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正しさをゴリ押しする人|榎本 博明|「歪んだ正義感」を振りかざしてしまう人たちの特徴と心理

正しい主張のようで痛烈な攻撃性を帯びた言動をする人。そんな正義のようで「危ない人」、そのボーダーラインはどこにあるのか?歪んだ正義感を振りかざす人の特徴と心理を解き明かす。

落ち度がある人を見つけてはネットで攻撃する人

落ち度がある人物、あるいは落ち度があると一方的に思い込んでいる人物をターゲットにして徹底的に 叩く。ネット時代になって、こうした行動が非常に目立つようになった。

歌舞伎役者 市川 海老 蔵 の妻の元アナウンサー 小林 麻 央 が闘病 虚しく亡くなったのは、多くのファンに大きな悲しみを与えた。

ところが、亡くなって5日後に海老蔵が幼い子どもたちを連れてディズニーランドに行ったのが目撃され、ネット上で批判されるという事件があった。あたかも落ち度を責めるように批判する。

だが、これは落ち度なのだろうか。

まだ1週間も経っていないのに切り替えが早すぎる、喪に服すべきなのに立ち直りが早すぎる、といった批判のようだが、家族の事情は他人にはわからない。大切な母親を亡くした幼い子どもたちを元気づけたいという気持ちをもつのが批判されるべきことなのか。

海老蔵に関しても、ディズニーランドに子どもを連れて出かけたからといって、妻の死のショックから立ち直ったとなぜ言えるのか。他人の内面を、まったく無関係の人間が憶測で決めつけ、そして批判する。そこに漂うのは、正義感という仮面を 被った攻撃性である。

よく知られたタレントの不倫ネタは、毎週のように週刊誌を 賑わせている。そうした記事をきっかけに、ネット上での批判は異様な盛り上がりをみせる。その結果、問題になったタレントがテレビドラマやCMを降板せざるを得なくなるなど、社会的制裁を受ける。

2016年はじめの不倫報道で問題となり、1年以上の自粛を経て最近復帰し始めたタレントのベッキーも、既婚者である 川 谷 絵 音(音楽バンド、ゲスの極み乙女。のボーカル)との不倫が報道されたとき、世間は大騒ぎとなり、すさまじい批判にさらされた。開き直るような2人のLINEのやりとりまでが流出したことで、激しいバッシングとなった。

不倫は批判されて当然だし、バッシングに遭うのもやむを得ない。だが、しょせん芸能界の話なのに、なぜそこまでムキになるのだろうか。

不倫相手の奥さんに対して失礼だとか、謝罪会見で奥さんへの謝罪がなかったといった批判が渦巻いたが、奥さんがどんな人かも知らないのだし、そもそも夫婦関係がどうなっていたかなどまったくわからない。事情もよくわからないのに、被害者である奥さんを引き合いに出し、ベッキーを叩く人の心の中にあるのは、はたして正義感だけなのだろうか。

いつもこうした不倫報道のようなモノを見るとなんでそこまで関係のない人に責められなければならないのかと疑問に思う。当事者やスポンサー契約をしている企業などはブランドイメージを損ねる行動に苦言を呈しても良いと思うが、傍観者である一般市民がそこまで当事者を叩くのはおかしい。こういう時に大活躍する人はさもしい心の持ち主で、人生うまくいっていないのを他人に責任転嫁するようなマインドの持ち主かと。芸能人のくっついた別れたなんて僕の人生に何も影響を与えない雲の上の出来事なんではっきり言ってどうでもいい。数年経てばその時の芸能人の名前さえ覚えていないだろうに。

一方的に自己主張できるネット空間の弊害

問題はネット空間の広がりだ。相手の立場や気持ちを思いやる日本に文化的に根づく心の構えが、ネット空間の広がりによって崩されつつあるのだ。

そもそもネット空間は、相手は目に見えず、声も聞こえず、存在感が希薄なため、相手に気を遣わずに一方的な自己主張がしやすいといった特性をもっている。

対面状況だと、目の前の相手の反応が臨場感をもって伝わってくるから、 「ちょっと言いすぎたかな」 「感じ悪いことを言っちゃったかな」 と気になったり、 「傷つけるようなことを言わないようにしなくちゃ」 などと自然に配慮したりする。

ところが、ネットの世界では、相手の存在感が希薄なため、相手の立場や気持ちを考えずに、つい一方的な自己主張をしがちである。自分ひとりの世界にいるかのような心理状態で、自分の思うことを遠慮なく書き込んでしまう。

その結果、うっかりまずいことを書いてしまい、責任を問われたり、人を傷つけるような発信をしてしまい、謝罪を迫られたりする人も出てくる。

他人に対する配慮がなくなるという問題だけでなく、感情的になって、 歪んだ正義感で人を 叩くようなことも平気で行われやすいという問題もある。

商品や店員の態度に対するクレームがネット上に投稿され、それが一気に拡散し、企業や店の業績が悪化したり、ときに廃業にまで追い込まれるケースさえあったりする。

投稿した本人以外には、事の真相はわからないわけで、もしかしたら非常に歪んだ書き込みかもしれないのに、 「それは 酷い、許せない」 などと正義感を刺激される人が出てきて、拡散していく。リツイートしている人は、純粋に正義感に駆られているのかもしれないが、大本の情報が個人的な恨みや 妬みによる中傷だったり、腹立ち紛れの言いがかりだったりしたら、それはけっして正しい行為とは言えず、むしろ不当な中傷に手を貸す行為と言わざるを得ない。

ネット空間の拡張により、本人は正義感で動いているつもりでありながら、じつは不当な行為に手を貸している、というようなことが頻繁に起こっているのではないだろうか。

ネット上には日々様々な主張をする人で溢れかえっている。僕のスタンスは一歩引いた目で割り引いて聞くというもの。ネットは良くも悪くも過激な発言や偏った主張の方が目を引きやすいという特性がある。そのため、自身でフィルターをかけておかないと、とんでもない主張を受け入れることに。

あなたの周りのゴリ押ししてくる人たちの特性を知り、自身はどう振る舞うべきかを考える書籍。

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