ライブドア事件を発端とする株価の大暴落の最中、進退をかけて挑んだ新事業。起業家の孤独と仕事に対する姿勢を語っていくノンフィクション。
暗闇の中で
2001年5月。 28 歳の誕生日を迎えた月でした。
株価低迷に 喘ぐサイバーエージェントは、存亡の危機を迎えていました。
当時、M&Aコンサルティングの社長を務めていた村上世 彰 氏がサイバーエージェントの株を市場で 10%程度買い占めていたのです。
モノ言う株主がついに日本にも登場したということで、いつもマスコミから注目を集めていた、通称「村上ファンド」を率いる方です。
村上氏は、サイバーエージェントの第4位の大株主になっていました。そして村上氏から、 「サイバーエージェントが上場時に調達した225億円を、一度株主に返したらどうでしょう。つまり一度会社を清算してやり直したらどうか、ということです」 と通達されたのです。
そこからは、悪夢のような数か月でした。
その頃、サイバーエージェントが保有している現金よりも市場の株価が低かったために、現金目当てで買収し、赤字事業を整理すれば巨額の利益が出るような状況にあったのです。
赤字の事業のほとんどは「メディア事業」でした。後で詳しく述べますが、この事業群は、私にとって、サイバーエージェントの将来を担うために先行投資していた重要な事業でした。
しかし、この初夏から秋までの期間、私の持つ潜在株式の契約上の問題と、村上氏のアドバイスに従って自分の株を社員に配ったことで、私の株式保有比率は下がっていました。
気がつけば、どこかの大株主がその気になれば、サイバーエージェントを子会社化することが可能だったのです。
私は大株主と株式保有比率を巡る交渉をぎりぎりまで続け、調整に全力を注ぎ続けました。また同時にあちこちからくる買収の話にも粘り強く交渉していました。
買収ゲームから会社をなんとしても守らなければならない。
思えばライブドア事件前後からM&Aという言葉が一般にも浸透してきた。敵対的買収なども注目を浴び、もの言う株主が跋扈するように。買収ゲームの様相を見せ始めたサイバーエージェントの内側から見た様子が描かれており、これがリアルかと思った。
ライブドア事件
起業家として、ゼロからベンチャー企業を立ち上げていくと、世間の反感を買ったり、既得権益を持っている人から邪魔されたりします。
それでも前に進み続けるためには、強靱でタフな精神が必要です。
しかし、何か巨大で抗えないものに負けてしまった……そんな感覚だったのかも知れません。
かつて堀江さんに対して嫉妬心を胸に抱いたこともありました。ライバルの失脚を喜んでもおかしくないのかも知れません。しかし、これだけの大きな事態を目の当たりにすると、そんな小さなこと全部が一瞬で頭から消え去りました。
堀江さんは、同じ時代を共にゼロから会社を創って頑張ってきた戦友ともいえる友人です。
経営手法は私とは真逆なほどに違うけど、共に、社会や株主からの激しい重圧を孤独に背負い、期待に応えたい一心でいつもぎりぎりのところで逃げずに戦ってきたつもりでした。
多くのものを犠牲にして、失い、それでも狂ったように働いてきました。
事業内容について批判されることがあっても、結局はインターネットという新産業の発展に貢献し、多くの新しい雇用を生み出し、税金を納めていることは国の発展に寄与していると自負していました。
起業家という職業は立派な仕事だと、誇りを持っていました。
その職業が逮捕に繫がるようなものであったとは、到底受け入れられません。
その時、容疑となったライブドアの問題の実際のところはよく知らなかったですし、分かりませんでした。
社長業をしていると、本当に犯罪の匂いのする経営者に出会うことがあります。脇の甘い起業家は、あっという間に騙されたり、犯罪に巻き込まれたりしてしまいます。だから、悪い人だと見抜けなければ、長く生き残ることはできません。
最近思うのだが、ファッションとしての起業をする人が増えたのかなと。会社なんて登記すれば誰でも作れるので〇〇大社長なんて肩書きでSNS活動をする輩が増えたような。自分の大学のブランドと社長というワードで勝負するのはいいのだが、それに惑わされて詐欺に遭う人も多数いる。騙す側としては社長という肩書きはパワーワードとなる。僕の済んでいるマンションにもネットワークビジネスの拠点として部屋を利用している輩がいて問題となっている。
起業家の葛藤と日々起こるトラブルの数々にどのような心持ちで挑んでいるのかがわかるノンフィクション。あなたは彼のような起業家になる力はあるか?再度、起業家を目指す人に問う。
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