ほとんどの食品の賞味期限は実際に食べられる期間より2割ほど早く設定されている。にもかかわらず、多くの消費者は1日でも賞味期限の過ぎた食品は捨て、お店では棚から消えていく。買い物の際も今日使う食材にもかかわらず、なるべく棚の後ろの方から選び取るという人も少なくないのでは?食品にまつわる勿体無い構造にメス!!
賞味期限を短く設定するのはなぜ?
なぜ企業は賞味期限を短く設定するのでしょうか。
それは、食品メーカーが商品を作って出荷するまでは、工場の中で温度が一定に保たれていますが、ひとたび出荷されてしまえば、流通やその後の保存状況下でどのように管理されるか、わからないからです。トラックに載せているときの温度や、物流センター・スーパーマーケット・コンビニエンスストアの倉庫に置かれるときの温度は設定されていますが、実際にその温度になっているかまでは、メーカーは管理できません。さらに、店頭での状況、客が買ってからの保管状況まで考えると……。
同じように作られ、同じ工場から出荷されたとしても、買われていった地域や買った人はバラバラです。買われる季節や気候も異なります。それらすべての条件や起こりうるリスクを考えると、広く多くの人に製品を提供する企業としては、「ここまでなら必ず大丈夫」という期間を、最大公約数的に、短めに設定せざるを得ないのです。
実際、私は、あるコンビニで、店員が一人しかおらず、倉庫から品出しをしている最中に、レジにお客さんが来たため、品出ししている冷蔵・冷凍食品が常温で放置されているのを、見たことがあります。
保管状況がよく、客が買って帰ってからの温度管理もしっかりしていれば、「0・8」などの安全係数を掛けて短めにした賞味期限よりも、長く日持ちします。
海外と比べると、日本は賞味期限を短めに設定する傾向にあります。湿度が高いのも一因です。が、安全性に対する要求レベルが高いことも、また一つの要因でしょう。
では、ウチの冷蔵庫にある賞味期限切れの食品はどうなのか。それは、製造した企業に聞いてもわかりません。工場から出荷されるまでの条件は同じでも、その後の条件はバラバラです。
まだ食べられるにもかかわらず廃棄されてしまうのには3分の1ルールというものがあるから。賞味期限全体の3分の2のところに「販売期限」が設定され、そこに到達すると棚から撤去される。このルールのため勿体無い食品ロスは減る事がありません。ちょっと前にコンビニでも廃棄を減らそうと撤去期限が迫ったおにぎりなどの食品を値引きするサービスを始めました。しかし、そもそも廃棄前提のビジネスモデルなのでそこを改善しないと意味がない。
「食品ロス」を「支援」に変える「フードバンク」
これまでもたびたびお話ししてきたように、まだ食べられるにもかかわらず、賞味期限接近のため流通できないなど、様々な理由で廃棄せざるを得ない食品を「食品ロス」と呼びます。この食品ロスを、事業者や個人から引き取り、福祉施設や生活困窮者など、食料品に困っている人に無償で分配する活動やシステム(仕組み)、もしくはその活動を行う団体を「フードバンク」と呼びます。
世界初のフードバンクは、1967年に米国で始まりました。1960年代後半、米国・アリゾナ州フェニックスのスープキッチン(生活困窮者のための無料食堂)でボランティアをしていたジョン・ヴァンヘンゲル氏が、スーパーマーケットのゴミ箱に、まだ十分に食べられる食品が捨てられていることを知りました。そこで、スーパーの職員に、捨てる前に食品を寄付してくれるよう依頼。スーパー側はこれを了承し、食品を寄付しました。これが、世界で初めてのフードバンクと言われています。
フードバンクを経由する食品の流れは次のようになっています。
食品メーカーやスーパーなどの小売店は、食品をフードバンクが所有もしくは借りている倉庫に預けます。企業が配送コストを負担する場合と、フードバンクが引き取りに行く場合があります。食品を必要とする福祉施設や生活困窮者は、フードバンクで食品を直接受け取る場合と、届けたり送ったりしてもらう場合があります。
なぜ「バンク(銀行)」という名前がついたのでしょう。米国でこの活動が始まった当初、ある女性が、「銀行は、お金を預けておいて、必要なときに受け取る。食品も、預けたものを必要なときに受け取ることができる銀行のような場所があればいいのに」とジョンに話したのだそうです。
食品ロスを減らす取り組みは徐々に浸透してきているようですが、ここでも情報格差で支援を受けられない人が出てきます。最近ではスマホの普及により情報格差は減ってきているものの、使いこなせない人はやはり置いてきぼりを食います。こうした人たちにも支援が届くようにするためにはまだ施策が必要です。
賞味期限にまつわるあれこれと「食品ロス」に関する問題提起や解決方法などを解説。持続可能な世の中にするために必要なこれらの問題を消費者も知るべき。何気ない日常にも勿体無いは潜んでいます。
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