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自己矛盾劇場 「知ってる・見えてる・正しいつもり」を考察する

      2018/12/26

知と社会構造の関係をシンプルに説いた『具体と抽象』『「無理」の構造』に続く第三弾。「あの人は、人の〈批判〉ばかりしている」という〈批判〉、これが自己矛盾。世の中に苛立ちと不毛な争いをもたらす大きな原因の一つがこの人間心理の負の側面であり、インターネットやSNSの発展によって表舞台にあふれるように出てきている。「知性の限界」ともいうべき「自己矛盾」が生まれる心理の歪みと社会構造との関係を身近な事例を取り上げながら模式・可視化。知の構造を見据えつつ、自分自身と対峙するための思考法を提示。メタ認知への扉を開く格好のテキスト。

大量の第三者

SNSをはじめとするインターネットのサイバー空間は「大量の第三者」を生み出しました。芸能人のスキャンダルに正論を展開する人、災害時に復旧のあるべき論を語る人など、こうした発言者のほとんどは「直接の当事者」ではなく、それらの問題と直接的に利害関係のない「第三者」であることが多いのです。「ネット以前」には単なるお茶の間の雑談でしかなかったこのような会話が、半ば公的な空間に出てきてしまったところが時代の大きな変化です。

確かにネット以前では、ワイドショーのネタなんか、内輪のごく一部の人の中でしか話題にならなかったが、今はどうだろうか。必要以上に第三者が好き勝手言うことで、ネタを提供する側も思わぬ議論に紛糾したりすることも多々ある。ストレスが溜まっているのかなんだか知らないが、誰かを叩きたい人たちで溢れかえる。ネット以前の世界を知っているおじさんとしては、なんだか珍妙に思えてならない。

自分は気づかない、他人は気づく

非常にわかりやすい(が実際には頻繁に出合う)「自己矛盾」の例をいくつか紹介しましょう。自己矛盾とはどんなものか、まずは大雑把につかんでください。

「視野が狭いやつは絶対に許せない」→「絶対に許せない」というのは視野が狭いのでは?

「全社一丸となって多様性を推進します」→「多様性を受け入れない人」も多様性の一つでは?

「これ、絶対人に言っちゃダメですよ」→自分は言っておいて他者には禁止する?

「他人の考え方に口出しすべきじゃないでしょ」→というのも口出しでは?

「ネガティブな意見は禁止!」→その命令もネガティブでは?

「精神論だけじゃ解決しないんですよ」→その発言も精神論では?

「こちら、大変有名な方なんです」→「大変に有名」ならいう必要はないのでは?

このような身近な例はいくらでも挙げられるわけですが、ここで着目していただきたいのは、自己矛盾の三つの特徴に全て当てはまるということ。それは、

①自ら気付くことは極めて難しいが、他人については気付きやすい。

②気付いてしまうと、他人の気付いていない状態が滑稽でならない。

③他人から指摘されると「強烈な自己弁護」が始まる。

この三つの特徴から言えるのは、昔から言われているように、「人の振り見て我が振り直せ」ということ。他人の自己矛盾を見つけたら、自分に落とし込んで、自分が同じ状態に陥らないように気をつけることです。

「行方不明者△△名」

災害などでよく見かけるこの「行方不明者△△名」という表現もまた、「三つの領域」の観点から考えると自己矛盾をはらんでいます。大きな災害が発生した場合、「行方不明者」の数が時間の経過とともに増えていくことがあります。はじめは「数名」で、それほど大きな災害でないと思っていたら、みるみる数十名となり、甚大な被害をもたらした場合は数百名単位にまで膨らんでいき、最初の「行方不明者が数名」というニュースはいったい何だったんだろうという話になります。

そもそも数が特定出来ている時点で、それは「行方不明だとわかっている人(既知の未知)の数」に過ぎず、本当に重大な「行方不明かどうかもわからない人の数」という「未知の未知」の領域が忘れ去られていることも。これらのことから学べることは、不確実性が高く十分な情報や実績のない状況下では、特に未知の未知の存在が大きくなるため無知の知の重要性が上がるということ。

「私は謙虚」の矛盾

本来、他者(という自分の外側)から表現されるべきことを自ら言ってしまうと、自己矛盾が生じます。これも非メタとメタのギャップによるものです。「私は世界一謙虚な人間です」がわかりやすい例です。実際にここまで言い切る人は滅多にいないでしょうが、履歴書の長所の欄に「謙虚さ」を挙げる人は少なからず存在するのではないかと思います。

謙虚かどうかは他人が決めることであって、履歴書に謙虚であることを明記するのはおかしなことだと理解しなければなりません。

世の中にはびこる自己矛盾の数々。「ああ、そういうことあるある」と相槌を打ちながら読み進めました。笑っている自分が、実は笑われている側かもしれない。そんな社会や人間関係の歪みをもたらす「知性の限界」について面白おかしく解説する書籍。

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