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人と組織の行動科学|伊達 洋駆|「組織行動論」の研究知見をもとに、対策を解説

人や組織に関する課題を44項目に整理し取り上げる。組織行動論の研究を経て導き出された知見をもとに課題への対処方法を提示。実務に耐えうるエビデンスを一通り。

本音を言える雰囲気を醸成したい

よくあるケース

case1 本当は反対意見を持っているのに、遠慮して言わないことがある

case2 職場のメンバーに嫌われたくないため、自分の意見を言わずに黙っている

case3 よくないアイデアだと皆が内心思っていても、気づけば、それが採用されている

現実に起きている問題

会社の中で本音のコミュニケーションが取れない。これは昔からある問題ですが、近年、「心理的安全性」という考え方が普及したことで、改めて光が当てられるようになりました。心理的安全性が高ければ、率直に意見を伝え合うことができます。

ある調査によると、心理的安全性を「必要だ」と回答する人は7割強(「必要である」+「やや必要である」)に上ります。一方で「同僚に悩み事や本音を言えるか」を尋ねると、約6割が「言えない」と回答しています。半数以上の人が、職場で本音を言えずにいます。

課題を読み解く研究知見

●リスクを取っても大丈夫という感覚を指す

心理的安全性が注目されるきっかけになったのは、Googleの「プロジェクト・アリストテレス」です。このプロジェクトの目的は、うまくいっているチームの特徴を抽出することでした。その結果、特徴の1つとして心理的安全性が挙げられました。

プロジェクト・アリストテレスで関心を集める前に、心理的安全性は学術界で検討が進められていました。 心理的安全性とは、「対人関係のリスクを取っても安全であるという共通の信念があること」 を意味します。簡単に言えば、「自分の脆弱さを見せても大丈夫」と思える状態 です。具体的には、

・チームにおいて、問題提起ができる

・チームにおいて、リスクを取っても安全である

・チームにおいて、異なる意見を言っても拒絶されない

といった項目に「当てはまる」と回答できる時、そのチームには高い心理的安全性があります。

●心理的安全性には多くの効果が認められる

心理的安全性には、多くの効果があります。これまでの研究を統合的に分析した論文によれば、心理的安全性が高いほど、

・エンゲージメントが高い

・仕事のパフォーマンスが高い

・情報共有がなされている

・会社のためになる役割外行動を取る

・創造性が高い

・学習のための行動を取る

・会社に愛着を持っている

・仕事や会社への満足感が高い

といったことが明らかになっています。 「不確実性」を避けたいと思うほど、心理的安全性の効果は大きくなります。不確実性とは、必要とされる情報に対して手持ちの情報が足りないことです。十分な情報がない状態を嫌う場合、心理的安全性は一層重要になるのです。

仕事をする上で心理的な要素は案外効いてくる。心理的安全が担保されている職場は生産性も高い印象。もし自分の職場について判断しかねる場合は他の会社の人との接点を持ち聞いてみると良いだろう。もしかするとあなたの当たり前は世間ではブラックと思われているかも。

ワークライフバランスを推進したい

よくあるケース

case1 仕事が忙しくて、生活にゆとりがない

case2 仕事で疲れてしまい、生活を充実させるエネルギーが残っていない

case3 家庭の問題で、仕事が十分に行えていない

現実に起きている問題

2007年の調査によれば、「仕事と生活の優先度」について「現状」を尋ねると、「仕事優先」が約60%、「生活優先」が約15%、「同じくらい」が約20%となっています。一方で、「仕事と生活の優先度」について「希望」を尋ねると、答えが異なります。「仕事」を優先したい人は約20%、「生活」が40%弱、「同じくらい」が40%弱となっています。

これらの結果が示しているのは、希望と現状の食い違いです。具体的には、生活優先、あるいは、同じくらいを希望しているものの、現状は仕事優先になっているというのが、2007年当時の状況でした。

こうした状況に対処すべく、政・労・使の協議の末、2007年に「仕事と生活の調和(ワーク・ライフ・バランス)憲章」が策定されました。その後、働き方改革が推進され、長時間労働の是正などに取り組む企業が増えました。

とはいえ、ワークライフバランスは一朝一夕に実現できるものではありません。ここでは、ワークライフバランスを実現するために、どうすればよいかを考えます。

課題を読み解く研究知見

ワークライフバランスについて考える上で参考になるのは、「エンリッチメント」という概念です。 エンリッチメントとは、一方で得た資源が他方に活かされることを意味します。ここで言う「資源」には、スキルや感情、達成感が含まれます。ある場面で得たスキル・感情・達成感が、別の場面に活きることがエンリッチメントです。

エンリッチメントは、「ワークファミリーエンリッチメント」と「ファミリーワークエンリッチメント」に分けられます。

●ワークファミリーエンリッチメント

ワークファミリーエンリッチメントは、仕事が家庭に対してよい影響を及ぼすことを表します。仕事で得た資源が、家庭に活かされることです。例えば、

・仕事で得たさまざまな視点が、家庭につながる

・仕事をすることで気分がよくなり、よい家庭を築ける

・仕事で達成感が得られ、家庭によい影響が出る

という項目にYESと答えられれば、ワークファミリーエンリッチメントが高いと言えます。多くの先行研究を統合的に分析した論文によれば、ワークファミリーエンリッチメントが高いほど、

・仕事や会社に満足している

・会社に愛着を感じている

・家庭に満足している

・生活に満足している

・心身が健康である 傾向があることがわかっています。ワークファミリーエンリッチメントを高める意義があるということです。

●ファミリーワークエンリッチメント

ファミリーワークエンリッチメントは、家庭から仕事へよい影響がもたらされることを指します。先のワークファミリーエンリッチメントは、仕事から家庭への影響に注目していましたが、ファミリーワークエンリッチメントでは、影響の方向が逆になっています。例えば、

・家庭で得た知識が、仕事の助けになる

・家庭で気分が明るくなり、仕事がはかどる

・家庭があることで、仕事の時間を集中して使うようになる

という項目に当てはまるほど、ファミリーワークエンリッチメントは高いと考えられます。

ファミリーワークエンリッチメントについても、ワークファミリーエンリッチメントと同様に、多様な効果が検証されています。ファミリーワークエンリッチメントが高いほど、

・仕事や会社に満足している

・会社に愛着を感じている

・家庭に満足している

・心身が健康である ことが明らかになっています。

仕事が家庭に好影響をもたらす場合(ワークファミリーエンリッチメント)も、家庭が仕事に好影響をもたらす場合(ファミリーワークエンリッチメント)も、ともにプラス効果があることを確認できました。

仕事が家庭へも影響を及ぼす事実。仕事は仕事と家庭と線引きをして考える考え方はちょっともう時代錯誤。仕事でいくらうまくいっていても家庭がズタボロでは仕方がない。ワークライフバランスの見直しが必要な人はここ日本では数多くいるかと思います。昔ながらのモーレツ社員は今の時代似合いません。

さまざまな角度から働く人の問題点、課題を炙り出し、それを改善するために有効なエビデンスを提示します。働くことに疲れたり今の働き方は世界標準とどれだけ乖離しているかを知るためのツールとしても機能します。

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