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無理ゲー社会|橘玲|はたして「自由で公正なユートピア」は実現可能なのか──。

才能ある者にとってはユートピア、それ以外にとってはディストピア。誰でも努力で成功を掴める社会、知能の格差が経済格差に直結する社会。遺伝で人生は決まるのか?持たざる者にもはたして「自由で公正なユートピア」は実現可能なのか──。

アメリカ人の4人に1人は親友がいない

社会調査では、ネームジェネレーターという手法でひとびとの「つながり」を計測している。一般的なのは「あなたが重要なことを話したり、悩みを相談するひと」を挙げてもらう手法で、アメリカでは1985年から2004年の 20 年間で「重要なことを話す」親友の数が平均して3人から2人に減少し、ゼロという回答が8% から 23% に上昇した。アメリカ人のほぼ4人に1人は親友がいない。

世界価値観調査では、「あなたには、日頃から親しく付き合っている方が何人くらいいますか。ただし、同居のご家族やこの1年間で一度も連絡を取り合っていない人は除いてお答えください」という質問で日本社会の「つながり」を調べているが、2005年から 10 年にかけての5年間で、「 21 人以上」と親しくつき合っているという最大カテゴリが 15% から8% に減る一方で、誰とも親しくつき合っていないという回答は4% から7% に上昇した。

2021年版(コロナ後)の高齢社会白書によれば、 60 歳以上で「家族以外の親しい友人がいない」と答えた割合は 31・3% とほぼ3人に1人だった。この割合はアメリカ 14・2%、ドイツ 13・5%、スウェーデン9・9% よりはるかに高く、「孤独死」が日本で大きな社会問題になる理由がわかる。

それ以外でも、統計数理研究所による「日本人の国民性調査」では、「あなたにとって一番大切と思うものはなんですか」の質問に「家族」という回答が2008年にこれまでで最高の 45% に達し(2013年は 44%)、それと同時に、家族以外のひとと日常的に親しくつき合う傾向が低下している。

NHK放送文化研究所による「日本人の意識」調査でも、「なにかにつけ相談したり、たすけ合えるようなつきあい」を近隣のひとに求める割合は、1973年の 35% から2018年には 19% まで減っている。

このように、「リベラル化」する現代社会においてわたしたちはより「孤独」になっている。コロナ禍で孤独や孤立の問題が深刻化しているとして、政府は内閣官房に「孤独・孤立対策担当室」を設置したが、その背景にはこうした状況があるのだろう。

何を隠そう僕には親友と呼べる友達がいない。これはアメリカでは普通のことらしい。こうした統計はなんとなく理由がわかる。重要なことを話す人がいないというのは、そこまで信じられる関係を築くのに社会は適していないということ。それでも生きていけるようできていると思うから余計に友達を求めないのだろう。SNSだけの繋がりの友達。希薄な友人関係、わからないことは書籍やグーグル、AIに聞く。それで事足りる世の中なのだ。

サンデルが告発するメリトクラシー社会

メリトクラシーが支配する社会では、人種や性別などの「属性」ではなく、誰もが「知能と努力」によって成功できるとされる。その理想を体現する者として、史上はじめて「黒人大統領」となったバラク・オバマ以上の存在はないだろう。事実、オバマは「この国では、どんな見た目であろうと、出自がどうであろうと、名字が何であろうと、どんな挫折を味わおうと、懸命に努力すれば、自ら責任を引き受ければ、成功できるのです。前へ進めるのです」などと、繰り返しメリトクラシー(アメリカン・ドリーム)を賛美している。

だが、「白熱教室」で知られるハーバード大学の人気哲学教授マイケル・サンデルは、このオバマの発言を引いて、市場原理主義的な「出世のレトリック」だときびしく批判する。

サンデルは、「ある才能を持っていること(あるいは持っていないこと)は、本当にわれわれ自身の手柄(あるいは落ち度)だろうか」「自分の才能のおかげで成功を収める人びとが、同じように努力していながら、市場がたまたま高く評価してくれる才能に恵まれていない人びとよりも多くの報酬を受けるに値するのはなぜだろうか」と問う。「富は才能と努力のしるしであり、貧困は怠惰のしるしである」とする道徳的な世界では、エリートは自分の成功を神の恩寵(当然の報酬)と見なし、低学歴の白人労働者階級を「屈辱の政治」に追いやることになってしまうというのだ。

『実力も運のうち 能力主義は正義か?』(原著のタイトルは〝The Tyranny of Merit〈メリットの専制〉〟)でサンデルが述べているのは、マイケル・ヤングとまったく同じことだ。このことは、ヤングの『メリトクラシー』がようやく再発見されたともいえるし、リベラルな知識人( 共同体主義者 のサンデルはこの呼称を拒否するだろうが)が半世紀のあいだ、なんの進歩もなかった証左ともいえる。

日本やイギリスなどとちがって、アメリカは「身分」や「階級」のないところで人工的につくられた国家で、そのためより純化されたメリトクラシー社会になった。学歴が収入のちがいに反映されることはよく知られているが、アメリカはこの学歴格差が先進国としては異常に広がっている。

日本では大卒・大学院卒の男性の生涯賃金は2億6980万円で、高校卒の2億910万円より30%多い(2018年)。アメリカはもっと極端で、大卒の収入プレミアムは70~100%(2倍)とされる。この極端な格差が「アメリカン・ドリーム(努力すれば夢はかなう)」となって強固な信念を形成し、いっさいの批判や反駁を許さなかったのだろう。

努力で成功を掴める世の中と言いながら大卒の収入プレミアムが2倍近くあるアメリカ。日本でも高卒と大卒では30%程度の収入プレミアムがある。その溝を埋めるために必要な努力は相当なもの。能力主義が浸透したアメリカでもこの格差ということはやはり問題かと。

日本やイギリスのように身分や階級がない社会で醸成されたアメリカにおいても格差は生じる。ギフテッドだったり家庭の金銭的余裕だったりが格差に直結する世の中は果たして公平と言えるだろうか?世の中無理ゲーと嘆くだけではなく社会の問題点を指摘した書籍。

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