新渡戸稲造の名著『修養』『自警』を現代仮名遣いに変えて、さらに平易な言葉で表現した書籍。現在でも通用する数々の言葉はあなたの心に刺さることもあるだろう。
逆境にあるものが陥りやすい危険
逆境に陥った人の中には天を怨むようになる者がいる。自分はこんなに努力しているのにこんな境遇になったのは天のせいだというのである。物質は火の中に入れると溶けて形を失う物、反対にますます硬くなる物とがあるが、人も 艱難 という熱い火で鍛えられるとその性質が硬くなることがある。ここで言う硬くなるとはもちろん悪い意味で、冷ややかで薄情な人間になり、他人はすべて敵であるかのように思うことである。反対に柔らかくなる者もいるが、ここで柔らかいと言うのは、人生はつまらないもの、この世ははかないものと思い定め、世間から遠ざかり逃げようとすることである。昔の仏教徒にはそういう人がたくさんいたし、キリスト教徒にもいた。山奥深く入り世間から離れて暮らしたり、ギリシャのメテオラ(※岩山に築かれた修道院) のように、高い絶壁の先端に住まいを構え、世間と交わるのを避け、出入りにはザルに入り一本の綱を頼みとした者すらいた。天を怨むと言ってもこのように二種類があり、したがってその結果も違ったように現れる。一つは、このような結果を見るとは神も仏もないと言って信仰を失い、人間界には徳も義もありはしないと過激な破壊論者になることである。これは強い者の陥りやすい過ちだが、弱い者が逆境に陥ると世間に反抗はしない代わりに、陰気、卑屈、悲観的になって、すべてのことにブツブツと不平不満を言いながら日々を送ることになる。
どんなに逆境にあっても愚痴っぽくはなりたくないもの。不平不満からは何も生まれない。努めて明るく振舞うことで逆境に立ち向かいたいものですね。自分の弱さの表れでもあるので強い人間になることが不平不満の解消につながると心得ていた方がより高みを目指せるというもの。
逆境の善用で精神を鍛える
逆境に陥らない人はほとんどいない。そしてひとたび逆境に陥ると、人はその精神に先に述べたような六つの危険な影響を受けやすい。それならば、逆境はひたすらこれを避け、取り除くべきものかというと、僕はむしろこれを善用することを勧める。つまり、逆境そのものを善用して、精神の修養に役立てるのである。例えば夏の日ににわか雨にあった時、どこかで雨宿りして晴れるまで待つのも一つの方法であるが、降るなら降れという覚悟でいくら濡れても目的地に向かって歩き続け、やがて太陽が出たなら濡れた服が乾くのを待つ、というのもまた一つの方法である。逆境に陥った時、これを避けたり防いだりするのは悪いことではないが、卑怯な心から逃れようとしたり、禍いを他人にかぶせようとするのはよくない。逆境を耐え忍び、その中から修養を求めるようにしたい。これが、僕が言う逆境の善用である。
人は誰しも逆境に陥ることがある。勉強では優秀でも対人関係が苦手だったり、その逆も。逆境を精神修行の場と捉えることができれば、成長へとつながるので、ぜひ心がけたいものだ。
貯蓄と蓄財は異なる概念
僕の知人のアメリカの婦人は三年後のことまで予定を立ててそれを実行している。再来年の七月三日の船でどこへ行き、八月にはどこに滞在しているから、用事があれば相当するところに連絡してほしいと言う。一方、日本人の生活には計画性がない。もしあったとしても、社会の生活の方法がこれを実行させるようになっていない。例えば朝食前から来客があり、これに応対していると電話のベルが鳴る。客は平気で長話をし、その間にまた電話がかかってくるという風で、これでは決まった時間にゆっくり朝食をとることもできないし、決まった仕事を予定どおりに行うこともできない。「今日あっても明日は命があるとは限らない」などと言って、予定や計画を立てることに耳を貸そうとしない人が多いが、これは愚かなことである。今日命があるように明日も命があると信じる方が合理的である。幸いというか不幸というか、明日死んだならそれで済むだろうが、もし生きていたなら毎日が無計画なために大いにまごつくことになる。日本人は今日あっても明日はないかもしれないという消極的思想を持つが、西洋人は今日あるから明日もあるという積極的思想で計画し準備をする。もし個人が今日あっても明日は知れないというのならば、国家もまた同じであろう。今日あって明日あるかわからない国ならば、何もなすことはなくなってしまう。
3年先までスケジュールを入れるなんて‥‥。僕はお金に関しては結構先のことまで計画に入れている。電化製品の買い替え時期やAppleの新製品の発表と同時に注文できるよう貯金したり。毎回スケジュール通りにはいかないものだがやらないよりはまし。
人は逆境に立った時どうやってそれを乗り越えるのか。明日を考える上で重要な要素が満載。偉人のいうことは聞くものです。
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