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「入門 犯罪心理学」で新しい犯罪心理学による治療の現場を見る

      2016/11/14

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ここ30年の間に目覚ましい発展を遂げた犯罪心理学の最前線を紹介。その知見が犯罪対策にどのように生かされているのかをわかりやすく解説した犯罪心理学の入門書。学問として学びたいと思う人はもちろん、雑学的知識として興味を持った人にも優しい書籍となっております。

犯罪心理学とは犯罪行動に対する理解を深め、その科学的知識を犯罪の抑止に役立てることを目的とした応用化学である。

メディアの犯罪報道

我々は犯罪を憎み、減らしたいと思う一方、連日取り上げられるメディアの報道によるフィルターを通して、犯罪に強い好奇心を抱く傾向がある。メディアは事実を脚色し、よりセンセーショナルに、あるいは、エモーショナルに仕立て上げる。凶悪犯罪が起きるたび容疑者の精神状態や格差問題などが話題になるのも視聴者の関心を煽るメディアの偏重的な報道が原因だ。容疑者側に弁護士がつき精神疾患の可能性を主張する場合があるが、凶悪事件を起こすほどの精神疾患は相当な重症だ。僕自身、統合失調症の症状が一番きつかった時期に、外を歩いていると「体の不自由な人の後をつけ家に入り金を盗め」というような幻聴が聞こえたが、理性が働きそのような行為をすることはなかった。この本でも精神障害者が犯罪に至るのは例外的だと言って良いと書いてある。同じ格差社会の犠牲者でも犯罪を行った者と犯罪を行わない大多数の人々とは明確な違いがある。本人の反社会的パーソナリティー傾向などによるものなのだ。

犯罪心理学における神話と実話

  • 少年事件の凶悪化が進んでいる。
  • 日本の治安は悪化している。
  • 性犯罪の再犯率は高い。
  • 厳罰化は犯罪の抑制に効果がある。
  • 貧困や精神障害は犯罪の原因である。
  • 虐待をされた子どもは非行に走りやすい。
  • 薬物がやめられないのは、意志が弱いからだ。

実は、これらはいずれも化学的な裏付けがなく、事実ではない。いわば、「犯罪心理学における神話」である。

事実を簡単にざくっとコメントすれば、以下のようになる。

  • 少年犯罪は年々減少の一途をたどっており、特に凶悪事件や粗暴事件の減少が目立っている。
  • わが国ではここ十年以上、犯罪発生件数は減少を続けているし、国際的な比較をすると、日本は依然として世界一安全な国である。
  • 性犯罪は、窃盗や薬物事犯に比べると、はるかに再犯率が低い。
  • 厳罰化には犯罪抑制効果はなく、むしろ最悪の場合、助長してしまうことがある。
  • 貧困や精神障害と犯罪の関連性は低く、犯罪の原因を追究するためには、他の要因に着目する必要がある。
  • 虐待と非行の関連性は低く、被虐待児が非行に走りやすいとういのは偏見である。
  • 薬物がやめられないのは、薬物に依存性があるからであり、意志の力とは関係がない。

犯罪者のアセスメントと治療

犯罪者に心理的な治療を行った場合再犯率は50%も低下するというデータがある。適切な治療(行動療法や認知行動療法)などが成果を上げているようだ。薬物犯罪の治療にはコーピングスキル訓練というのがあり効果を上げている。薬物仲間との関係を絶ち、自助グループで新しい仲間を見つけたり、繁華街に行くのを止めたりする代わりに近所を散歩したりするというもの。世の中の大多数の人は薬物に頼らず、友達に相談したり、美味しいものを食べたり、趣味にいそしんだり、体を動かすことで自然とコーピングを行っている。その他にも薬物渇望だけでなく、我々がとらわれやすいネガティブな思考や感情(落ち込み、不安、イライラ)などへの効果が実証されているマインドフルネスも取り上げられていた。これは「疲れない脳をつくる生活習慣」石川善樹著で詳しく解説されている。1990年代に「エビデンスに基づいた医療」の名の下大きなパラダイム転換が起こったのと同様に、刑事司法や少年司法も、今後、行動科学の知見を取り入れパラダイム転換を果たす時期が来ている。

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