比べず、とらわれず、生きる｜枡野 俊明｜生活の中に、禅の考え方を取り入れてみて！

将来や明日のことを考えると不安になる。生きているとそんな心配が絶えないと言う人がいます。一方、心の持ちようでそんなこと全然気にせず生きている人もいます。心配事や不安の多くは自身の心の中で生成された虚構なのでほとんど実際には起こりません。さまざまな書籍で不安のうち9割は実際には起こらないことというデータも示されているので知っている人もいるかとは思いますが、放っておくとネガティブな方向へ思いを巡らせがちです。人間は他の動物と比べ弱い生き物なので、本能的に自身を守る習性があり、それにより不安になるのです。それを知っているだけでも少し気持ちが楽になるはず。

人生の道のりは、 同じことの繰り返し

今日という一日をふと振り返ったとき、そこには昨日と同じ一日が見えたりします。それどころか、一週間前や一か月前とも同じ一日を繰り返していたような気がする。

毎朝朝食をつくり、夫を送り出す。子供を幼稚園に送り届けた後は、家に帰って家事をこなす。昼過ぎには子供を迎えに行く。休む暇もなく夕食の準備に取り掛かる。

淡々とした日常生活に埋もれそうになる。

そんなときに人は、つい別の世界への憧れを抱いたりするものです。

もっと別に生き方があるのではないだろうか。

もっと刺激的な一日がどこかにあるのではないだろうか。

ひょっとすると、自分の歩いている人生に意味などないのではないかと。

さまざまな思いが頭に浮かんできます。

晴れと 褻 という言葉があります。晴れというのは特別な日を意味します。自分が華々しく表に出たり、あるいは楽しみに満ち溢れたような日を指します。

一方の「褻」とは、淡々とした変わらぬ日常を指します。私たちはどうしても、心の中で「晴れの日」ばかりを望んでいる。いつも刺激的なことがあって、心がワクワクするような日々を期待している。毎日がキラキラと輝くような人生はきっとどこかにあると。

しかし、それは錯覚に過ぎません。

人は誰しも、それぞれの人生の中に「晴れの日」をもっています。

しかし、そんな日は幾度もあるわけではありません。一生のうちに数回あればいいほうです。それ以外の日々とは、すべてが淡々とした日常です。毎日、同じことの繰り返し。それはごく当たり前のことなのです。

であるからこそ、その変わらぬ日常を一生懸命に生きることです。

昨日と今日はまったく同じ日だ。そう思い込んでいるのは実は自分自身です。