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予言された世界|落合信彦, 落合陽一|これからの世界がどう変化していくのか

AIが幅を利かせつつある世界で異能の親子が語る近未来の姿とは。国際ジャーナリスト・落合信彦氏と、息子でメディアアーティストの落合陽一氏(筑波大学准教授)による初の親子共著作品。独自の審美眼を持つ2人が、これからの世界がどう変化していくのかを個々にそして対談で語る。

自分で調べ、自分の頭で考える

イギリスの貿易商、トーマス・グレシャムが「悪貨は良貨を駆逐する」と言ったように、デマが広がるスピードは速く、それを否定する論は追いつかなくなり、デマだらけの言論空間になっていく。かくして〝トランプ・ワールド〟の誕生となる。

そういう局面に移行してしまうと、人間は全員が壊れたラジオのようなものになり、プライベートな空間にしか正しい情報が出てこなくなる。現実としてインターネットが社会の一部に組み込まれてしまった以上、それを許容するわけにはいかない。

私はアーティストであるだけでなく、サイエンティストでもあり、サイエンティストとしては科学的な真実を追究するべきではあると考えている。本来は国が戦争をしていようが、科学の研究には何の関係もなく、アカデミアこそ価値追求を選択する自由を持てる程度には脱社会的であるべきだと考えている。しかし、現実にはアメリカの公的予算の入っている研究などでは、論文を発表するときに「ロシアの共著者をはずせ」「ロシア人に謝辞を入れるな」などと言われ始めている。ロシアのお金が入っている研究は怪しいと、排除される状況が生まれている。ロシア人の研究者が入っていようがいまいが、論文そのものを検証してその研究を評価すればいいだけなのだが、しっかりと政治が絡んでくる。事実と価値は分けられず、主義主張は政治の乗り物になる。

自分のポケットマネーで研究しているのならある程度脱社会的でいいと思うが、国民の税金から予算をつけてもらい、ある程度パブリックなポジションに身を置いて研究をするのならば、〝従社会的〟なアプローチを求められる。サイエンティストも、真実の徒とは言い切れない。

社会的な正しさと真実の間のギャップで、この世の中において何を信用していいのかわからなくなるのも事実だ。従社会的なサイエンティストが大人の振る舞いをすればするほど、何が正しいのかわからなくなり、逆に混乱を招くことにもつながる。正しい情報を得たければ、自分でソースの信頼性を調べ、バイアスを考慮し、自分の頭を特別視せずに考えるしかない。

なんか最近のSNSや動画配信の普及でデマが拡散しやすくなっている。今までと同じ感覚で情報を摂取していると騙される確率が上がりそう。昔からデマを流す人はいたが、最近は広告収入のために過激なタイトルやサムネでリスナーを釣ってナンボみたいなところがあって、そういう発信者の情報はすぐに情弱によって拡散される。流れてくる情報を鵜呑みにせず、自分で調べ、自分の頭で考えることの大事さが問われる時代です。

テクノロジーに組み込まれる人

2016年出版の『これからの世界をつくる仲間たちへ』(小学館)で、コンピュータテクノロジーの進歩するスピードは一人の人間が進歩するよりもはるかに早く、いずれコンピュータはあらゆることを学んで、自ら次世代のコンピュータやプログラムを設計し、進化の速度を加速させていくと書いた。ブラックボックス化して「魔法」のようにしか見えなくなった現代のコンピュータテクノロジーがさらに進化することで、テクノロジーに適応し、それを使いこなすことでさらに新たなテクノロジーを生み出していく人々と、テクノロジーに使われる人々の間で、格差が生まれるという予測を述べている。

6年経ち、現実に今も格差は拡大している。今日も明日も明後日も拡大していくことは避けがたい。テスラのイーロン・マスクはツイッターを買収し、アマゾンのジェフ・ベゾスは宇宙旅行に出かけて、従業員から「もう帰ってこなくていいよ」と言われるディストピアが目の前に展開されている。世界は今日も美しい。

先日、ニューヨーク州にあるアマゾンの流通倉庫で労働組合ができて、組合員が今の時給約 20 ドルを 30 ドルに上げろと要求しているというニュースが報じられた* 1。アマゾンの倉庫はきわめてシステマティックで、コンピュータ制御のロボットが届け先ごとに自動で商品を判別し、棚卸しなど最低限の作業を人間がするシステムになっている* 2。形状や中身の異なる商品が無数にあり、それぞれに合わせて段ボール箱に梱包していくという作業は、いずれ完全に自動化されるだろうが、今のところまだ人間にしかできないので、そこだけ人が手作業で行っているわけだ。

ウーバーイーツも注文や決済などはすべてサーバー上のソフトウェアが処理し、店で料理を受け取って客に届ける部分だけを人間が担っている。

これらギグエコノミーと呼ばれるものは、人がテクノロジーに組み込まれた例だろう。そうしたテクノロジーを生み出した企業が、市場を制するようになっているのが現代だ。

確かにアマゾンの倉庫作業はAIに人間が使われる仕事だが、それほど悪い仕事ではないように思う。ドラクエで単純なレベル上げが好きなような人なら、続けられる仕事だ。私のラボには、アマゾンの倉庫で働いている学生がいて、仕事は楽しいと言っていた。私自身もRPG(ロールプレイングゲーム)のレベル上げのような作業は苦にならないので、その学生の気持ちはよくわかる。無心になれる作業は心地よい。

RPGのレベル上げのような仕事、経験値の代わりに賃金がもらえる単純作業。それでも仕事があるのだからいいと割り切れればAIに使われるのも悪くない。逆に無能で嫌な上司の下で顔色を伺いながら仕事をするより有能なAIの上司の方がよっぽどマシと言う人もいるかもしれない。そう考えるとAI上司も悪くないかな。

今の技術の行先を見ながら未来について語る親子の書籍。もうすでに変化は始まっていてそれにどう対応するか賢い生き方を考えるのに役立つ預言書。

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