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ベーシックインカムを問いなおす その現実と可能性

      2019/10/22

ベーシックインカム(BI)は現代社会の救世主たりうるか!? 社会運動や政策提言の最前線にたつ論者や研究者が、BI の意義と限界をさまざまな角度から検討。

不明確な労働基準

まず、すでに述べたように、BIが給付されても生活のニーズが満たされるものではないために、人々は労働から逃れることはできない。そして、日本型の生活が保障される労働基準が不在のもとでは、BIが給付されることに連動して、容易に労働条件そのものが切り替わっていくのである。この点は、これも後述するように、とりわけ近年のブラック企業問題をみれば明らかだ。例えば、BIで月4万円が支給されたとしよう。月給20万円の労働者につき4万円の給付があったとしても、給料が16万円になってしまえば意味はない。単純すぎる図式化だと思われるかもしれないが、これと実質的に変わらない方法は、残業代などの諸手当や各種の法制度の適用を操作することで、周到に実施することが可能であるし、実際に広範に行われている。このように労働条件の規範が存在しない(あるとしてもきわめて不明瞭・不安定である)場合には、BIによっても労働市場圧力が緩和する余地は乏しいと考えられる。それどころか、労働運動の課題である労使の労働条件決定の意義が相対化され、国家による給付政策があたかもこれを代替するかのような「期待」が蔓延すれば、労働者の抵抗が減ることで、ますます労働条件は使用者の意のままになっていく。その結果、BIの効果はますます乏しいものとなる。すなわち、BIは労使関係を代替するものではなく、むしろ労使運動によって労働条件に基準を確立することが、BIが機能するための条件ということになる。

BI(ベーシックインカム)が目指すところともし運用された時に起こりうる労使関係との齟齬は実際に施工してみないとわからないが、起こりうるものだと思う。ブラック企業などはBI支給を理由に給与水準を下げてより利益を上げる方向に動くだろうし、それが免罪符となる危険性も。まずはBI導入とともに給与水準の引き下げを違法とする法律も同時に整備するなど工夫が必要になるかもしれない。すでに日本では労働が生活賃金とイコールであるという構図が崩壊している。それが非正規雇用の存在だ。BIが施行されれば、必ず非正規雇用が増える方向にベクトルが向くだろう。これでは国民全体での生活レベルの向上ということには遠く及ばない。

BIの効果

BIは最低賃金の引き上げを前提とした下層職種の労働市場に対しては、ある程度の影響があるだろう。例えば、都内の下層職種では、時給1000円よりも労働条件を下げることは難しい(2019年9月現在の最低賃金は985円)。フルタイムで働いた場合、月給の額面は17万円程度になり、可処分所得は15万円程度となろう(単身生活保護費よりもやや上)。もしここにBIが月5万円支給されれば、可処分所得が20万円となるから、相当の生活の改善が図られることになる。最低賃金より賃金が下がることがないと考えれば(実際には様々な方法でそれは起こりえるのだが)、確かに生活は上向く。

最低賃金プラスBIによる支給である程度のブラック企業的な働き方への改善は見られるだろう。働く側にも給付による収入面での安定があるので、ブラック企業にわざわざ勤めなくてはならないという理由づけがなくなるからだ。最低賃金が保障されているため、それプラスBIで他の仕事に就けばいいわけだ。

生活保護とアディクション

メディアが生活受給者を取り上げるときに、支給された生活保護費をもってパチンコ屋や酒屋に駆け込む人々の姿を映し出す。あるいは向精神薬や睡眠薬をネット通販で買い込んでいる人々の姿もある。アイドルグッズの収集にはまり込む人々もいる。依存症者だからといって、生活保護費は原則として使途に制限はないし、本人の意向に従って質素倹約に勤めれば、福祉事務所から過度な指導は受けない。何にしようするのも基本的には自由である。むしろ、近年の福祉事務所は生活支援や指導にあたるケースワーカーの質量とともに十分ではなく、アディクションへの対応やきめ細やかなケアなどができていない。だからこそ、生活保護の現金給付によって、アディクション状態を長引かせ、永続的な苦しみが拡大する人々が確実にいる。

僕が働いていたゲームセンターでも常連さんでギャンブルにハマる人が多かった。珍しく買った時以外はいつもカツカツな生活をしていた。普段そのような生活を送っている反動か、ギャンブルに勝った時は浪費しがちな傾向にある人が多かった。ベーシックインカムは表面的に見るとうまく機能しそうだが、高齢者の問題も頭を擡げる。ベーシックインカムを担保に入れてお金を借り入れるなんてサービスが必ずでてくるだろう。そうなってくると貧困からの脱出はいよいよ難しいものとなってしまう。

ベーシックインカムのメリット、デメリットを複数の専門家によって解説した書籍。一人の著者の意見だけでなく多くの専門家の意見を聞くことで、ベーシックインカムの全容が見えてくる。AI時代の到来と切っても切れないベーシックインカム論議はまだまだ紛糾しそうだ。

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