現在、定説となっている「ビッグバン」や「インフレーション」は本当にあったのか?宇宙の果てについて現在の科学はどこまで迫っているのかという素朴な疑問に答えていく。最新の宇宙物理学に見る我々の住む宇宙の姿と謎を深掘り。
人類の宇宙観の広がり
さて、地の果ての問題が解けると次は宇宙、すなわち我々の住む3次元空間の果てはどうなっているかという問題になる。この問題に自然科学がある程度の解答を出せるようになったのは、「地球が丸い」ということに比べればはるかに時代が下り、 20 世紀に入ってからのことである。すなわち時間や空間を物理学の対象にまで引き下げてしまった相対性理論の登場と、それに基づくビッグバン宇宙論の誕生である。
よく言われるように、宇宙は約138億年前に超高温の火の玉として誕生し、現在に至るまで膨張を続けている。それはつまり、「宇宙はどこまで広がっているか」という空間的な果てだけでなく、時間方向にも過去にさかのぼることができる限界、つまり果てがあるということである。
現代の物理学では、我々の世界は1次元の時間と3次元の空間を合わせた4次元空間である「時空」と、その中に存在する物質によって記述される。この考えに基づけば、「宇宙の果て」とは空間だけでなく時間方向も考えて、「遠方・過去・未来」の3方向に向かって宇宙はどこまで広がるのか、という問題になるだろう。
広大な宇宙空間に想いを馳せるのはなかなかロマンがあっていいのだが、あまりにも大きく広大なため今の観測技術ではその確認が取れない。地球が丸いといった事実を突き止めたように、いつの日か宇宙の果てについて研究が実証される日は来るのだろうか?
新しい宇宙を見る目──ニュートリノ
宇宙を見る目はいまや電磁波だけではない。光速でまっすぐに進む波や粒子であれば、光と同じように宇宙を「見る」ことができるはずである。そのような宇宙からの「メッセンジャー」として長年期待されてきたのがニュートリノと重力波である。両者とも物質に対する透過力が強く、高密度天体の中心部など、光では吸収されてしまって見えない領域をさぐることができる。だが、透過力が強いということは物質との相互作用が弱いということでもあり、それだけ検出器に与える信号も小さくなる。ここでもまた、利点は欠点の裏返しということだ。
それでも宇宙からのニュートリノは1970年代にはすでに検出されていた。太陽からのニュートリノである。太陽のエネルギー源は水素原子核(=陽子)四つを、2個の陽子と2個の中性子からなるヘリウム原子核に変える核融合だから、2個の陽子を中性子に変える必要がある。このベータ崩壊とは逆の反応により、必ず電子ニュートリノが2個放出されるはずである。
これを初めてとらえたのは米国サウスダコタ州のホメステイク鉱山地下に設置された、テトラクロロエチレンを蓄えた巨大なタンクであった。この物質はドライクリーニングでも使われる安価なものであり、塩素を含んでいる。ニュートリノがやってきて塩素と反応すると、今度は逆に塩素原子核中の中性子が陽子に変わり、原子番号が一つ増えたアルゴンに変わる。これを化学的に検出したのである。
この実験を率いたレイモンド・デービスには小柴昌俊とともに2002年のノーベル物理学賞が与えられた。だが、この栄光の実験も、実現までにはいろいろと障害があったらしい。その一つは、予算獲得までに浴びた「出ているとわかっているニュートリノを検出して、それで新たになにがわかるのか」という批判であったという。
ニュートリノの検出によって宇宙を構成する物質の謎が一気に進展した。物理学の大発見なのでその言葉を知っている人も多いだろう。しかしその発見から導き出された答えはまだ多くなく謎に満ちたままだ。
宇宙についての疑問や最新の(この本の発刊時)知見をふんだんに盛り込み解説してくれる書籍。
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