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人類と気候の10万年史|中川毅|過去に何が起きたのか、これから何が起こるのか

今の世界とは程遠い気候変動の時代を生き抜いてきた人類。過去の気象データから気候変動のメカニズムに迫り、人類史のスケールで今を見つめ直し再考する。

5億年の気候史

もうひとつ提起したいのは、私たちは気候に何を望んでいるのかという自分自身への問いかけである。2000年代に入ると、気候変動は一部の研究者だけではなく、社会まで巻き込んだ関心事になった。「グリーン」とか「エコ」が商品イメージの前面に押し出され、ナチュラルカラーの服をまとったモデルが雑誌の表紙を飾るようになった。そのころ目にしたテレビのコマーシャルに、印象に残っているものがある。イギリスのテレビ番組だったのだが、インド系と思われる女優が満面の笑みで、「私たちの洗濯機を買って、気候変動を止めよう!(Buy our washing machine, and stop climate change!)」と呼びかけていた。

洗濯機を買うことで気候変動が止められるかどうかは、ここでは問題にしない。企業が環境意識を持つのも、資本主義の法則を環境問題の解決に利用するのも、基本的にはいいことだと思っている。むしろここで問題にしたいのは、「気候変動を止めよう」という目的設定のほうである。1980年代に数百万人の命を奪ったアフリカの干ばつは、当時は「異常気象」という言葉で表現されていた。気象が異常であるとはどういうことだろう。言い換えるなら、正常な気象とはいったい何だろう。

地球にとって何が「正常」であるかを考えるには、過去の地球がどのような状態だったのかを知っておく必要がある。そこで次に、人間社会の話をいったん忘れて、地球の歴史を気候という視点から振り返ってみよう。

図1・4のグラフは、5億年前から現在までの地球の気候変動を表している。横軸は年代であり、左端が5億年前、右端が現代である。縦軸は岩石に含まれる酸素の同位体の比率から復元された温度で、上下の変動幅はおよそ 10 ℃に達する。一見してわかるのは、少なくともこのタイムスケールで見る限り、地球の気候は変化し続けているということである。少なくとも、何か「正常」と表現されるような定常状態が背景にあって、そこからときどき逸脱するといったパターンには見えない。とにかく、たえず変化し続けているのである。

5億年の気候史を見ていくと今起こっている気候の変化のようなものは特段変わったことではない。今までの歴史の中でも気候の変化をし続けて来たわけだから。

わずか数年で7℃の上昇

気候の未来予測に使われる中心的なツールがスーパーコンピューター、いわゆるスパコンであることはすでに述べた。スパコンが描き出す今後100年のシナリオは、第1章で紹介した(図1・3)。これを、じっさいに起こった過去の気候変動と比べるとどうなるだろう。

過去8万年の気候変動に関するチャンピオンデータは、前章でも紹介したグリーンランドの氷床コアの分析結果である。これにIPCCの将来予測を組み合わせると、図3・1のようになる。グラフの右端で、真上に立ち上がる線のように見える部分が今後の100年である。

この図が示唆するのは、今後の100年はこれまでの1万年とまったく別のモードに突入するということ、つまり現在進行中の温暖化は、第2章で議論した「相転移」に近いということである。もしそうなら、これまで1万年以上も通用してきた経験則が、これからの100年には通用しないということを意味する。そのようなメッセージは、当然ながら重く受け止められなくてはならない。

近代的な装置による気象観測の歴史は、 黎明期 の断片的な記録まで合わせたとしても400年を超えることはない。400年は人間にとっては長い時間だが、地質学にとっては一瞬に近い。図3・1の右端に、グレーの細い帯がある。400年はちょうどこの帯の幅に相当する。私たちが「観測」してきた気候変動が、地球が持っているさまざまな顔の中ではごく一面にすぎないということを、この図から実感していただけるのではないかと思う。

スパコンで弾き出された気候の未来予測と蓄積されたデータを紐解くと今後100年はこれまで1万年とは全くちがう次元の気候変動が起こるのだという。わずか数年で7℃の気温上昇が起こるような目に見えた変化が起こるという。現時点でも最高気温を更新していくような温暖化が進んでいる。

気候の10万年史を紐解くことでこれからの気候変動を予測する書籍。様々なデータが語る地球の将来とは?

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