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晩節の研究 偉人・賢人の「その後」|河合敦|30人の偉人たちの知られざる末路

歴史上の偉人たちも活躍したのは一時期に限られる。それどころか、リタイア後意外なその後を送った自分物が割といる。有能だった成功者たちの意外な末路を紐解き人生の本質を追求する画期的な書。

源義経(1159〜1187年)

「河合先生、源義経がチンギス・ハーンになったというのは、本当なんですか?」

高校の教員時代、源平合戦の話におよぶと、授業後に歴史好きの生徒から、よくこの質問を投げかけられた。

おそらく読者諸氏も、一度くらいはこの説を聞いたことがあるのではないだろうか。  源頼朝の弟・義経は天才的な戦術家で、一ノ谷や屋島で奇襲を敢行して平氏の大軍を破り、壇ノ浦の戦いで平氏を滅ぼしてしまった。後白河法皇は一ノ谷合戦の功績をたたえ、義経に検非違使・左衛門少尉の官職を与えた。だが、兄の頼朝は「任官にさいしては私の許可を受けよ」と伝えてあったのに、勝手に官位をもらったことで、義経に不信感を抱くようになる。さらに梶原景時の讒言もあって、壇ノ浦合戦後、義経が平氏の捕虜を連れて凱旋したさい、頼朝は義経を鎌倉へ入れなかった。

義経は、鎌倉の手前、腰越の地で切々たる手紙を書いて弁明を試みるが、ついに許されることはなかった。そこで兄を憎んだ義経は、都に戻ると頼朝追討の院宣を後白河法皇にねだった。

後白河は源氏一族の弱体化を期待し、求められるままに院宣を発した。

これを知った頼朝は、院宣が出されるとただちに京都へ大軍を派遣した。

一方、義経のもとにはあまり兵が集まらず、九州に遁れて再起をはかろうと船出するが、大風で軍勢はちりぢりになってしまう。そこで義経は、各地に潜伏しながら奥州平泉の藤原秀衡のもとに逃げ込んだのである。

室町時代中期になると、「義経は衣川では死なず、生き延びた」とする生存伝説が生まれてくる。義経が死んだ衣川周辺に彼の墓所がないことや、悲劇の英雄を悼む人びとの気持ちから発生したのだろう。弱い立場の者に肩入れする心情を「判官贔屓」というが、それが九郎判官を称した義経に由来することはよく知られている。

源義経=チンギス・ハーン説も、そんな義経生存伝承の一つだ。

この説を有名にしたのは、大正十三年(一九二四)に出版された小谷部全一郎の『成吉思汗(チンギスハーン)ハ源義経也』(富山房)である。同書は「義経は衣川の戦いで死なず、北海道をへて大陸へわたり、チンギス・ハーンとなった」と断言する。

この異説が発表されると、翌年二月、『中央史壇』(国史講習会編)の臨時増刊号で同説に関する特集が組まれ、多くの学者たちによって、小谷部説はこっぴどく批判された。

ところで、源義経=チンギス・ハーン説というのは、小谷部が初めて主張したわけではない。にもかかわらず、歴史学界が過剰な反応を示したのは理由がある。

なんとこの本、発売からわずか二カ月も経たないうちに十刷に達したのである。いまならさしずめベストセラーといえる。しかも時代の寵児となった小谷部は、その年の末、華族会館において源義経=チンギス・ハーン説を講演している。聴衆は華族である。旧大名家や維新の功労者の家柄の当主であり、そのまま貴族院議員でもあった。そう、国政に大きな力を持つ人びとだ。

このため学会も見過ごすことができなくなったのだろう。

ただ、源義経=チンギス・ハーン説は、すでに江戸時代から存在した巷説である。小谷部が本を出版した大正時代には広く流布していた。

研究者の原田信男氏によれば、この説を「論理的な根拠を示して展開したのはシーボルトが最初であった」

義経がチンギス・ハーンになったという説は歴史好きの中では意外とメジャーな説だ。ロマンがあるし意外と本当なのかもと思える反面、短期間にどうやって言葉の壁を越えたかとか疑問は色々と残る。しかし1人の学者が唱えるだけにとどまらず複数の学者や有識者が唱える説となれば一気に真実味がます。天才軍略家の第二の人生、ロマンがある。

晩節の研究を続ける中でその後の人生が意外な歴史上の偉人たちを取り上げた興味深い書籍。歴史好きはもちろんそうでない人も人生の華やかな部分と闇の部分を知ると歴史への興味も増すというもの。

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