歴史の道筋は、三つの重要な革命が決めた。約七万年前に歴史を始動させた認知革命、約一万二〇〇〇年前に歴史の流れを加速させた農業革命、そしてわずか五〇〇年前に始まった科学革命だ。三つの科学革命は、歴史に終止符を打ち、何か全く異なる展開を引き起こす可能性が十分ある。これらの革命が人類をはじめ、この地上の生き物にどのような影響を与えてきたのかという物語を綴る書籍。
唯一生き延びた人類種
ホモ・サピエンスは、さらに不穏な秘密を隠してきた。私たちには野蛮ないとこたちが大勢いるばかりでなく、かつては多くの兄弟姉妹もいたのだ。私たちは自分たちが唯一の人間だとばかり思っている。それは実際、過去一万三〇〇〇年間に存在していた人種が唯一私たちだけだったからだ。とはいえ、「人類」という言葉の本当の意味は、「ホモ属に属する動物」であり、以前はホモ・サピエンス以外にも、この属に入る種は他に数多くあった。
人類が初めて姿を現したのが、およそ二五〇万年前、アウストラロピテクス属と呼ばれ、先行する猿人から進化した。そう遠くない将来、サピエンスから派生した新しい人類と我々が競い合うようなことも起こるかもしれない。サピエンスの成功の鍵は一対一で喧嘩したら、おそらく勝つだろうネアンデルタール人に認知的能力とネットワークで優っていたことが挙げられる。
農耕がもたらした繁栄と悲劇
一万年ほど前にすべてが一変した。それは、いくつかの動植物の生命を操作することに、サピエンスがほぼすべてての時間と労力を傾け始めたときだった。人間は日の出から日の入りまで、種を蒔き、作物に水をやり、雑草を抜き、青々とした草地にヒツジを連れて行った。こうして働けば、より多くの果物や穀物、肉が手に入るだろうと考えてのことだ。これは人間の暮らし方における革命、すなわち農業革命だった。
羊の放牧ぐらいなら僕にも考えつきそうなアイディアだが、種から作物を作りその果実や穀物を得ようとするブレイクスルーはすごいと思う。しかしこう行った農作業に従事すると定住しなくてはならなくなったり、腰に負担のかかる農作業を一日中強いられたりと弊害もあった。中でも災害やイナゴのような害虫の被害は深刻で、狩猟採集民の暮らしほど安定していなかった。
想像上のヒエラルキーと差別
たいていの人は、自分の社会的ヒエラルキーは自然で公正だが、他の社会のヒエラルキーは誤った基準や滑稽な基準に基づいていると主張する。現代の西洋人は人種的ヒエラルキーという概念を嘲笑うように教えられている。彼らは、黒人が白人の居住区に住んだり、白人の学校で学んだり、白人の病院で治療を受けたりするのを禁じる法律に衝撃を受ける。だが、金持ちに、より豪華な別個の居住区に住み、より高名な別個の学校で学び、より設備の整った別個の施設で医療措置を受けることを命じる、富める者と貧しいもののヒエラルキーは、多くのアメリカ人やヨーロッパ人には完全に良識あるものに見える。
不幸なことに、複雑な人間関係の中では想像上のヒエラルキーと不正な差別が起こりうる。一部の人々を他の人々よりも法的、政治的、あるいは社会的に優位に立たせることで、何百万もの人々の間の関係を調整しているという側面もある。そして、宗教など社会秩序や政治秩序を正当化する能力を持ったものが出現。普遍的な超人間的秩序を信奉し、その信念を全ての人に広めようとするものが現れた。
空白のある世界地図
日本が例外的に一九世紀末にはすでに西洋に首尾よく追いついていたのは、日本の軍事力や、特有のテクノロジーの才のおかげではない。むしろそれは、明治時代に日本人が並外れた努力を重ね、西洋の機械や装置を採用するだけにとどまらず、社会と政治の多くの面を西洋を手本とし作り直した事実を反映しているのだ。
他のアジアの国々が遅れをとる中、日本は自分たちの無知を認め、多くを西洋から吸収しようとしたことが発展の要因というわけだ。一五世紀から一六世紀にかけて、ヨーロッパ人は自分たちの知らない大陸があることを認め、空白のある世界地図を用い始めた。空白があるということは、冒険家たちの興味を刺激し最終的にはアメリカ大陸は島ではなく一つの独立した大陸であるということを発見する。
幸福度を測る
あなたが年収二五万ドルの経営幹部だったとしたら、宝くじで一〇〇万ドルを獲得したり、会社の役員会が突然、あなたの報酬を二倍にすることを決定したりしたとしても、主観的厚生の向上はわずか数週間で消えてしまう可能性が高い。研究データによると、長い目で見れば、こうした要因があなたの幸福感にそれほど影響しないことは、ほぼ間違いない。洒落た高級車に買い替え、豪邸に引っ越し、カルフォルニア産のカベルネでなくシャトー・ペトリュスを飲むようになるだろうが、それらはどれも、ほどなくありふれた日常に思えてくるだろう。
幸福度を考えると、普段は平凡な暮らしで、たまに非日常を味わうためにちょっと贅沢をするぐらいの方が幸せなのかもしれない。
もしサピエンスの歴史に幕が降りるとしたら?科学者が脳とコンピュータを繋ごうと試みたりするのは精神疾患を治すよりはるかに劇的なものとなるからだと紋切り型の回答が返ってくる。私たちには科学がどこに向かおうとしているのか関心を持ち、進もうとしている方向に影響を与えること。「私たちは何になりたいのか?」ではなく「何を望むのか?」を十分に考える必要があると感じさせる書籍だった。
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