自身を向上させ、周囲やチームも巻き込んで成長することを目的として「過去最高の自分を育て、仲間を育て、最強チームをつくる」。悔いのないビジネスマン人生を送るための手引き書。
教育=実践
「仲間を育てる」ためにユニクロでやっている最後のポイントは、実践を主体にした教育を行なっていることです。 FRMIC がグローバルに拡大していく中で、各地域がバラバラに取り組んでもったいないことになっていることに横串を通そうと、グローバルでのベストプラクティスの共有と教育の原理原則のバックボーンをつくることに力点を置いて取り組みました。教育の原理原則を固める議論の中で FRMIC が大切にすべきこととして一番に出てきたのが、教育=実践という考え方です。教育をビジネスの成果に真剣に結びつけようと考えたら、座学だけでは不十分で実践にまで FRMIC が入り込まないといけないというのが我々の出した結論でした。
以降、 FRMIC の教育体系は実践を主眼に置いたものに加速度的にシフトしていきました。これも枚挙に暇がないくらいたくさんあります。
たとえば、前述したグローバルの若手経営者育成プログラムである FGL や MIRAI において、よく他企業にあるようなアクションラーニング的に、実行することは必ずしも前提ではない経営構想をつくらせる、〝ごっこ〟的なことは一切していません。実際のビジネスで実行することを前提にした真剣勝負の構想を提言させ、それが OK ならどんどん実行させて、その実践の中でぶつかったことをどう打破していくのかを柳井社長や関連役員にぶつけ、その対話の中で経営者としての視座や行動を学んでいくという実践をベースにした経営者教育にしました。
店長の教育においても座学にとどまらず、ユニクロのフランチャイズオーナーとして独立した店舗経営のプロ中のプロの店舗に行き、そこで実際の売り場で実践教育をしてもらうようなことをいろいろなところでやり、高い効果があがりました。
座学でいくら勉強しても一回の実践の方が上だったりすることもあるので、座学→実践の流れは普通に経験を積む上で大事になってくる。とりあえず学ぼうと思ったら本を読むなりセミナーを受けるなりさまざまな座学を駆使して学習し、ビジネスの現場でそれを試しながら経験を積み実践を重ねることが必要。
敗者復活ありの挑戦風土をつくる
若手を抜擢し、試練を与え育成を図る上で、最大の鍵が敗者復活ができるかどうかということです。これがないと、抜擢して、試練を与えて、失敗したらそれで終わりとなりますし、誰も変革を起こすような難しいこと、リスクのあることにチャレンジしなくなります。
失敗の責任をとることの本質的意味
『経営者になるためのノート』の「変革する力 第 4 項 リスクを恐れず実行し、失敗したらまた立ち向かう」に失敗の責任をとることの本質的意味について以下のように書かれています。ユニクロの根源的な強みになっている金言です。
失敗をすると、責任をとって途中でやめると言い出したり、謝る人がいますが、失敗の責任をとるというのは、そういうことではありません。
失敗の責任をとるというのは、
「最後まで試行錯誤を尽くす」
ということ、そして、
「これは失敗だというときは、その原因を徹底的に探究し、学びを得る」
ということ。そして、
「それを次に活かして、結果を出すこと」
これが失敗の責任をとるということです。
こうしたことができるのであれば、何回でも失敗していいと思います。なぜならその分、必ず成長しているからです。
読者の皆さんの中で、こんな考え方で「失敗の責任をとる」ということを捉えて組織マネジメントをしている人が何人いるでしょうか。こんな考え方でマネジメントするとすごく強い組織・チームができると思いませんか?
「日本企業において出世をする人は、変革をした人ではなく、リスクをとらなかった人である」という笑えないジョークがありますが、失敗した人をどう扱うのかは、非常に重要です。周りはその失敗した人がどういう扱いを受けるかに注視し、それが積み重なって組織風土が醸成されてきます。
古い日本企業の体質だと一回バツがつくとそれでもう昇進がなくなったりして残りのビジネスマン人生が終わったみたいなことになる企業がいまだにある。再チャレンジができない企業では、足の引っ張り合いが日常的に行われていたりして、生産性を阻害している。それが何度でもリベンジできる企業風土を持つ会社では新しい風を吹かせやすく、チャレンジをする人間も増えてくる。リスクを取ることを恐れて何もしない社員よりよっぽどその方が良い。
チームで個人でチャレンジして仕事の成果を出すための教育方法とそんな企業風土の作り出し方を解説。今こそご老体には退いてもらい新たな風を自社に吹き込む時。
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