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四十歳、未婚出産|垣谷美雨|これが子供を産む最初で最後のチャンスだけど……

40歳目前での思わぬ妊娠に見舞われる主人公。子供を産む最後のチャンスではあるのだけれども…。誰にも相談できないし、シングルマザーとしてもやっていけるか不安。そんな主人公に少しずつ味方が現れ気持ちは固まってくる。

キャリアウーマンってかっこいい?

「私は優子ちゃんみたいな生き方、羨ましいけどねえ」と、従兄の嫁が言う。「ほんだって、都会でキャリアウーマンしとるなんてカッコええやないの。私らみたいに、ダンナや子供の世話で一生を終えるより、よっぽど楽しいに決まっとるもん」 「優子ちゃんは仕事が好きなんじゃね」 「ええなあ、やりたいことを一生の仕事にできるやなんて」 「旅行の仕事なんて楽しそうじゃもんねぇ」 「女だてらに部長やなんてカッコええわあ。白いスーツでピシッとキメて会社で働きおるんじゃろ?」

白いスーツというのは、テレビドラマか何かで見たのだろうか。部長ではなくてやっと課長代理になったところだが、役職は名ばかりで平社員と仕事の内容は変わらない。だがわざわざここで言う必要もない。 「ここらの四十歳ゆうたら、もう完全なオバチャンやもん。それに比べたら優子ちゃんは若い娘さんみたいにほっそりしとるし、いまだに清楚な感じを保っとるもんねえ。やっぱり独身の人は違うわ」と伯母が持ち上げる。 「そんなに褒めたって、なんにも出ませんよ」

そう言って、にんまりと笑ってみせると、伯母たちも嬉しそうに微笑んだ。「婚期を逃したかわいそうな姪」から「都会暮らしを満喫し、仕事に生き甲斐を見出し、人生を 謳歌 する姪」へと、彼女らの印象を一変させたからだろう。 「今日もまた優子ちゃんのワンピース、素敵やね。さすが都会暮らしだけのことあるわ」

最高齢の伯母だが、声だけはいつまでも華やかだ。 「そうですか、ありがとう」  帰省するときは、上質なワンピースかパンツスーツと決めていた。余裕のある暮らしをしていると思われた方が、 要らぬ心配をかけなくて済む。

人生で選んだステージによって人々の生活は千差万別に。仕事を選べばこういうこともあるだろう。仕事と家庭との両立をする人もいれば、エネルギーを仕事に全振りしてキャリアを築く人も。もちろん家庭に入り家族を大事に生きるのもアリ。何がその人によってベストかなんて答えは永遠に出ないだろう。自分の置かれた場所でどのように快適に暮らすかを考えて、他人と比べないのが一番。

思わぬ妊娠

妊娠したことで、人間関係も生活もすべてが壊れていく。どこにも居場所がない。

マンションの一階にある集合郵便受けを覗くと、母からの封書が入っていた。なにやらぷっくりと膨らんでいて、切手も通常より多めに貼られている。エレベーターに乗り、封筒の上から触ってみると柔らかかった。布製の物? もしかして、フェルトで作った人参クンとか? あんなもの要らないのに。ああいった代物はいちばん迷惑だ。母の手作りだと思えば、不要な物でも捨てにくい。 「今日の精神状態は最悪だね」と、誰もいないのをいいことに、声に出して言ってみた。

エレベーターのドアが開いて降りようとしたとき、甲高い笑い声が耳に飛び込んできた。すれ違うようにして若い男女が乗り込んでくる。挨拶を交わしたことはなかったが、女性が同じ階に住んでいるのは以前から知っていた。たぶん二人ともまだ学生だろう。カジュアルな服装だが、バッグだけは高級ブランドだ。いつ見ても同じバッグだから、ひとつしか持っていないのだろう。そういうところが微笑ましかった。

──あなたたち、学校を卒業したらすぐに結婚した方がいいよ。

そう心の中で言い、そんなの余計なお世話だよ、と自分に突っ込みを入れると苦笑が漏れた。自分にも学生時代に恋人がいた。卒業後、それぞれ違う方面に就職して忙しくなり、土日は疲れ果てて寝てばかりとなると、自然に会う機会が減っていった。

──結婚のタイミングを逃すと、私みたいにグチャグチャの人生になるよ。

廊下を進みながら、またもやお節介なことを口の中でもごもごと言ってみた。本当は、頭の中に居座っている部長の不機嫌な顔を追い払いたかっただけだ。だから気を紛らわそうと、違うことを考えようとしている。それは自分でもわかっていた。

結婚のタイミングはカップルにとって課題だろう。婚期を逃すまいと結婚を急ぐ女性の気持ちもわかるが、男性からすると学生時代に付き合ってた彼女と一緒になるには金銭面での不安が付きまとう。そこを男前に俺に任せろというタイプの人間ならそれが成り立つのだろうが、そうでない場合結婚観の違いでお別れすることに。

40歳、未婚出産という現代社会においてありがちなケースをストーリー仕立てで考える書籍。共感する面もあれば、心情の深いところを知って微妙な気持ちになったりも。

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