Book

寝ながら学べる構造主義|内田 樹|構造主義という思想がどれほど難解とはいえ…

難解な構造主義を構築した思想家たちが「人間はどういうふうにものを考え、感じ、行動するのか」という問いに答える。

善悪の見きわめや美醜の判断

ですから、いま、私たちがごく自然に、ほとんど自動的に行っている善悪の見きわめや美醜の判断は、それほど普遍性をもつものではないかも知れない、ということをつねに忘れないことがたいせつです。それは言い換えれば、自分の「常識」を拡大適用しないという節度を保つことです。

私たちにとって「ナチュラル」に映るのは、とりあえず私たちの時代、私たちの棲む地域、私たちの属する社会集団に固有の「民族誌的偏見」にすぎないのです。

そういうふうに考えると、「ポスト構造主義期」を生きている私たちは、「構造主義を『常識』とみなす思想史上の奇習の時代」を生きているということになります。

そのような時代は、(あとで見るように)比較的最近始まったものであり、当然、いずれ終わりが来ます。しかし、私たちはいまのところは「構造主義が常識である時代」にとどまっており、そこからの決定的な踏み出しは未だなされてはいません。

なぜでしょう。

それは、いま私がしているような「問題の立て方」そのものが「構造主義的な」問題の立て方以外の何ものでもないからです。(話がややこしくて、すみません。)

ご説明しましょう。

「私たちはつねにあるイデオロギーが『常識』として支配している、『偏見の時代』を生きている」という発想法そのものが、構造主義がもたらした、もっとも重要な「切り口」だからなのです。

つまり、構造主義という「思考上の奇習」についての批判的省察を行うときに、そのための学術的「ツール」として私たちがとりあえず使えるものは、構造主義しかないのです。

構造主義的知見を利用することなしには、構造主義的知見を批判的に省察することができないという出口のない「無限ループ」の中に私たちは封殺されています。この「ループの中に閉じ込められている」というのが「あるイデオロギーが支配的な時代を生きている」ということです。

人間の社会的・文化的現象の背後には目に見えない構造があると考える思想。簡単に説明するとそんな感じか。

王には二つの身体がある

フーコーは身体の苦痛についても興味深い考察を行っています。刑罰の歴史における身体刑の分析を通じて、前近代の身体刑があれほど残忍であったのは、刑罰がめざしていた身体が私たちの身体とは「違う身体」だったからだ、とフーコーは論じています。

その論拠をフーコーは絶対王政期の「国王二体論」から導出してきました。 「国王には二つの身体がある」という「国王二体論」は、カントーロヴィチの『王の二つの身体』という法思想史研究によって知られるようになった概念です。英国のエリザベス一世治下の判例集には次のような驚くべき規定があります。

「王は自らのうちに二つの身体、すなわち自然的身体と政治的身体を有している。彼の自然的身体は、可死的身体である。しかし、彼の政治的身体は、目で見たり手で触れることのできない身体であって、政治組織や統治機構から成り、人民を指導し、公共の福利を図るために設けられたのである。」(カントーロヴィチ『王の二つの身体』)

国王はふつうの人間と同じように傷つき、病み、死ぬ第一の身体の他に、不死にして不壊の第二の身体を持っており、この第二の身体、「政治的身体」こそが王権王国の永続性と正統性を担保するものと法学者たちは考えたのです。つまり、さきほど私たちが使った用語で言えば、「政治的身体」とは「意味によって編まれた身体」ということになります。

フーコーはこの国王二体論に着目して、国王を 弑逆 しようとした大逆罪の犯人への残忍極まりない身体刑の意味を解き明かします。フーコーによれば、大逆罪とは王の「自然的身体」ではなく、その「政治的身体」を侵そうとした行為なのです。だからこそ、その刑罰は罪人の「自然的身体」ではなく、「政治的身体」をこそ標的とすることになります。

国王ともなれば「政治的身体」を持つ必要がある。ふつうの人間と同じように傷つき、病み、死ぬ第一の身体の他にこれが必要。

構造主義聞いたことはあるが、なかなかその難解さから深く知ることがない言葉。新書なので2時間程度で読み終えることができる解説書。

※この書籍はKindle Unlimited読み放題書籍です。月額980円で和書12万冊以上、洋書120万冊以上のKindle電子書籍が読み放題になるサービスが初回30日間無料となっております。PCの方はサイドバーのリンクより、スマホの方は下の方へスクロールしていただければリンクが貼ってありますので興味のある方はどうぞ。なお一部の書籍はキャンペーンなどで無料になっていて現在は有料となっている場合もありますのでその場合はあしからず。

【サブスク】 Kindle Unlimited

Kindle Unlimitedの詳細はこちら

僕が利用している読書コミュニティサイト

【本が好き】https://www.honzuki.jp/

【シミルボン】https://shimirubon.jp/

-Book
-, , , ,

© 2024 51Blog Powered by AFFINGER5