパート労働で、ゆえに給与は、配偶者控除の受給資格や年金の第三号被保険者の地位を維持できる水準に抑えられる傾向があった。ところがその後、男性を含めてこの給与水準で世帯を担わなければならない人が急増した。

ある大学の就職部が、3億円の札束(正規雇用)と9000万円の札束(非正規雇用)のモニュメントを激励目的で作り話題となったことがある。これはそれぞれの生涯賃金の差を意味する。何が何でも三億円の札束(正規雇用)を手に入れろということだろうが、それでも2010年から2012年に卒業した学生のうち初職が非正規であるケースは男性で20.6%、女性で23.1%に達する。非正規雇用はのちの非婚化につながる初職が非正規である場合、30代前半での結婚経験は35%にとどまる。この給与水準で新たな家庭を築くことは困難なのがわかる。

困窮の世帯内複合

困窮が三世代化しつつあるなかで、個々の世帯のなかでは、三つの困窮が様々なかたちで連鎖する。たとえば、非正規雇用の現役世代が家計を維持している世帯で、老親の認知症がすすみ、その介護のために労働時間と所得が大きく減少し、子どもの貧困につながる。こうしたことはもはや珍しいパターンではない。あるいは、親と同居する三五歳から四四歳までの未婚者が増大している。二〇〇三年には一九一万人であったが二〇一二年には三〇五万人に達し、そのうち完全失業者の割合は一〇・四%になっている(西文彦「親と同居の未婚者の最近の状況 その一〇」総務省統計局ホームページ)。実態としては、成人後も無業あるいは非正規で低所得の息子や娘が、年金などを頼って親と同居する年金依存同居が増大しているとみられる。

親の年金と住居を頼って同居するも、後々、親の介護が必要となり困窮の道へ一直線なんていうパターンも増えているようだ。僕の場合は精神疾患なので少し事情が違うが、非正規で低所得なので自立できず、親と同居しているケースと少し似ている。とりあえず住むところには困らないし新たな家族を持たなければ普通に生活できる。しかし、同世代の家族を持った男性などが子供を保育園に送り迎えしている様子などを見ると忸怩たる思いに苛まれる。

健常と障害

統合失調症などの精神疾患への対応において、今日の精神医療は、しばしば過剰な投薬や入院などで、当事者が障害の根にある苦悩や苦労に直面しないようにしてきた。これに対して「当事者研究」は、当事者が生活のなかで出会う「苦労の主人公」となり、「苦労を取り戻す」ことを目指す。むしろ当事者がその困難の根っこに向かい合い、それを克服するというより、自分の症状がどのような困難から来ているかを自ら「研究」し困難とつきあって行くことを課題とする。つまり、困難を飼い慣らしやり過ごすという、通常「弱い個人」である私たちが皆習熟すべき手法に通じようとするのである。

僕も統合失調症で、相変わらず外に出れば誰かに監視されつきまとわれている感覚に陥るし、調子の良し悪しに関わらず幻聴にも悩まされている(調子の悪い時は幻聴に加え思考停止状態になり行動が取れなくなる)。薬は2回の入院後は減らす方向で治療しているので今では1日1回の向精神薬と頓服のみになっている。こういった症状は自分の個性だと言い聞かし、3年ほど前からリハビリを兼ねて、外に定期的に出るようにし、人目を気にせず行動が取れるよういろいろ試している。

住居をめぐる分断

住居をめぐる制度が、これまた両極に分断されて来たことは、空き家の増大という問題にもつながっている。一方に家を貸したい家主がいて、他方では家を借りたい人がいるが、低所得のひとり親世帯、障害者世帯、高齢者世帯にとって、一般の賃貸住宅に入居するハードルは高い。家賃債務保証を得ることができず、また、生活保護や求職中の住居確保給付金を除けば、ヨーロッパ諸国に見られる住居手当のような公的な家賃補助の仕組みもない。日本では家賃補助など公的住居支援が弱かったその分、借地借家法による借家規制で家主に借家人の保護を義務づけた。ところがこうした借家規制ゆえに、困窮や孤立が広がった後でも、家主は住宅弱者の入居に特に慎重になってしまう。

都内でも空き家となっている住居が数多くあり問題となっている。住むには古びていて、解体して更地にして売り払うにも、金銭的な負担を伴ったり、そもそも入り組んだ土地のため重機が入れず新しい家を建てられないなど様々な問題が起こってくる。

複合的に絡み合う困窮の現場で、どういった共生の場と支援のための制度を作っていくか。国や自治体レベルでの取り組みやなんかも紹介されています。しかし、基本制度を知らないと話にならない場合も多く、地域や学校など困窮者をすくい取る見守りなども必要かと思う。貧困ビジネスに引っかかる前に貧困を可視化し制度によって守っていく必要があるだろう。

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