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死ぬまで働く人、働かせる企業には共通する構造がある

      2017/08/15

2015年に起きた大手広告代理店・電通社員の高橋まつりさん(当時24歳)の自殺は、2016年に大きなニュースとして報道され、世の中にショックを与えた。実は1991年にも電通の男性社員が自殺している。彼も24歳この2つの自殺は同じ会社の社員であると同時に、「防げた自殺」であることも共通している。産業医から見る過労自殺企業の裏側を見ることで、社会全体の今後の課題が見えてくる。

外国語に訳せない「過労死」

過労死という言葉は1980年代後半より注目を集め始めました。1980年代後半と言えば、バブル全盛期。仕事は「いくらでもあった時代」です。この時期はちょうど、栄養ドリンク「リゲイン」の「24時間戦えますか?」というフレーズのCMソングが大ヒットを記録していた時期とも重なります。余談ですが、このリゲインは10年後の1999年、今度は坂本龍一さんの優しい旋律の流れるCMソング『エナジーフロー』で再度大ヒットを記録します。同じ商品でも想定する対象者を「パワフルなビジネスマン」から「癒しを求める疲れた人」とイメージを変えたのですから、つくづくCMは「時代を映す鏡」だと感じます。

若い人にはあまりピンとこないかもしれませんが、当時は過重労働賛美とも取れるCMがまかり通っていた時代。現在の過労自殺が問題となる以前から、日本では常態的に長時間労働が行われていたことがわかるCMです。現在でもエナジードリンクと名前を変えて若者なんかには支持されていますが、その効用は疲れた体を癒す効果は期待できない成分となっています。最近でこそ、忙しくてもしっかり睡眠をとったほうが、パフォーマンスが上がることが認知されてきて『スタンフォード式最高の睡眠』などのベストセラーも数多く生まれています。それでも一部の業種では納期までに上げなければいけない大量の仕事を抱え込み、ほとんど寝ないで仕事をしたり会社で寝袋を広げ寝るなんて企業も。働き方改革という耳障りのいい言葉が世間を覆っていますが、古い体質のまま変われない企業が多く残っているのも事実。過労死という言葉が外国でそのまま通用するぐらいメジャーになった日本、自殺するぐらいなら会社を辞めればいいと思うのだが、一度辞めてしまうと療養期間が長いほど再就職は困難となり、悲惨な未来(非正規で搾取されるような)が待っているので、正社員になった以上意地でもしがみつくというマインドに繋がるのだろう。

会社のメンタル不調者への対応

私が産業医になったのは2007年です。バブルが弾けて10年以上が経ち、その頃になると、大企業が破綻したり、終身雇用、年功序列なども徐々に崩れ始め、日本の会社のあり方、日本人の働き方もかなり現在に近くなってきていました。この頃すでに企業内での問題の1位はメンタル不調者への対応、メンタルヘルス対策でした。前述のように、社員が「会社を訴える」という事例もそう珍しくなくなってきていました。産業医としては社員の健康を守るのはもちろんのこと、それに加えて、「そのような対応では安全配慮義務違反の恐れがありますよ」と現場の上司や人事に意見する役割も担うわけですので、そこは一定の緊張感を伴います。

メンタル不調により会社を辞めた側から言わせてもらうと、とにかく職場にいられないという状況まで追い詰められてしまうと、しばらく休職するなんて選択は考えられなくなる場合もあるということ。僕の場合も、しばらく休めばと促されたが、そんな余裕は一切なかった。とにかくこの場から逃げ出さなきゃ自分が殺されるというところまで追い詰められるのだ。職場に廃品回収のキャンペーンでという電話がかかってきたり、とにかく追い詰められる。一時期、不要な社員をメンタル不調に追い込むための方法を掲載したブログが話題になったが、まさしくその通り。

睡眠を奪うことで人は簡単に判断力を失う

人の判断力を奪う方法。それは「寝かさないこと」。一部の新興宗教や自己啓発セミナーで「寝かさないこと」が使われるのは有名です。まず睡眠を奪い、判断力を奪った状態で教義を「インストール」する。これはいわゆる洗脳のプロセスとして有効なのです。高橋さんは、ツイッターに「睡眠時間2時間」と書きこみがあることからも、おそらく長い間、極度に睡眠時間が奪われていたことが想像されます。人間は睡眠が奪われると数十秒から数分程度の「細切れ寝」を始めます。これは「マイクロスリープ」と言われ、極度の疲労や睡眠不足に対しそれなりの効果はあり、急場はしのげます。

いわゆるショートスリーパー(2〜3時間の睡眠で活動する人)たちも、この「マイクロスリープ」を活用している場合が少なくない。会議中にうとうとしたり、上司の目を盗んで適度に休むための処世術とも言える。

産業医から見た現在の職場環境の問題点や、古い角質を落としていく上で必要な対策や問題点が数多く掲載。働き方改革が有名無実とならないためには企業と社員の間に立つ産業医が的確な判断を下すことが求められる。仕事を辞める前に読んでいたら何か変わったかもしれないと思える書籍でした。メンタル不調で悩んでいる方に読んでほしい一冊です。

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