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ブラックバイト 学生が危ない|今野 晴貴|学生たちを食い潰す「ブラックバイト」が社会問題化している

休みもろくに取れない過密シフトやワンオペ。営業、売上ノルマによる自爆営業。人手が足りず辞めようにも辞めさせてもらえない。それにペナルティーを課すようなブラック企業も。学生たちを食い物にするブラックバイトの今を明らかにし、具体的な対策を提示。

バイトで就職活動ができない

関西の大学生Bさんがファミリーマートのある店舗でアルバイトを始めたのは、大学五年目の五月のことだった。望んでいた業界への就職活動がうまくいかず留年していたBさんは、それまでも親からは家賃分だけを仕送りしてもらい、家賃以外の生活費や学費は自分のアルバイトで稼いでいた。

奨学金は、返済が大変だと親からの忠告があり、借りていなかった。Bさんはすでに、一年前から近くの全国チェーンの量販店で週四日のアルバイトを続けていた。しかし、就職活動をもう一年続けることもあり、アルバイトをもう一つ掛け持ちして、さらに月五万~六万円程度稼ぐ必要があった。そのうえ一番希望している業界に就職するには、東京と関西を何度も往復しなくてはならない。その交通費がかかることが、新しくアルバイトを始める理由だった。日中に大学の授業や量販店のアルバイトを終え、帰りがけに夜勤で働ける時間帯・地域という条件で、もう一つのアルバイト先を探した。そこで見つけたのがこのコンビニだった。

このファミリーマートの店舗は、現在勤めている量販店の近くの勤務先という条件で、インターネットの求人サイトで探して見つけた。場所は関西有数のターミナル駅に直結する大型商業施設内で、店もまだ四月にできたばかり。最新のコンビニらしく、店内にイートインも設置され、立地的な話題性もあり開店時にはニュースになったほどの注目店だった。そのため、「働きやすそうだ」という印象を受けたことも、アルバイト先として選んだ理由だった。

僕の場合はバイトにどっぷり使って大学を辞めた人間だが、バイト先によってはシフトに入るのを強制され就職活動もさせてもらえないブラックな職場も。そんな時は然るべきところに助けを求めるべき。決して泣き寝入りして就職活動に失敗しないように。

利用される「責任感」と「やりがい」

実は従来から、わずかな工夫の余地にのめりこみ、「自己実現」させられるアルバイトの実態は報告されていた。「やりがい」をキーワードにした若者の搾取の指摘は、ちょうど一〇年前に盛んに行われていた。当時は「フリーター」が増大する中で、彼らが低賃金・不安定な労働条件にあるにもかかわらず、なぜ仕事にのめり込んでいくのかに関心が集まっていた。

本田由紀の「自己実現という罠〈やりがい〉の搾取」(『世界』二〇〇七年三月号) によれば、「フリーター」には「自己実現系ワーカホリック」と呼ぶべき現象が見られた。これには①趣味性、②ゲーム性、③奉仕性、④サークル性・カルト性の要素があり、①趣味性とは、自分の好きなことをアルバイトにすることで、のめり込むという要素だ。当時ベストセラーになった阿部真大の『搾取される若者たち』(集英社新書) には、バイク便ライダーが、「趣味」ゆえに仕事にのめり込む様子が描かれている。

また、②ゲーム性とは、本書でいう責任感や達成感に似ている。たとえば、コンビニの労働過程についての居郷至伸の研究に基づけば、コンビニの店長・副店長に 抜 された非正規労働者が、オーナーによる最終承認は求められつつも、かなりの裁量性が与えられることで、「疑似自営業者的就労形態にある」と指摘できるという。彼らは「絶対利益を伸ばしますし、きっちり売上も伸ばしながらやっていきますって意思はあります」という言葉に端的に表れているように、自分たちの戦略や力量に自信を持ち、それを達成しようと仕事に多大なエネルギーを投入しているというのだ。

そして③奉仕性とは、特にケアワークに見られるような対人サービスゆえのやりがいであり、④サークル性・カルト性とは、居酒屋の事例に見られたような、乏しい対価にもかかわらず職場での一体感で観念的に盛り上がる状況を指摘している。

今日、これを読み返すと、ブラックバイトのほとんどの要素がすでに指摘されていたことに驚く。だがその一方で、当時の「やりがいの搾取」では想定されなかったような、大きな変化をブラックバイトに見いだすこともできる。

まず、かつてのような趣味的・任意的な側面は明らかに後退し、職場の「必要性」は極限まで高まり、彼らを拘束している。彼らが「趣味性」や「カルト性」(一体感)の延長でのめり込んだ事態を越え、今日では職場の切迫度、必要性が桁違いに増し、全般化した。正社員の「ブラック企業」問題化は、ますますこれを強める。

そして何より、趣味性、奉仕性、ゲーム性といった、「やりがいの利用」にとどまらず、経営戦略を内面化させ、企業業績を共同で意識するところにまで進んだことが、この一〇年間の巨大な変化であろう。もはや「やりがい」をつうじてのみワーカホリックになるのではない。学生たち自身が、経営者としての責任を負うものへと意識を転倒させられているのである。居郷の指摘する「疑似自営業者的就労形態」が「ゲーム性」の延長線上で分析されたことと比較して、これは隔絶している。

この現象が、企業社会から排除された「フリーター」ではなく、これから企業社会に参入しようとする「学生」をターゲットに進展したことはさらに重要である。そこには、次に見るように「人的資本万能主義」が、学生を取り巻くマクロな権力関係を編成していることが読み取れるからである。

フリーターだと色々な面で待遇が悪い。時給がいくら高くても搾取される側には変わらない。やりがい、アットホームを売りにしている職場ほどブラックであることも!?やりがいなんて主観的なものなので他人がやりがいがあるというのはおかしい。アットホームというのも危険!仕事に家族感なんて必要ない。それを理由に断りずらい状況になりがち。

ブラックバイトの問題点はバイトしてる本人が気づかないうちに、アットホームだとかいう理由でなんとなく厳しい労働条件をのむように仕向けられてること。自身のバイト先がブラックかどうかのチェックにもどうぞ。

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