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日本人こそ見直したい、世界が恋する日本の美徳|永田公彦|日本を世界へ売り込もう!

 

世界中で賞賛される日本。しかし、経済を見ていると停滞気味。自信を無くしつつある日本に今一度自信を取り戻す工程を踏んでいくためのきっかけとなる書籍。

日本人ではなく外国人が日本の美徳を伝える

これまでも世界へ拡がった日本の美徳はあったわけですが、その多くが、日本人ではなく外国人によって伝えられたということです。例を3つあげます。

1つ目は、国際スポーツとなった柔道とその精神です。1893年イギリス人を皮切りに世界各地から講道館に入門した柔道家が、自国へ帰り伝道して世界中に広めました。そして、この伝道は今でも続いています。たとえば、柔道人気が世界で最も高いフランス(登録競技人口が約 55 万人と日本の 20 万人をはるかに超える)では、子どもから大人まで学べる柔道クラブが全国に5400あります。 全国各地にある道場の壁には、1枚のパネルがかけられています。そこには、講道館柔道創始者の嘉納治五郎の写真と、仏語で礼節、勇気、誠実、名誉、謙遜、敬意を意味する言葉が書かれています。こうした価値観をフランス人コーチが生徒に伝授しています。

2つ目は、映画です。たとえば、2003年公開の「ラスト・サムライ」です。明治初期に来日した主人公(アメリカ軍人)がともに過ごす日本の武士や村人の行動・生活様式の中に、自国(米国社会)が失った大切な人間社会の価値観を見いだします。 この作品も原案・脚本・監督から配給(ワーナーブラザース)まで主にアメリカ人の手によって世界に伝えられました。

3つ目は、前述の3・11 東日本大震災における日本人の行動です。これは世界から注目されましたが、伝道師の多くは外国人です。海外メディアがこうした行動に着目し、報道番組、写真等で海外に配信。これを見た海外、そして日本に住む多くの外国人が、ソーシャルネットワークやメール、スカイプ等で連鎖的に世界に伝えました。

災害時には火事場泥棒的な人たちが一定数いるのは事実だが、普段そうした違法な行動をしていない人まで巻き込んで国全体にそうした行動が蔓延するような事態には陥らない。それが日本人の美徳。

コロナ禍ではマスクの重要性は報じられているにもかかわらず、マスクをしない権利とか訳のわからないことを言ってマスクをしない人が国中にいて、マスクが浸透しなかった国も。それに引き換えお願いベースでマスクの着用や外出制限などを意外と真面目に守っている人が多い日本これも美徳といえよう。

先輩と後輩

SENPAI(先輩)とKOHAI(後輩)は、日本に住み始めた外国人が真っ先に覚える日本語の1つです。理由は、両者の間に日本人社会の精神文化に根差した次のような温かい関係を見出せるからです。

1つは、後輩が経験や知識の豊富な年長者に敬意を払う点です。しかもその経験・知識は特定の分野(仕事・学問・スポーツなど)だけを対象にしません。「社会人としての先輩」とか「人生の先輩」というように、より広範囲な経験や知識でとらえた先輩・後輩の関係が築かれます。

2つ目は、両者は垂直の上下関係にありながら、精神的にはフラットな相互依存関係にある点です。 先輩は、後輩を指導・教育・評価します。技能・知識・ノウハウを伝承します。後輩はそれに応え、成長し先輩に感謝します。 こうした上下の垂直関係が基本にある一方で、先輩は後輩から新しい発想、着眼点、エネルギーを吸収し、後輩に感謝します。また、自分よりも大きくなった後輩を祝福します。 このように両者は精神的に持ちつ持たれつのフラットな関係にあるとも言えます。

3つ目は、両者の関係には単なる仕事上の関係を越えた、家族愛のような温もりがある点です。著者も学生時代、先輩が、金欠状態の弟を助けるかのように居酒屋や自宅でご馳走してくれました。逆に、先輩が酔いつぶれたときは重たく酒くさい体を支えながら家まで送ったものです。 また、会社に入った 20 代の頃、先輩が外食続きの著者を見かねたのか、たまには家庭料理でも食わないかと週末に自宅に何回か呼んでくれました。そのたびに、奥さまやご自身の手づくり料理を腹いっぱいご馳走になった記憶があります。 このように、先輩・後輩の概念には温かい関係を持った拡大家族的な和が含まれます。

先輩と後輩、うまく組織内でその上下関係が成り立っていればいいが、最近の実力至上主義により先輩が後輩の部下になるなんてこともしばしば。年功序列の崩壊でこれからはこの先輩を敬う美徳は失われていくかもしれない。最近では老害という言葉が問題視されるようになったり弊害も。

日本人が当たり前と思っている行動の中にもそこかしこに美徳と呼ばれるものがある。それを再発見していく書籍。外国人から見たこのような美徳を文化として今後も残し続けるか、古い考え方と一蹴するか、みなさん次第です。

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