現代思想を追求し書き尽くした入門書、人生を変える哲学がここに!デリダ、ドゥルーズ、フーコー、ラカン、メイヤスー……複雑な世界の現実と対峙し高精細な画像のように捉えて人生をハックする現代思想の透視図。
ヴァーチャルな関係の絡まり合い
たとえば、「私が自転車に乗る」という事態を考えてみましょう。
そこには「私」というひとつの存在と「自転車」というもうひとつの存在がある。大ざっぱには、「私が/自転車に乗る」というかたちで、「私」と「自転車」は主語‐目的語の関係として、二つの独立したものと捉えられることになります。
しかし、現実をよく考えてみると、「私」と「自転車」は複雑に絡み合っているのではないでしょうか。倒れないように、体のバランスは複雑に制御されています。右に傾けば左にバランスをとろうとしますし、道の状態などの環境も関わってきます。自分と自転車が独立したものとしてあるというより、ひとつのハイブリッドな、サイボーグ的に一体化したような状態になっていて、そこでは複雑で多方向的な関係性がさまざまにコントロールされ、「自転車に乗る」というプロセスが起こるわけです。そのプロセスの細かいところを我々は意識していません。意識のレベルでは、「私が自転車に乗る」という主語‐目的語の関係でしか捉えていない。ところがそのなかでは、複雑な線がいたるところに伸びていて、関係の糸の絡まり合いのようになっている。それは意識下で処理されている。
このように、AとBという同一的なものが並んでいる次元のことを、ドゥルーズは「アクチュアル」(現働的) と呼びます。それに対して、その背後にあってうごめいている諸々の関係性の次元のことを「ヴァーチャル」(潜在的) と呼びます。我々が経験している世界は、通常は、A、B、C……という独立したものが現働的に存在していると認識しているわけですが、実はありとあらゆる方向に、すべてのものが複雑に絡まり合っているヴァーチャルな次元があって、それこそが世界の本当のあり方なのだ、というのがドゥルーズの世界観なのです。
アクチュアルな次元においては、Aとそれ以外の非Aという独立したものがあるわけですが、ヴァーチャルな次元ではAと非Aという対立が崩れ、すべてが関係の絡まり合いとして捉えられる。このような意味で、ものの存在をある同一性とそれ以外という対立関係から解放し、普遍的な接続可能性として捉えるところが、「はじめに」で予告した「存在の脱構築」の核心です。
一見バラバラに存在しているものでも実は背後では見えない糸によって絡み合っている──という世界観は、一九六〇─七〇年代に世界中に広がっていった世界観だと思いますが、これを哲学的に最もはっきり提示したのがドゥルーズだと言えると思います。ドゥルーズには他にも論点が多数ありますが、まずはこうしたイメージで十分でしょう。
AとB二つの関係性を語るとき複合的に他のものも関わり合っているということはよくあること。特に人間関係ではこのようなことが起こりやすいかと思います。アクチュアルな次元で物を考える時はこのようなイメージを持つと間違いないかと。
精神分析の実践と作用
精神分析の実践とは、自分のなかのコントロールから逃れるような欲望のあり方を発見していくことです。
しかし、自分が自分のことを意識的にこうだと思っているような自己認識を続けていては、自分の心の本当のダイナミズムには届きません。そこで使われるのが、「自由連想法」という方法です。
精神分析家のオフィスには、分析家が座る椅子があり、その前にカウチという長椅子があって、クライアントはそこに寝そべります。そうすると、自分の頭の後ろに分析家が座っているかたちになり、視線が合わず、お互いの顔が見えないようになっています。自分の目の前は何もない空間ですが、あたかもそこにスクリーンがあるかのように、そこに向けてただ思いつくことをベラベラしゃべるのです。今自分は恋愛関係のトラブルで困っているとか、自分はいつも浮気を繰り返してしまうとか、直近の自分の問題を語ることからしゃべり始めると、昔中学校の先生に言われたイヤなこととか、夏休みの午後に家族と冷やし中華を食べた場面とか、そういうことがだんだん思い出されてきます。そういうことを思いつくままにしゃべり続けるのです。
そのあいだ分析家は何をするかというと、あまり大したことはしません。頷きながら話を聞いていて、あるいは無言になったりし、ときどき「今出てきたこの部分はあれとつながりますね」といった解釈を言うくらいです。
そうやって即興演奏さながら昔のことを思い出していくと、自分は今、恋愛関係にある人にある種の恐れを抱いているらしい、みたいなことが自覚されてきて、実はその恐れが中学校のある先生に対して抱いていた恐れと何か関係していると気づいたりします。そして典型的に精神分析的には、その恐れは親との関係に結びついていったりするわけです。
カウチでリラックスした状態でカウンセリングを受ける。映画などでしか見たことのないシーンだが精神分析家の間ではスタンダードな光景なのだろう。頷きながら傾聴する。時々解釈を加える程度。精神分析の現場でこのようなことが日夜行われている。実際話すことで変わることも多いと感じています。物事の問題点を自分だけで閉じ込めていると精神的に病みやすいかと思います。
現代思想の真髄をかつてない仕方で書き尽くした入門書の決定版。日々自分の前に立ちはだかる疑問に答えていきます。
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