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値上げのためのマーケティング戦略|菅野 誠二|まだ価格競争で勝負するのか?

高値を維持し値引きはしない、そんなブランド力を武器にマーケティングを行う方法。高収益企業に共通する行動とは?それは戦略的なプライシングを実行していることである。経営者、マーケティング責任者やブランドマネージャーに必要不可欠な知見とヒントが詰まった一冊。

価格決定の悪しき3パターン

私が一部上場企業数社の中堅幹部社員に向けて教鞭をとったマーケティングセミナーで、画期的な新商品ができたある米国企業のケース討議を何度か行った。その製品の製造コストはせいぜい多めに見ても 74 ドルなので、そこに経営陣が要求する最低限の利益を上乗せすると100ドルでも売ることができる。一方、競合製品の価格と比較すると400ドル程度にもできる。そして顧客視点では、顧客の作業プロセスを画期的に効率化するので、その時間コストをも考慮し厳密に計算すると出荷価格を1040ドルまで設定してもおかしくはない。これなら粗利率 93%である。これらの価格幅でシミュレーションし、5年分の損益計算書を試算してもらった。その後チーム毎の価格設定とマーケティングプランを発表させると、大変興味深い事実が浮かび上がった。

多くのメーカー出身者のチームは 98 ドルの価格設定を選択する。理由を聞くと「シェア拡大による売上確保です。シェアさえあれば経験曲線による効率化でコスト削減ができて、利益は後からついてくる」と答える。典型的な浸透価格戦略だ。「もっと高い価格設定をなぜ試みないのか?」と、突っ込んで本音まで聞くと「実はそのような画期的な新製品で、粗利率 93%などという夢のようなマージン設定をしたことがない。多少、顧客に気が引ける」「いつも顧客にコスト削減を強いられて叩かれているので、そんなに儲けられるはずがないと考えてしまった」と言う。シェア至上主義から抜け切れておらず、大胆な価格設定には萎縮して踏み込めないようだ。

一方ある総合商社のチームでは直接の競合がいないのだから990ドルで、しっかり儲けます!」と答える。「そこまで高価格にして儲けると、競合の400ドルの商品が出てきたら太刀打ちできるのか?」と聞くと、「相対取引なので、落としどころを見て値引きする」という。

どうやら出身母体のビジネス慣行や経験に即して戦略を決定していて、せっかく事前に講義で聞いたはずのセオリーはどこかに置き忘れている。

これらの傾向は企業のマーケティング担当者と現実の価格決定の事例を尋ねても同様であった。もしワークショップの参加者が企業文化を離れ、組織のしがらみがない個人としてネットオークションで出品したり、逆に最低価格で競り落とそうとした経験があれば、類似の商品の価格推移をチェックしたり、出品者の履歴を確認したり、その商品の世間の評判から今後の値上がりや値下げの可能性を考えることもあり得ただろう。価格を戦略的に決定するには、事業環境に合わせて、顧客、競合、チャネル、自社の視点をバランス良く勘案する必要があることは当然であろう。

多くの企業の場合、価格決定には自社コストに必要な利潤を加えて決めるか、自社対競合商品の強弱で調整する、または顧客のいいなり、という3つのうち慣習的にどれかのパターンしか想定していない、ということである。

強気の価格設定でもブランド力があれば買う人はいる。Apple製品やハイブランドのアイテムなどがそれ。いかに魅力あるストーリーを顧客と共有できるか、それにより消費者が手に入れるものは便利さだけではない所有欲を満たすなどの側面が大事に。僕自身そのような商品を買うときはちょっと無理をする。そのハードルを超えた先にあるベネフィットが魅力的だとその価格でも全然払うんだよな。

ブランドを際立たせることのメリットを知る

強いブランドの利点を事例で解説してみよう。優良企業として知られるトヨタではあるが、フォルクスワーゲンやポルシェなどといったドイツの自動車会社との利益率に大きな格差がある。

経営効率の違いや日本企業のローリスク・ローリターン志向が理由として挙げられるが、それ以外に、ドイツの自動車会社は強いブランドを育成しプライシングが上手なことが知られている。

トヨタ社の2012年度売上は 22 兆641億円、純利益率は6・4%弱である。フォルクスワーゲングループの2012年度売上は昨年対比 12・3%伸張し、1927億6700万ユーロ(邦貨換算2012年115円として約 22 兆1682億円)で純利益率はなんと 13・2%を誇る。

フォルクスワーゲングループは大衆車も製造しているが、傘下にポルシェ、アウディ、ベントレー、カウンタックなどの錚々たる高級ブランドを擁している。

ポルシェ社のヴェンデリン・ヴィーデキングCEO(当時)はインタビューで「我々はブランドに悪影響を及ぼさないように、また自動車市場の価格が崩れないように、価格の維持に努めている。もし需要が減った場合は、必要に応じて生産量を減らす」と答えている。

ちなみにポルシェ社の2012年売上は昨年度対比 12・7%増加し、138億6500万ユーロ(邦貨換算2012年115円として約1兆5944億円)、純利益率は 17%と、圧倒的に高い。

そして、強いブランドには必ずユニークなストーリーがある。BMW、アウディといった業績好調のドイツ車ブランドと同様に、ポルシェの車種は911であろうとカイエン、ボクスター、パナメーラであろうと、一目でそれとわかるブランドとデザインのポリシーがある。1963年9月のIAAフランクフルトモーターショーで展示されて以来、ポルシェブランドは「911」を中核に構築されてきた。911は発売以来2013年に 50 周年を迎えたが、7世代のモデルチェンジを経てこれほど長きに渡って第一線のスポーツカーであり続け、最新の技術を投入しつつもスタイルが継続されている。

フェリー・ポルシェ社長(発売当時)は911の特徴について「911は、アフリカのサファリ・ラリーでもフランスのル・マンでも、劇場に出向くときであれ、ニューヨークの街中であれ、どこにでも行ける唯一の車です」とコメントしている。

また、ポルシェファンの間では「最新の911は最良の911」と言い継がれている。フォルクスワーゲン社のSUVである「トゥアレグ」とポルシェ社の「カイエン」は発売当初両社が共同開発し、ベースとなるシャーシ(車台)も同一であったし、ポルシェ社はベースモデルのエンジンブロックもフォルクスワーゲン社から購入していた。装備や内外装、足回りは異なるものの価格を比較するとカイエンはトゥアレグの約1・3倍であったが、ポルシェブランドのプレミアム分が大きい。

「最新の911は最良の911」この言葉の通り、ポルシェについた根強いファンは最新モデルが出るとそれを気にせずにはいられないわけだ。Apple製品などもその類のもの。iPhoneの最新機種が出ると必ず買い換えるApple信者も少なくない。僕は最近では盲目的に新機種を買うことはやめ、自分の欲しい機能が盛り込まれているかなどを判断材料に購入を決定している。MacBook Proも同じ。

マスレベルまできちんとブランド力を示せていればこの競争社会では確固たる地位を得ることができるだろう。マーケティングに携わる人に読んでほしい一冊。

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