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リサーチ・ドリブン・イノベーション|安斎 勇樹 , 小田 裕和|「問い」を起点にアイデアを探究する

企業と数百件に及ぶワークショップを重ね、共同研究してきたイノベーションのプロセスに火をつけるその方法を4つのステップで公開。アイデアを見つけるための具体的なノウハウが詰まった一冊。

リサーチは問いを立てるところから始める

前章で述べた通り、リサーチによって何を明らかにしたいのか、「問い」を設定するところからリサーチ・ドリブン・イノベーションは始まります。これは何も、リサーチ・ドリブン・イノベーションに固有の話ではありません。成功したイノベーションのほとんどは、その起点に「良い問い」があったと言っても過言ではないでしょう。

世界的ベストセラー『イノベーションのDNA』 1) の共著者ハル・グレガーセンは、近著『問いこそが答えだ!』 2) において、イノベーションの解を生み出すための「問い」の重要性について、事例を交えながら主張しています。例えば「スナップ写真」を生み出し、世に広めたコダックの創業者ジョージ・イーストマンの例を見ても、その始まりは1つの「問い」からでした。もともと幼少期から写真に興味関心を寄せていたようですが、彼が24歳のとき、外国旅行の準備をしていた際に、写真撮影の機材を持ち歩く煩わしさから浮かんだ「写真撮影をもっと手軽で簡単なものにして、一般の人にも楽しめるものにできないだろうか?」という問いが、後のイノベーションの全ての起点になっていたのだそうです。

実際に、プロジェクトの起点としての問いが視野狭窄であるばかりに、イノベーションプロジェクトが停滞してしまうことは、少なくありません。 最も多いパターンは、プロダクトの細かい「仕様」の設定に、問いの焦点が向いてしまうケース です。

以前、ある飲料メーカーからのご依頼で、新しい「お酒」を開発するイノベーションプロジェクトをインテージ社と共同担当したことがありました。お酒の業界は商品の入れ替わりが激しく、コンビニに行けば、棚いっぱいに多種多様なラインナップを目にします。一部のロングセラーの定番商品を除けば、見たこともないような新たな商品が次々に現れ、またすぐに消えていくこの状況においては、頭に浮かぶ問いもつい近視眼的になりがちです。コモディティ化しつつある商品群を眺めていると「アルコール度数は何パーセントがよいのか?」「果実味と甘さの最適なバランスは?」「パッケージはどのようなものがいいのか?」などといった、商品の「仕様」ばかりが気になってくるのです。

このような問いを起点に、いわゆるユーザー調査を繰り返しても、リサーチ・ドリブン・イノベーションにはつながりません。イノベーションとは、前章で述べた通り、人間と社会の本質に迫る探究です。そこで私たちは「人はなぜ酒を飲むのか」「夜、自宅でお酒を飲むことの意味とは?」といった問いを立て、リサーチを開始したのです。プロジェクトの詳細と結果はここでは紹介できませんが、結果として、具体的なプロダクトコンセプトを生み出す過程で、人間の本質に迫るたくさんの洞察を得ることができ、示唆に溢れるプロジェクトとなりました。

このように、ボトルネックとなっていた視野狭窄的な問いを、別の新たな問いに転換することでブレイクスルーが生み出される場面を、これまでに何度も経験してきました。筆者(安斎)の前著『問いのデザイン』3)では、良いアイデアが浮かばないとき、企画会議の話し合いが盛り上がらないとき、チームのポテンシャルが活かしきれないとき、多くの場合、チームが向き合っている「問い」に問題があることを指摘しました。そして、組織や事業の問題の本質を捉えて、正しい課題を設定するための理論と方法について、体系的に解説しました。

組織に蔓延するドロドロとした問題を解決するにせよ、ゼロからイチを鮮やかに生み出すイノベーションプロジェクトにせよ、最初に設定する「問い」の切り口を誤ってしまっては、その後どんなにプロジェクトに資源を投下しても、優秀なファシリテーターが必死に場を進行しても、成果にはつながらないのです。

確かにコンビニの商品棚は新製品や期間限定品で溢れ一部の定番商品を除き見たこともないようなものが常にいくつか並ぶ状態を保っている。毎日来る客でも新商品を全て把握するのは難しいぐらいだ。そんな中で自分で見つけたお気に入りの新商品をタグ付けしてSNSで共有したりするのを楽しんだりしているように思う。

データの種類と活かし方

ここからは、実際に扱うデータ形式の種類について見ていきましょう。改めてデータの辞書的な意味を見てみると、「物事の推論の基礎となる事実」 とされています。前節で整理してきた「わかるためのデータ」にせよ、「つくるためのデータ」にせよ、全ては推論の基礎になる事実として適しているか、ということが重要なポイントになるのです。さらに言えば、どんな推論を重ねるかによって、用いるべきデータも変わってきます。

推論につながるものであれば、どんな事実でもデータとして扱うことができます。前節でも言及したように、たとえ主観的なデータであっても、事実それを主観的に捉えた人が存在するのであれば、そこから推論は可能です。ここでは、その中から代表的なデータを比較する形で取り上げて紹介していきたいと思います。

定量データと定性データ

最もわかりやすく、最も多く紹介されるデータの区別が、 定量データと定性データ でしょう。ほとんどの人がその違いに触れたことがあると思いますが、改めてその違いについて見ておきたいと思います。

定量データ

定量データは、数値化することが可能なデータで、比較や様々な処理がしやすく、その計測の仕方によって、客観性の高いデータとして示すことも可能 です。毎日の生活にはありとあらゆる定量データが溢れています。1日の中で定量データに触れなかったという日はまずないでしょう。改めて日常の中に潜んでいる定量データを洗い出してみることも新しい発見につながるかもしれません。

定量データは、具体的に数値として表れていることから、共通の解釈を形成しやすい傾向にあります。そのため、 わかるためのデータとして用いられることが多い データです。ある程度仮説を立てて行うような選択式のアンケートデータや、売れ筋の傾向を掴むための購買データなどは、共通の解釈が生まれやすいデータの一例です。

一方で、データの種類や読み解き方次第では、つくるためのデータとしても用いられます。その多くは、1つの定量データから何かを読み解こうとするのではなく、複数の定量データに着目し、その関係性を探ろうとするものです。例えば、コンビニではレジ袋が有料化されたため、レジ袋を必要としているか否かがデータとして取得できるようになりましたが、購買した商品の種類や点数のデータ、あるいはどんな年齢性別の人が購入したかを比較して解釈すると、その後そのお店からどこに向かおうとしているのかの仮説を読み解くことが可能になるかもしれません。

定性データ

定性データは、言語的/非言語的を問わず、主観的な回答や行動、あるいは状況を観察する中で得られる、直接数値化して計測することが難しいデータのことを指しています。テキストデータや画像、あるいは動画や音声など、ある状況をそのまま解釈可能な形に処理して表現されることが特徴です。

定性データは、量を扱うことが難しく、一つひとつのデータと向き合って考える必要が出てきます。もちろんテキストマイニングのような、ある程度大量の定性データを扱う手法もありますが、その結果描き出される結果も、すぐに何かが読み解けるようなものではありません。データの読み手がどのように解釈するかが非常に重要になり、多様な解釈が生まれやすいことから、つくるためのデータとしてよく用いられます。またその読み解き方によって、事実の背後に潜む事実に迫る推論を導くことができるようになります。

わかるためのデータとして扱うことも可能ですが、定性的な回答は、設問によって回答の方向を誘導してしまうリスクがあることには注意する必要があります。何を確かめたいかを定め、制約をかけることも重要ですが、事実をねじ曲げないよう、調査の設計には気をつかう必要があります。

全てのデータは、定量データや定性データ、あるいはそれらがミックスされて表現されたデータに分類されます。大切になるのは、それぞれの推論の目的に合わせて、適切な事実としてのデータを用意することです。

ただ、ここで全てのデータを紹介することは現実的ではありません。ここからはより具体的なデータについて、筆者らが着目することが多いデータを比較しながら紹介していきたいと思います。

データによる物事の読み解き方には問題もあって、ある一定期間を都合よく切り取ってその期間があたかも計測期間全体の縮図であるかのように思い違いさせる場合もある。それを理解した上でデータと向き合わないと痛い目にあう。

リサーチの基本、データの読み解き方に焦点を当ててこの手にデータの果実を手にする方法とその際の注意点を示唆。データの取り扱い方が学べます。

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