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『「生存」の歴史と復興の現在 3.11分断をつなぎ直す』

      2019/02/20

歴史のなかに「分断」を越える視点を探る

地震・津浪、そして原発事故~放射能汚染という、今も続く巨大な被害と、それがもたらす「分断」を越えることは可能か?アイデンティティの要としての地域歴史遺産の再発見など「生存」の歴史をつなぎ直す可能性を示す。

「福島」をめぐる資料と歴史

「地域歴史遺産」と「生存」の歴史との関係性を考えるうえで重要な視座を与えてくれるのが、東日本大震災後の「福島」に関わる資料と歴史をめぐる問いである。周知のように東日本大震災における福島第一原子力発電所事故の影響が深刻な影響を与えつづけている浜通り地域において、震災発生から八年が経過しようとしている現在、資料と歴史をめぐる大きなエポックが起きている。一つは浜通り地域において「アーカイブ」の考えが広がっている点である。本書第2章や対話2では、双葉町や富岡町、大熊町などにおいて全庁的な広がりのもとでアーカイブ構築事業が実施されつつああり、そこには震災前の地域の姿を示す「文化財」と、震災の記憶を伝える震災資料とがあわせて保存されることになる。詳しくは両稿を参照されたいが、原発事故によって断ち切られた地域の「記憶」をアーカイブとして再びつなぎ合わせ、後世へ伝えようとする取り組みであるといえよう。もう一つは、現在、浜通り地域のいくつかの地域で大字誌編纂の取り組みが行われているということである。

3.11以降毎年この時期になると震災関連の書籍が出る。その度に手にとってその記憶を忘れないようにしようと思うのだが、現地でも「アーカイブ」として震災の記憶を後世に残すための事業が盛んに行われている。一時期震災当時の倒壊した建物を残すかどうか議論を呼んだことがあるが、大字誌編纂の取り組みなども行われているので、忌まわしい記憶が残る倒壊した建物は残しておかなくても良いと思う。

何を残すのか

「文化財の残らない復興は本当の復興ではない」と、あの日から訴え続けて、前例のない津波によって被災した文化財の再生に向けた努力を続けてきた。博物館資料は、陸前高田の自然・歴史・文化を伝えるうえで大切なものであるが、発災からかなり時間が経過した現在でも仮設住宅で厳しい生活を続ける被災者の方々がいる。私自身も丸三年仮説住宅で生活を送り、その厳しさはわかっているつもりである。被災者の方々はいまだに明日が見えない状況で苦しんでいる。そんななかで自然・歴史・文化が大切だと声高に叫ぶことはなかなか難しい。それでもやらなければならない。しかし、それは本当に必要なことなのか。

震災について寄り添う発言をしようとも、僕のような被災者とは無縁の人間だといまいち偽善者っぽく聞こえてしまう。それでも、わずかばかりの募金(スターバックスは毎年被災者への募金ができるプログラムを行なっている)をしたり、震災関連の本を見つけては読んでみたりすることで偽善者っぷりを発揮しているわけです。それでも何もアクションを起こさないよりはいくらかマシなのではないか思う今日この頃です。

生活再建の遅れと被災地内格差

人口現象という指標をとると、震災七年を経過して、被災地の中でも原発災害地域が最も深刻で、これに津波被災地域が続くというかたちをとっており、激甚被災三県の内部における復興格差を暗に示していた。別の指標をとってみよう。災害復興公営住宅の二〇一五年度末までの整備状況は、対計画戸数比で、岩手県約六割、宮城県約六割に対して、福島県では約五割とされているが、福島県のうち原発避難者向けの住宅は約三割の進捗率にとどまっていた。

また、創造的復興の目玉であった、高台移転の進捗率も、岩手39%、宮城51%、福島43%と時間がかかっている。復興が遅れると、被災者たちの心は癒されないのに身体的な疲労と相まってPTSDなどの障害を併発する場合も。避難先でのいじめなども問題になっているが、学校はそうした児童たちのケアをしっかりやってほしいものだ。学童期にこうしたいじめを受けると生涯にわたってトラウマが残ってしまう可能性も。被災者の子供が学校内にいる親御さんは、学校共々しっかり教育するべきだ。

原発事故後の分断

原発事故後、福島県の被災者・住民はさまざまな局面で分断されてきた。放射能のリスクに関する考え方、事故後に避難したのかしなかったのか、福島県産農作物を食べるのか、福島で子育てを行うのか、避難指示解除区域に帰村するのか、賠償金をもらっているのかもらえないのか、トリチウム処理水を処分するのかしないのか。

被災状況によって被災地の声はさまざま。これが事故後被災者の声を一つの要求としてまとめられなかったことの要因である。

3.11から4〜5年が過ぎた頃から、被災地における歴史や資料、文化財などに関心が集まるようになった。歴史や資料は今後の復興の指針となるのではないかという議論も。歴史や資料、地域の蓄積が「生存」の歴史と復興の現在に果たす役割に注目し、「生存」の歴史と復興の現在をまとめた書籍。

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