ヤクザや半グレとは何か？ どのような活動を行っているのか？どこに危険が潜んでいるのか？ 警察や刑務所の内情は？豊富な経験から語られる真実がここにある！
博打は常に胴元であれ
草下 懲役さんは博打は何かやりましたか？
懲役 一切やらないです。博才もないし、理論的に勝てないことがわかってるから。競馬もパチンコも花札も、胴（胴元）にならなきゃ絶対に勝てない。プレイヤーとして延々にやっていれば、手元の金がいつか必ず無くなるっていう理屈をなぜみんなわからないんだろうって思いますね。
草下 追い詰められてイカサマに走って、そのうち組の金に手をつけて……というパターンはよく聞きますね。今、ヤクザが仕切っている博打ってどんなものがあるんでしょうか。
懲役 今はインカジ（インターネットカジノ）、過去には手本引き。手本引きは、名古屋ならバッタまきとも言いますね。ルールがすごく複雑で、「スイチで張るのは下品」とかいろいろなマナーもあって、僕もよくわかりません。合力（場を仕切る胴元の人間）をやれる人が少なくなってるので、盆（賭場）も立ちづらくなってると思います。
草下 カジノのディーラーをやっている人は本職の人に遠慮して、バカラやポーカーなんかを「西洋博打」って言ったりしますよね。ほかにも裏スロやマンション麻雀なんかもあると思いますが。
懲役 麻雀はやっぱり、すごい人がいましたよね。勝っても負けてもいけない場をうまく回したり、代打ちで活躍したり。でもどちらかというと、盆ではなく身内の麻雀で人のイヤなところを見て、嫌いになっちゃった（笑）。
草下 ヤクザは事務所で仲間同士で打つことも多いですからね。白ポッチ（麻雀牌の白に特殊ルールとしてマークをつけたもの）が代紋入りだったり。
懲役 身内で打つ場合、結局、エラい人が勝たないと終わらないんですよ。で、眠くても終われないからシャブ打つようになって、さらにダメになる。入れ墨と同じように、博打とシャブもセットみたいなところがあります。僕はそれがイヤだったから、「ルールは知りません」って言って麻雀牌だけ拭いてましたけど、若い衆で身内の麻雀にハマって、シャブに手を出して、そのうち外でも打つようになって、借金して潰れるパターンをいっぱい見てきました。
草下 今は全自動卓になって、昔みたいに大胆なイカサマがあまり通用しなくなっていますね。麻雀を打つ人口も減ってきているので、しのぎとしても縮小傾向にあると思います。
私は十代で上京する直前のときに、ヤクザの玄人（バイニン・裏麻雀のプロ）たちと手積みで打ったことがあるんですよ。そこでボコボコにされたんですけど、チートイツに６回連続で振り込んだりして、確実にイカサマなんですよね。で、最後のゲームで、純正の九蓮宝燈あがったんです。それがその人たちの不器用な餞別だったんだと思いますが、役満祝儀だって言ってお金をばさばさもらって、「お前、麻雀の恐ろしさわかったなら、東京で絶対に打つなよ」って。だから、東京に行っても麻雀を打たなかった。
ギャンブルは必ず胴元が儲かるようにできている。宝くじも一緒。確率を考えれば効率が悪すぎるギャンブル。それでもハマる人が多いのは負けを取り返そうとして大きく賭けるようになる負の連鎖。ギャンブルではないが似てるなと思うのが推し活、僕も絶賛推し活中なのだが、承認欲求からグッズや課金が止まらない連鎖に。普通に一般人の女の子を追いかけるためにはそんなに使うことはないのに推しとなると（笑）普通に平凡な女性と恋愛、結婚する方がお金はかからないのだろうが、結婚子育てとなると話は別。相手は異性の心を手玉にとるプロ（胴元）なので程々に、自戒を込めて（笑）
マトリのおとり捜査はなぜ許される？
草下 麻薬がらみだと警察の他に、麻薬取締官、通称マトリと呼ばれる人たちも捜査に加わります。彼らの捜査の特徴のひとつとして、スパイを使うことが挙げられると思うのですが。
懲役 捕まえた売人や麻薬使用者をスパイとして現場に潜り込ませたり、情報提供者として捜査に協力させる。合法的なおとり捜査ですね。
草下 実際に、薬物で逮捕された友人がマトリに懐柔されてエス（スパイ）になっちゃったんですよ。シャブ市場を壊滅させるために、半グレが仕切っているクラブに潜入すると言いだして、危ないからやめろと止めました。不思議なのが、彼は別に、マトリからお金をもらっているわけではないんです。「国家のために」という理由で危険を冒そうとしていて、ある意味洗脳されちゃってるんですよね。
懲役 マトリの質も悪くなってますよ。マトリって、厚生労働省の国家公務員だから、基本的にはエリート集団なんです。「自分たちは警察より上」っていうプライドもある。でも実際は、現場対応力と動員力がない。警察のすごいところは動員力と、現場でどう動けばいいかっていうのを警察学校でしっかり教育されてるところなんですよ。
草下 そうかもしれないです。一方で警察はあまりスパイは使わないですよね。
懲役 できない。違法捜査にあたりますから。
草下 おとり捜査には、機会提供型と犯意誘発型の２種類がありますよね。例えば、私が私服警官だとして、街を歩いていたら麻薬の売人が声をかけてきたとします。この場合は機会提供型で、普通に逮捕できますね。一方、ＳＮＳで大麻を売っているアカウントを探して、「買いたい」と連絡して呼び出して捕まえるのは、犯意誘発型にあたるので違法捜査になります。
懲役 それに対して、マトリは、薬物を買ってもいいし売ってもいい。自分の体の中に入れてもいいんです。それは、現場でいざというときに自分の身を守るためですね。潜入捜査で、自分も実際に使わないと相手にバレるっていうシチュエーションがあるかもしれませんから。
マトリの実態には驚き、実際に潜入に対して不審に思われないように自身も麻薬をやるなんて。そんな命の危険を顧みないのはやはりある意味洗脳ですよね。正義感も利用されてしまうのですね。少し前に私人逮捕系YouTuberが逮捕された容疑も一般人には許されない犯意誘発型の囮捜査のようなことを彼らが動画にしたから。そんな動画を面白がって視聴する人も共犯のような気がするのですが僕だけかな？
普通に生きていると知らないで済む裏社会の現実。意外と身近にある裏社会との接点は気付かぬうちに身の回りに。犯罪も巧妙化していて、いつ何時、毒牙にかかるかわからない世の中。お金が絡むことには注意が必要だと自戒しました。
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