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ヒトが持つ8つの本能に刺さる 進化論マーケティング|鈴木 祐|消費者理解により人間の本能と行動の関係性を解明

科学的根拠に基づく進化論マーケティングの実践書。人が持つ本能に注目し、消費者の理解が人間の本能と行動にどう関係するかを解明します。

消費者は自分の欲しいものをよくわかっていない

確かに、少し考えただけでも、「消費者は自分の欲しいものをよくわかっていない」ことを示した事例には事欠きません。

有名なのは、1998年にアップル社が発表した「iMac」です。スケルトンボディを採用したデザインはいまでこそ伝説のプロダクトですが、発売前の評価はさんざんでした。特に多かったのは「iMacはユーザーのニーズを理解していない」という批判で、多くのPCユーザーは「フロッピーディスクを使えない商品に誰も興味はない」と答え、アナリストはiMacの大失敗を予測しました。

しかし、ふたを開ければ結果は真逆で、iMacは2年8カ月で500万台を売り、アップルの経営危機を救う起爆剤となりました。

アップル製品の開発プロセスを尋ねられたスティーブ・ジョブズは、1998年のインタビューにこう答えています。「顧客に意見を聞いて製品をデザインするのは本当に難しい。多くの場合、人々は自分が何を欲しているのかをわかっていないからだ」

ジョブズは顧客のニーズを軽んじていたわけではなく、当時のアップルが定期的にユーザーの商品利用データを集めていたのは有名な話です。とはいえ、私たちが自分の欲しいものを心から理解していないのも事実であり、この点を押さえずに消費者リサーチを行うのは間違いのもとだと言えます。

僕がMacを初めて手にしたのはiMacが発売された後のG3で初めてボンダイブルーの筐体に一目惚れしたものだ。そうやってユーザーのかっこいい、可愛いコンピューターが欲しいといった隠れたニーズに着目したのが普及の原因だと言えよう。

1つの強みだけを伸ばすとカルト的な人気で終わりやすい

Stage2で、あなたは自分の商品にどのような魅力があるのかを理解しました。記入を終えた「没入ジャーナル」や「共感マップ」をながめるだけでも、商品の改善アイデアや新しい宣伝の方法がいくつか思い浮かぶはずです。

そこでStage3では、続けて 「あなたの商品が刺さる本能の種類を増やす」 作業を行います。

一度に複数の本能を刺激できる商品ほど強いことは、すでに述べたとおりです。1つの強みだけを伸ばすのが悪いとは言いませんが、それではカルト的な人気で終わりやすいですし、あなたの“上位互換”に当たる同業者が現れたら太刀打ちできません。上には上がいるのが世の習いですから、1つの武器だけを鍛えるよりは、あなたの商品に複数の魅力を加えたほうが、リスクヘッジになるはずです。

それでは、“刺さる本能”の種類を増やすためには、何をすべきなのでしょうか?

成功するリーダーほど「問い」のスキルが高い 「有能な人とは、質問がうまい人である」—インシアード(欧州経営大学院)のハル・グレガーセンは、十数年にわたって数千人のビジネスリーダーに調査を重ねて、そんな結論を出しました。

世界のカリスマ経営者に「普段からどのように考えているのか?」を尋ねたところ、 世界的に成功しているリーダーほど、「問い」のスキル が高い ことがわかったのです。

調査の対象になった経営者は、シルク・ドゥ・ソレイユのダニエル・ラマールや、セールスフォース・ドットコムのマーク・ベニオフといった、そうそうたるメンツばかり。その大半が、日ごろから商品の改善点を探していたのはもちろん、業界のシステムや自分の働き方、会社のルールにまで疑問を持ち続けたと言います。

この結果についてグレガーセンは、「創造性が高いリーダーは、あらゆるものに疑問を抱く。それゆえに市場の移り変わりにもキャッチアップを続け、新たな発明やイノベーションを起こし続けることができる」と指摘します。確かに、環境が目まぐるしく変わる現代では、つねに自分の商品に疑いを持ち続け、新しい機会や可能性を見つけ出すしか生き残る術はありません。専門知識の豊富な人材が求められたのは昔の話で、現代では「問い」のスキルを身につけた者のほうが成功しやすいようです。

有能な人は質問がうまい。僕のように陰キャだとなかなか自分から話題を探すのが苦手という人もいるだろう。そんな陰キャから話を引き出すスキルを持った人がいる。そんな人は問いのスキルが高いと言えよう。

進化論でマーケティングを理解するという新しい切り口の書籍。人の本能に迫りマーケティングを解剖します。

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