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時間はどこから来て、なぜ流れるのか?|吉田伸夫|最新物理学が解く時空・宇宙・意識の「謎」

日々我々が追われている時間。そもそも時間とは何か?時は本当に過去から未来へ流れているのか?時間経過とはどのような現象か?先人たちが問い続けた疑問を現在の物理学で解き明かしていく。科学の視座から時間の正体に迫る。

世界のはじめから終わりまで

量子論で時間変化を考えると、世界線は、量子揺らぎを含む拡がりを持つ。世界全体の歴史を扱う場合、世界線の始点としては、ビッグバンの状態を選ぶことができる。

ビッグバンは宇宙の始まりではあるが、未来がどうなるか、その瞬間にすべて決まっているわけではない。初期条件に不確定性があり、時間変化を司る法則も微分方程式のように厳格ではないので、その先に何が待っているか、確言はできない。

第4章で述べたように、ビッグバンは富士山の火口になぞらえられる。大局的に見ると、富士山で火口から遠ざかるにつれて、標高は確実に下がるが、これと同様に、宇宙では、ビッグバンから遠ざかると、物質分布の一様性が失われる。この傾向性が、時間に向きを与える。しかし、富士山の山腹にどんな凹凸があり、どの地点の風化が進んでいるか、火口の状態だけからはわからないのと同じように、宇宙のどこに天体が形成されるかといった具体的な出来事は、ビッグバンの時点では決まっていない。

ビッグバンの状態から出発し、量子論的な波の干渉に基づいてどんな現象が起きるか考えると、人間には追跡できないほど多様な可能性があることがわかる。こうしたさまざまな可能性をはらんだ全体は、分割できない単一の物理現象ではなく、互いに干渉しないいくつもの部分に分けられる。二重スリット実験のケース(図5‐5) で言えば、位置aに電子の跡が残る過程と、位置bに電子の跡が残る過程が、干渉しない別個の歴史となる。この別個の歴史は、それぞれが分岐した世界線によって表され、そのうちの一つが実現される歴史となる。

きわめて整然としたビッグバンから始まった宇宙は、外部からの作用がなくても、自然に恒星と惑星から成るシステムを作り出す。

ビッグバン以降の宇宙の生い立ちについては様々な研究があるが、それは未来への予測にまでは至っていない。まるで予測不能な時間軸の変化の中で形成された宇宙。わからないからこそロマンがあり人々を宇宙研究に駆り立てるのだろう。

タイムトラベルの方法

小説やアニメでは、起動したタイムマシンが突然かき消すように見えなくなり、別の時間にいきなり姿を現すという状況が描写される。これは、時間・空間の隔たった地点へと、物体が跳躍することを意味する。しかし、現代物理学の考え方が根本的に誤っているのでない限り、こうした跳躍は不可能である。

これまでの章で説明してきたように、現代物理学の基礎にあるのが、場の理論である。かつては、「空っぽの真空内部を原子が飛び回っている」という素朴な原子論を信じていた科学者もいた。だが、 19 世紀後半に電磁気現象を場によって記述するマクスウェルの理論が成立し、 20 世紀に入ると、電磁気だけでなく、あらゆる物理現象が場に生じる振動だという見方が有力視されるようになる。

場の理論の立場からすると、物理現象は、すべて場を伝わる波と見なされる。波は時間・空間座標の連続関数として表され、通り道となる時空領域を漏らさずたどりながら伝わる。ある地点から別の地点へと跳躍することは、あり得ない(「量子テレポーテーション」と呼ばれる技術が開発されているが、これは、ある物体の状態が離れた地点の物体と同等かどうかを調べるためのテクニックにすぎない。物体そのものはあらかじめ目的地に運んでおく必要があり、離れた地点に瞬間的に移動するわけではない)。

ただし、時空内部を連続的に移動しながら、タイムトラベルを実現する方法はある。  相対論によると、時間は宇宙全域で均一に流れるのではない。時間は空間と一緒になって、時空と呼ばれる物理的実体を構成する。時空の構造によっては、連続的なルートをたどりながら過去や未来に行くことも不可能ではない。

理論上では可能なタイムトラベル。しかしタイムマシンができたとして過去を変えたことにより現在が変わるのかそれとも全く異なった時間軸を形成しもう一つの未来が形成されるのかわからない。その辺も映画や小説でよく取り上げられる題材で僕らの関心事だ。

科学で捉える時間の本質。僕らの周りで当たり前のように時を重ねる時間という概念を深掘り。新たな視点や考え方、最新の研究からなる時間の不可思議を余すことなくお届け。

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