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火山噴火 予知と減災を考える|鎌田 浩毅|火山の恩恵と魅力を伝えつつ,自然に対する畏敬の念を

火山大国日本。時として思いがけない噴火で社会をざわつかせる。噴火予知で「減災」してやり過ごす叡智。火山による恵みを享受しつつ自然に対する畏敬の念を示しその魅力を書き綴る。

地震を調べる

噴火とは、マグマが地下から地表へ噴き出すことである。圧力の高まったマグマは、火道を上昇する。マグマが岩石をバリバリと割りながら上がってくるときに、地震が発生する。

マグマの通路である火道は、ストローのようにいつも穴が開いているわけではない。前回の噴火のあとで、火道を通過したマグマの残りが、たいてい火道を埋めている。火道の中はマグマが冷え固まった溶岩が詰まっているのだ。次の噴火が起きるときには、火道の周辺に地震を起こしながら、マグマが岩石を割って無理やり上がってくるのである。

地震は火道周辺だけでなく、その下にあるマグマだまりの周囲でも起きる。火道を上がってくる前に、マグマだまりが 膨張 する。この時、マグマだまりのまわりの岩石が無理やり破壊される。こうしてマグマだまりの周囲でも、小さな地震が発生するのである。

地震の起きる深さで見ると、五~一○キロメートルほどの深部にあるマグマだまり周辺で、最初の地震が起きる。続いて地震の起きる位置が浅くなっていき、マグマの先端が岩石を割りながらゆっくりと上昇していくのが分かる。

マグマだまり周辺での地震活動の活発化で地震が多い日本。島国のデメリットとして受け入れてきた歴史があるが、いつも地震の影に怯えているわけではなく普段は忘れて生活していて、いざ地震というたびにあたふたする。それの繰り返しの歴史。

火山との共生

日本は、火山の恵みを享受してきた点でも世界有数の火山国である。恵みの一つに、おいしい 湧き水がある。

雲仙普賢岳の東の 麓 にある島原は、豊富な湧き水で有名だ。昔の面影を残す町屋の 傍らには、いくつもの湧き水が見られる。ここには飲み水として適することを示す看板が付けられている。道の脇にある水路には 澄んだ水がとうとうと流れ、中では 鯉 が泳いでいる。さりげなく置かれた 柄杓 を手にとって、渇いたのどを 潤すのもよい。

ここの水は軟水でやわらかく、とても飲みやすい。街のいたるところであふれ出す湧き水は、江戸時代から生活水として使われてきた。

火山は高い山のまわりに広大なすそ野をもつ。このすそ野は、空から降ってきた火山灰や、火口から噴出した火砕流がつくってきた扇状地からなる。降った雨水が地下にしみこんだあと、火山の噴出物を通り抜ける間にきれいな水となるのだ。

島原の地下では、降雨が二年ほどで湧き水となる。火山の麓にある扇状地は、巨大な 濾過 装置でもある。湧き水は江戸時代から使われ、一九六五年頃までは上水道としても利用していた。水道法によって水質が厳しくチェックされるようになると、一○○メートルほど井戸を掘り地下水を飲み水として使うようになった。

地下深くまでしみこんだ水は、深さ五キロメートルほどにあるマグマに熱せられて、地表に上がってくる。昔から川底などで自噴していた温泉である。

たとえ地面に温泉が湧き出なくても、約一○○○メートルの深さまで掘削すると、熱い湯が見つかる。たとえば島原の中心部では、摂氏三二度ほどの温泉を毎日三五○トンも汲み上げている。ここでは深さに応じて、火山のもたらすさまざまな水の恵みを享受しているのだ。島原が「水の都」と呼ばれるゆえんでもある。

火山国の恵みの一つ、雨水を地下の火山の噴出物で濾過することにより綺麗な湧水となる美味しい水。ペットボトルに詰めて売り物になるレベルの水が地域の人に無料で提供されていたりするスポットも数々。

火山の噴火もある程度予知が可能ということで活火山には大量の計測器が設置されている日本。それでも地震の余地などはできない。自然の恵みとともにセットで受け入れなければならない災害リスク。それと向き合ってきた歴史と共に火山噴火を考える。

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