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統計的な?数字に騙されないための10の視点 STATISTICAL

数字は嘘をつかないが、それを扱うものは嘘をつく。この原則をわかっていないと、日々の統計や確率の数字に惑わされ思わぬ誤解を生むことに。そうならないためにも、統計などの数字に疑問を持つリテラシーを身に付けていきましょう。

調査ではどのような質問がされたか?

アンケート調査の第一人者デイヴィッド・カウリングが私に送ってくれた別の例は、金融危機が高まっていた二〇〇八年に、世論調査会社のコムレスが約一〇〇〇人におこなった二つの調査で、救済措置についてどう思うかについてのものだ。一つはインデペンデント・オン・サンデー紙の質問で「銀行の救済措置のために納税者の金が使われるのは正しいことか」というもので、三七パーセントが「はい」、五八パーセントが「いいえ」、五パーセントが「わからない」という回答だった。同じ月、BBCの番組〈デイリー・ポリティクス〉のために同じ調査会社が「金融制度の安定のために政府が納税者の金を使うことを支持する」という意見に対する賛否を訊いた。五〇パーセントが「賛成」、四一パーセントが「反対」、九パーセントが「わからない」という結果になった。同じ月に同じ会社によっておこなわれた二つの世論調査で、同じ質問に対してまったく違う回答が返ってきたわけだ。おそらくその差は、片方が銀行の救済措置という一般的には国民があまり乗り気ではない言葉を使っているのに対し、もう一方は金融制度の安定という回答者が良い考えだと思う言葉を使っているためだ。

質問の内容により答えに誘導される場合がある。そんなアンケート調査には注意が必要だ。できるなら質問の内容をきちんと把握する必要がありそうだ。偏った答えを導き出すような質問になっていないかは需要な項目で、それにより公平性が担保される。世の中には自分に都合の良い数字を扱いたい人間がウジャウジャいて、そんな人たちが数字を操り無知な人たちを信じ込ませるのだ。怖い世の中だ。

パーセンテージの出しかた

パーセンテージで理解が難しい別の例が、上昇と下降で同じにならないことだ。何かが五〇パーセント下降してから五〇パーセント上昇しても、最初の位置には戻らない。一ポンドの株を買って、それが五〇パーセント下降すれば、五〇ペニーになる。それから五〇パーセント上昇したら七五ペニーだ。急落してからわずかに回復したものを追っているときには特に危険だ。大きな下降であれば、わずかな回復でもパーセンテージで表すと大きな数字になる可能性がある。これの良い例が、ビニール盤レコードの売り上げだ。レコードの売り上げは一九七〇年代がピークで、出荷が年間約九〇〇〇万枚に達していた。これは出荷であって、売り上げではない。レコードが店に並んだだけで売れていなくても、この数字は変わらない。さらに、これはレコード盤の数なので、二枚組のアルバムは二枚と数えられる。トレンドがあいまいであれば問題かもしれないが、そうではない。レコードの出荷は一九七〇年代後半から一九九〇年代初期に下がり、そこから年一〇〇万枚以下にまで落ちこんだ。年九〇〇〇万枚から一〇〇万枚というのはおよそ九九パーセントの下降だ。最初はCD、そしてダウンロードとストリーミングがロックの時代に選ばれるメディアになっていった。

パーセンテージでいうと上は青天井なのに下は100%までしか下落がない。そのことを考えるとちょっと面白い数字のマジックを行うことができる。当たり前だが下降は100%が最大値なのでそれを加味しないと思わぬ勘違いをすることに。面白い統計に雇用率と失業率がある。それは両者を足せば100%になりそうなものだが、そうはいかない。専業主婦(夫)などがいるためどちらにも属さない人間がカウントされないからだ。それなのに失業率というのはよく報道される。その中には働きたくても働き口がないので専業主婦(夫)に甘んじている人間がいることが加味されていないのだ。

二つ以上のことが起こる確率が正しく考慮されているか

アメリカの住宅金融専門会社はローンが焦げつく可能性の高い顧客に融資していた。ローンの多くはそれを購入する投資家向けにパッケージになっていたが、レーティング会社からリスクが低いという評価を受けていた。どうしてそんなことができたのだろう。その理由は、自社製品のすべてのローンが焦げつかないかぎり、投資への支払いができたからだ。たとえ一人の借り手の焦げつきが比較的高くても、借り手がそれぞれ独立していると考えれば、全体の焦げつきは比較的低くなる。そこで無視されたのは、一人の借り手の焦げつきの理由がほかの借り手の焦げつきの理由とつながっているかもしれないという事実だった。たとえば経済の下降や巨大な住宅バブルの崩壊だ。

一つの指標が下振れした時その因果関係をきちんと見ていないと、サブプライムローンのような大変なことが起こる。二つの事象の因果関係を確率として正しく考慮することでやっと真実を導き出すことができるのだ。

統計データなどを持ち出して物事を語る人には要注意。あなたは知らぬ間にその数字のマジックに意見を偏った方向に導き出されているかもしれない。統計をきちんと理解しどのような手法で得られた数字なのかを特に自分の損得に関わる事象については考えるべき。そんな統計の嘘を暴く書籍。

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