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ブラック企業はなぜ規制されないのか?選択不能な働き方

      2017/12/20

我が国の場合、企業に対する規制には大らかだ。食品の安全衛生のように厳しいものも存在するが、社会的規制の多くは罰則が軽く、企業が規制や罰則の厳しさから悲鳴を上げているという話はほとんど聞かない。どうして、政府は企業にこんなに弱いんだろうか?昨今、ブラック企業が話題になっているが、「ブラック企業を規制しろ」といった国民的デモが起こるわけでもない。私は平成2年に旧労働省に入省して14年間勤めたが、この14年間の体験はそのまま、私の政府に対する企業観を形作っている。その特徴を一言で言うと、「政府は何かと企業には気を遣う」ということだ。

内部労働市場システムこそ日本の構造

経済から社会にも広げて考えた場合、「日本の構造」とは一体何だろうか?改革すべき日本の構造とは、霞ヶ関などの統治機構のことだろうか?様々なことが思い浮かぶが、私は「内部労働市場システム」こそ日本の構造だと思う。ここが変われば日本の経済社会が大きく変化するからである。霞ヶ関改革の比ではない。「内部労働市場システム」についてはあとでじっくり説明するとして、「内部労働市場」とは、簡単に言えば、失業が少なく企業がなるべく雇用を抱え込むような労働市場のことだ。どうして内部労働市場システムが日本の構造なのか?それは個人ー企業ー政府という「三大アクター」の関係を大きく規定してきたからだ。そのことは内部労働市場が大きく揺れ動いた「失われた20年」の不況期をみれば、よくわかる。

この間、ニュースアプリの記事で、現在の景気がかつてのいざなぎ景気越えという見出しの記事が飛び込んできた。確かに企業は潤っているようだが、この好景気、末端までその恩恵が行き届いていないのが現実だ。企業は内部留保に熱心で、従業員ではなく株主の方向を向いている企業が多いのも原因の一つだ。実力次第の賃金体系という企業が一般化すれば、社会保障を中心に政府の役割を拡大するかどうか「政府の大小」がもっと議論されるはず。年金や医療子育て支援など「大きな政府」を望むのであれば税負担は重くなる。しかし、企業がドライな対応を取るのであれば、僕たちは否応無く政府の役割を考えざるを得ない。消費増税を嫌がる人も相当減るだろう。

政府と企業の関係も同様。企業に全てを依存しないのであれば、企業に対してもっと厳しい態度をとるようになるだろう。「ブラック企業を取り締まれ」「違法な企業活動を許すな」とかを政府に求めていくようになるはず。労働法違反だけでなく、税金を使って企業を支えることにも神経質になるし、消費税は上げるのに、法人税は下げるなんてことは誰も許さないだろう。企業が雇用を維持するからこそ、企業の負担減を受け入れているに過ぎないのだ。

内部労働市場システム

新規一括採用の場合、卒業する前に就職を決めるため、失業の状態を経ずに直ちに職を得ることができる。しかも、企業は経験者優先ではなく、仕事経験のない学生を採用して教育訓練をしてくれる。失業をしないでスムーズに学校から職場に移れる。しかも、仕事経験のない若者に仕事を教える形で能力が蓄積されていく。当たり前だと思っている人も多いが、この二つのメリットは計り知れないものがある。それは正社員と非正社員を比較すればよくわかる。非正社員の場合、与えられる仕事の範囲は限定されている。それに対して正社員の場合、様々な職種を経験できるため、幅広い仕事能力を得ることが可能だ。これが長年蓄積されていくと大きな能力差となる。

今でこそスペシャリストを正社員として雇用することが重要視されてきたが、少し古い体質の会社組織だと、いまだに正社員はゼネラリストという会社も多い。専門的な知識を持った人たちをもっと活用、採用すべきだが、新卒一括採用で、自分の会社風土に溶け込ませるといった社員教育を施す会社が多いのも残念なことだ。終身雇用のデメリットは衰退産業からの人材移動がスムーズに行かないこと。産業構造は絶えず変化しているにも関わらず人材の移動がうまく行かないと経済にも悪影響が出てくる。それに、一度人を雇うと簡単に解雇できないのもデメリットの一つ。クビにできないからといって、追い出し部屋に詰め込み自分から退職するよう仕向けるようなことはもはやブラックといっていいのではないだろうか。退職金を多めに払って早期退職を促すというのなら、精神を病むことはないし企業にとっても社員にとっても良い関係のままでいることができる。

日本の規制はなぜ緩いのか?

昨今、ブラック企業が話題になっているが、「ブラック企業を規制しろ」といった国民的デモが起こるわけでもない。私は平成2年に旧労働省に入省して14年間務めたが、この14年間の体験はそのまま、私の政府に対する企業観を形作っている。その特徴を一言で言うと、「政府は何かと企業に気を遣う」ということだ。

財界や経済権力に役所が支配されているといった単純なものではなく、財界やその意向を受けた政治権力が強硬に反対するような政策はまず通らない。これがブラック企業を規制しようという動きにならない理由の一つだ。働き方改革なんて言うと聞こえがいいが、それはちょっとまずいんじゃないといったような運営をしている企業にメスを入れなければ、今後も被害者は多く出るに違いない。

働き方が多様になりつつある今だからこそ読んでおきたい、古い体質を持った日本の規制と雇用に関する書籍でした。

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