大学教授がマッチングアプリに挑戦してみたら、経営学から経済学、マーケティングまで学べた件について｜高橋勅徳

大学教授がマッチングアプリに挑戦してみたら、経営学から経済学、マーケティングまで学べた件について。｜高橋勅徳

2023年12月6日

30代、年収1,000万円以上、フツメンの有名大学教授が結婚しようとマッチングアプリに登録。ズタボロになされながらもその学びが深すぎると面白おかしくマッチングアプリへの考察を深めていく書籍。

「ご飯の写真って簡単に興味を引きやすいし、デートのきっかけにもなるんだよ」

真田自身がグルメであるというのもあるが、彼が料理を話題の中心に据えるのには明確な意図があるのだ。

つまり、自分が食べた料理の写真を「映える」ように見せることで、「写真の料理美味しそう！→どのお店で食べたんですか？」と会話を誘導し、「じゃあ、一緒に食べに行きませんか？」とメッセージのやり取りを進めて、実際のデートに進めていけるのだそうだ。

この話を聞いた時「ナッジじゃん！」と思った。これまで行動経済学を応用したアプリ婚活を、プロフィールの改訂に用いてマッチング成立の向上へと結びつけることにしか、頭になかった。

しかし、行動経済学は、人々の意思決定に関わる全ての行動に、広く応用可能なのだ。むしろ、メッセージのやり取りの場面こそが、応用できる場だろう。

プロフィールをどう改定するのかに熱中していた私は、自分で設定した「認知バイアスの罠」にハマっていたのである。

さて、ナッジとは行動経済学者リチャード・セイラーと法学者キャス・サンスティーンの著書『NUDGE：実践行動経済学』において提唱された、行動に影響を与えるための方法である。その特徴は、インセンティブや罰則ではなく、ナッジ（＝そっと小突く）をすることで、人々の行動を一定の行動へと導いていくことである。

例えば、最近のコンビニエンスストアには、床に○や足跡のマークを等間隔で記載した矢印を引いていることが多い。

この矢印が引かれていることで、「このライン上で、等間隔で並べばよいのか」と、買い物客のほうが自発的に考えて並んでくれる。そうすることで、レジの前で混雑が生じたり、割り込みでトラブルが生じる可能性が減る。

こういう、「人の意思決定」を自分の望む方向に、自ずと誘導するように「そっと小突く」工夫をすることが、「ナッジ」だ。

ここまで私が応用してきたプロスペクト理論やアンカリング効果では「言葉」で状況を設定することを重視してきた。

ナッジはそれを一歩進めて、図形や空間のレイアウトそのものに、「意思決定を一定の方向に誘導する」仕掛けを導入していくことで、低コストかつ安全に社会全体の利益を拡大していこうとするものだ。　真田がマッチングアプリに料理の写真を多く掲載しているのも、まさにナッジ効果を利用しているのだ。

そこでその日の夜に、焼き肉、寿司、フレンチのお店に向かった。それぞれ、食べログの上位に来る有名店から店をピックアップし、予約なしの飛び込みで入店できるお店をハシゴして、5時間あまりで焼き肉、寿司、フレンチを連続で食べ切った。 ※もちろんパーソナルトレーナーには怒られた。

そして出てきた料理は、全ての料理を写真に収めた。あとは、これらの写真をプロフィールページの最初のほうにまとめてアップロードして、プロフィールに少し手を加えるだけである！

確かにご飯の写真は会話や誘いの糸口としては有効だ。それが美味しそうであればあるほど食いつきがいいみたいだ。見た目の綺麗に盛り付けられた写真にはたくさんの「いいね！」が付く理由の裏を返せば興味の開示であるように。

高収入を稼ぐ男性を捕まえる活動

婚活が「高収入を稼ぐ男性を捕まえる活動」として定着したのは、見方を変えれば男性が財力を武器に女性の若さと美貌を買おうとしてきたからだろう。

「性の商品化」と言われるものだ。女性が「美貌と若さをレバレッジに最大限の利潤を獲得しようとする」ことと、男性が「自らの財力を駆使して、マッチングアプリで恋人・結婚相手探し以外の性的欲求を満たそうとする」ことは、表裏一体の出来事なのだ。

同時に、「マッチングアプリ」の登場は、あらゆる面で女性を良い意味で解放しているのではないだろうか。

日本で見合い婚が衰退し、自由恋愛による結婚が主流化して以降、一貫して年の差婚の数は減り続けているらしい。

乱暴に言ってしまえば、

断れない形で、ブサイクなオッサンとお見合い結婚を強いられていた女性が、

選べるなら同年代のより若くイケメンで、経済力もある男性と結婚したい

というある種当然の帰結に至ったのではないだろうか。

おそらく、マッチングアプリという武器を手に入れた女性は、冷静に「商品化された自分の性」を値踏みして、適切に利潤を手にする時代になったのだろう。

婚活市場で高収入男性や容姿端麗な女性をGETするべく頑張っても言葉は悪いが市場価値の低いとされる人間に希望はない。婚活市場で有利に働く条件を満たした強者のみが成功する弱肉強食の世界。自分の身にあった相手を見つけるという視点に置き換えて再度チャレンジすれば道は開けるかと。

婚活におけるマーケティング戦略を学ぶ書籍。著者のマッチングアプリにおける婚活体験を面白おかしく経済学の視点を持って紐解きます。マッチングアプリは学びが深すぎる！？

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