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貧困のハローワーク|増田明利|貧困ビジネスを通して現代日本の闇が浮かび上がる

17の仕事(飯場労働者、シングルマザー風俗嬢、ソープランドのボーイ、ブラック企業のSE、テレビ番組制作会社AD、日々紹介の労働者、職業ホームレスなど)の現状をインタビューで聴取。貧困ビジネスを通して現代日本の闇をみる渾身のルポ。

学歴不問、実力主義の甘い罠

「前の会社のことは思い出したくもない。自分の経歴や記憶から消し去りたいんです。ところが勤めていたときの嫌な記憶が夢に出てくることがあって夜中に飛び起きることがあります」

桂木さんが2ヵ月前まで勤めていたのは健康食品、健康機器の販売会社だった。

「新卒のときに就活に失敗してしまいまして、2年近くもフリーターで過ごしていたんです。早く正社員で働きたいと願っていたところで求人広告を目にしたのが前の会社だったわけです」

この会社、求人案内には「お客さまの笑顔がわたしたちのエネルギー」「総合健康商社を目指しています」と謳っていた。

給料は初任給 25 万円+褒賞金、完全実力主義で目指せ1000万円プレーヤーと煽っていた。

「普通に考えればおかしいと思うけど、そのときはフリーターから脱したいという気持ちが強くて冷静な判断ができなかった」

こういう経緯で入社した桂木さんがやった仕事は健康食品、サプリメント、健康機器の訪問販売だった。

「ルートセールスとか先方からの連絡を受けて訪問するというものではありません。飛び込みのセールスで早い話が押し売りの類なんです」

扱っていたのは粉末青汁、ローヤルゼリー、たまねぎエキス、しじみエキス、温熱治療器、低周波治療器など。 「サンプル品やカタログを持ってあちこちの団地や住宅地をしらみつぶしに訪ねるわけです。1日100軒ぐらい」  扱っていた商品はどれも眉唾物。パッケージに記されている製造業者は地方の聞いたこともない会社ばかり。健康機器も国内大手メーカーのものではなく中国製のコピー商品だった。

「安いものでも3000円、温熱治療器なら2万円近くする。簡単に売れるわけがありません」

マンションなどでは管理人から勝手に入り込むなと追い出されたり、下町の住宅街を回っているときはおばあさん相手に売り込んでいると奥からその家の孫なのかヤンキーみたいなのが出てきて「テメエ、しつこいんだ。ぶっ殺すぞ」と灰皿を投げつけられ額にケガをしたこともある。

「110番通報されて警官に排除されたこともあったな。パトカーに乗せられ事情を聞かれたんですが『君、まだ若いんだからまともな職に就きなさいよ』とお説教されたこともありました」

足を棒にしても売れるのは3000円~5000円前後の健康食品かサプリメントぐらい。それも1日に5、6個売れれば上出来だった。

成果のないまま戻ったらどうなるか。リーダーと呼ばれる上司や幹部から容赦ない罵声が浴びせられる。

「どんな手段を使ってもいい、とにかく売ってこい」「契約を取った奴が偉いんだ、取れない奴は死ね」「能なしのクソ豚は死んでしまえ、嫌なら契約だ。契約を取れ」「健康になるなら死んでもいいっていう健康馬鹿がいるんだ、そいつら見つけて売りまくれ」

こんな暴言が普通に飛び交っていた職場だったという。

初任給+褒賞金、高給とりも夢じゃないなんて謳い文句で募集をかけている会社はまずブラック。実力主義ったって売れようのないものを売ってこいっていうのではいくら頑張っても無駄じゃないですか?これじゃあねずみ講なんかとあまり変わらなくて人を騙してでもモノを売る覚悟が入ります。当然普通の人には難しく長くは続きません。会社に帰れば叱咤の嵐。強引な営業を余儀なくされるので世の中からも忌み嫌われます。そんな求人に騙されないように。

病気になってハッピー、ハッピー

現在通院している病院を訪れたのは今年( 16 年)年初。問診、心理検査と内科的な検査をした後、医師から言われたのはうつ病。主たる原因は過労ということだった。

「先生からは、うつは心が風邪をひいた状態という説明を受けました」

程度としては中程度より少し軽め。メンタル系の疾患では、うつ病ほど回復のよいものはない。回復すれば元の生活に戻れると言われたのが救いだった。

「自分でも薄々そうじゃないかなと思っていたのでショックはなかった。むしろ、これで休める。ラッキーと思いました。こういう図々しさは大事だと思いますよ」

会社には診断書を提出し休職ということになったが期限は3ヵ月と言われている。

「もう戻る気はありません、バカンスのつもりで休みます」

治療は投薬のみで抗うつ剤と緩和安定剤。夜は睡眠導入剤を服用している。  通院は3週間に1度の割合だが特に何かするということはなく、前回の診察から今日までの暮らしぶりや世間話みたいな雑談が中心。

「状態はどうなんでしょう……。摂食異常は治まったみたいです。理由もなく緊張したりイライラすることもなくなったから。だけど睡眠障害はしつこいですね」

睡眠導入剤を飲まなくてもすっと眠れることもあるが、どうでもいいことが気になってまったく眠れない夜もある。 「アパートの裏の家のエアコン室外機の音が耳について眠れなかったり、電気代や水道料金がちゃんと引き落とされているか気になり夜中に通帳を確認したりすることがあります。何やってんだと思うけど」

ときどきだが変な夢も見る。中学時代のすっかり忘れていた同級生が出てきて、無言で何も書いてない紙を差し出す。あれは一体、何を暗示していたのか気になって仕方ない。

「会社からは毎週電話が来ます。どうなってるんだ?いつから出勤するんだ? って言ってくるんですが適当な返事で受け流したり怒鳴り返したり。ヤサグレうつ病患者ですよ」

もう復職する気はなく、あと1ヵ月もしたら退職しろと言ってくると思うが自己都合で退職届を書くつもりはない。会社都合の退職にしてもらった方が失業手当が早くもらえるからありがたい。

「外食産業はどこも低価格を武器にして庶民の味方みたいに言われているけど、安いのはスタッフを酷使しているからです。やはり、どんなところにも適正価格ってのがあって然るべきだと思います」

自宅近くはもとより、どこへ行っても格安の飲食店が軒を並べて競っている。外からちょっと覗いてみると3、4人のスタッフで調理、給仕、会計、洗い物と動き回っている。そういうのを見ると急に動悸がしてきて息苦しくなる。「あんた、俺みたいに壊れちゃうよ。仕事に支配されてどうするんだ」と忠告してやりたくなるのだ。

メンタルをやられて退職に追い込まれたならある意味ラッキーと割り切るべき。そんな環境下で仕事を続けるよりかは、辞めて療養したほうが数十倍マシです。うつなどの場合は症状が軽いと復職可能なまでに回復することはあれど、また同じ環境に身を置けば悪化して1度目以上にきつい状態に陥ることも。僕の場合は不安、妄想、幻聴、幻覚、思考停止などの症状が現れる統合失調症だったため取り扱いが障がい者に。10年以上経った今でも強い不安や妄想、幻聴や思考停止に悩まされています。戦わない勇気も必要かと。

貧困ビジネスの裏側をルポ。その温床となる職業別に詳しいインタビューを敢行し実態を赤裸々に語る被害者の声を聞きます。

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