国家、市場、コミュニティの三者がどのように相互作用しバランスを崩し現在の危機に至ったかを壮大なスケールで描く。そしてコミュニティの再生に活路を見出す。今最も勢いのある経済学者の1人による提言の書。
三本の柱の適切な均衡
今日の問題の根源は何だろうか。一言で言えば、不均衡だ。三本の支柱が適切に均衡していれば、その社会では人々は幸福になる可能性が最も高い。国家は物理的な安全を提供するもので、これまでもずっとそうだったが、現代では同時に、経済的成果を公平にしようともしている。そしてそれを民主主義は求めている。公平にするために、国家は市場に制限を設けるとともに、人々に一定レベルの競争の場を提供しようとする。また、大多数の人々が平等な条件で市場に参加できる能力を持ち、同時に市場の変動から守られるようにもしなければならない。効率性に優れ、入手可能な資源で最大の成果を上げる者が成功することを保証するのが競争市場だ。成功者は富を得るとともに、国家からある程度独立する。こうして彼らは国家の独断専行の抑止力となる。最後に、工業化した民主主義国の国民は、自分のコミュニティに参加して、社会的、政治的に組織をつくり、市場と国家を分離させておくという必要不可欠な仕事をする。こうすることで、経済的競争と政治的競争が十分確保され、経済は縁故主義や権威主義に陥らなくなるのだ。
社会が病むのは、三本の支柱のどれか一つが他に比べて過度に弱まったり強まったりした時だ。市場が弱くなりすぎれば社会の生産性は落ち、コミュニティが弱くなりすぎれば社会は縁故資本主義に傾き、国家が弱くなりすぎれば社会には恐怖と無関心が蔓延する。逆に市場が強くなりすぎれば社会は不公平になり、コミュニティが強くなりすぎれば社会は停滞し、国家が強くなりすぎれば社会は権威主義的になる。バランスが肝心なのだ。
経済的格差、ジェンダーや人種による分断や不均衡。世の中にはこうした不均衡が至る所に散見される。市場と国家のバランスが悪い国も多くある。そうした不均衡を三本の支柱で支えていく術を考えていく。公平な社会などないというのは周知の事実だがその努力を怠るととんでもないディストピアが待っているような気がする今日この頃。世界の均衡について考える良い機会になる書籍だと思う。
本書の構成
本書の構成は以下の通りだ。まず第三の支柱、コミュニティについて説明する。コミュニティはある人にとっては温もりと支援の象徴だが、別の人の目には偏狭さと因襲の代表に見える。どちらも真実であり、時には両者が共存する場合もある。その理由をこれから見ていく。現代のコミュニティの課題は、良い面を引き出しつつ悪い面を最小化していくことだ。それを、他の二本の支柱、すなわち国家と市場の影響力の均衡をとることによって実現する方法を説明する。そのためには二本の支柱が出現した歴史を理解しなければならない。第Ⅰ部では、現在の先進諸国の国家と市場が、封建制コミュニティからどのように生まれ、コミュニティの活動の一部を引き継ぎながら、どう発展したかを述べる。活力ある市場が、国家の恣意的な権力を制限する独立した力の源泉を作るうえで、どのように寄与したかを説明する。国家が憲法によって制限されるようになると、市場が優位に立ち、時としてコミュニティに害をもたらすようになった。参政権が拡大するとコミュニティは再び力を取り戻し、参政権を行使して、市場に対して規制制限を課すよう国家に圧力をかけた。また市場変動から自分たちを守ってくれる、信頼性の高い社会的保護を求めた。こうした影響要因がすべて出揃ったのが、リベラルな市場民主主義だ。これは20世紀初めに先進世界すべてに広がった。しかし市場低迷は昔も今も破壊的だ。特に技術革命の後には大きな破壊をもたらす。大恐慌と、それに続く第二次世界大戦は、世界の大半のリベラル市場民主主義の死と国家の台頭を示しているかに見えた。
第Ⅱ部では、アメリカが戦後のリベラルな秩序を形成し、国家と市場が再び成長した経緯を述べる。民主主義はより堅固な根を得た。しかし戦後8年間の力強い成長の後は相対的な停滞が長く続き、先進諸国は成長を取り戻す新たな方法を模索した。対応策として、アングロ・アメリカン諸国は国家を犠牲にして市場に力を与え、一方、大陸ヨーロッパはEU(欧州連合)という国家の枠を超えた超国家の実現と市場統合という道を選択した。いずれの改革もコミュニティを犠牲にするものだった。この選択の違いが生んだのが、ICT革命、その後の世界金融危機、そして世界秩序への反動に対する態度の違いだ。さらに、ポピュリズムが台頭した理由を述べ、中国とインドでの関連する動きを追う。
第Ⅲ部では解決策を提案する。リベラルで民主的な社会を守れるようにするためには、抜本的な変化が必要であり、三本の支柱の均衡を立て直して、技術変化に対峙しなくてはならない。ローカリズムを強化してコミュニティに権限を与える一方で、より包摂的な社会を実現するために国家と市場に働きかけなければならない。
コミュニティは大なり小なり僕たちの生活に密着した切っても切り離せないもの。最小単位の家族から国家に至るまでコミュニティの持つ特性や秩序を考えていくことで今の世の中の状況を俯瞰するこれとない機会を得ることができる書籍です。なんとなく暮らしていて疑問にも思わないぐらい生活に密着しているコミュニティの経済学。僕らの生活を潤いあるものにするためのコミュニティとはどのようなものか考えることは世界について考えることでもある。
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